自動車のEVシフトとその影響
2017.10.20
EVの進化と取り巻く環境の変化
 地球環境問題への関心の高まりなどを背景に自動車のEV化が急速に進みつつあります。フランスとイギリスで、2040年までに純粋なディーゼル自動車とガソリン自動車の生産・販売を禁止する政策が打ち出されました。中国でも2019年からEVを一定比率以上生産することを義務付ける規制が検討されるなど、自動車のEV化を政策的に推し進めようとする動きが広がっています。そして、各国の自動車メーカーがこの動きに対応し始めています。

 日本やアメリカでは、まだ自動車メーカーの自主性に任されていますが、充電インフラなどEV普及のために必要な条件が整えられつつあります。

 EVの性能は進化しています。走行・加速・制御などに影響するパワー、トルク、レスポンスなどはガソリン自動車やディーゼル自動車と遜色のない水準まで向上し、静粛性ではEVの方が優れています。

 環境性能は、発電・燃料構成によって左右されますので、国や地域によって異なりますが、火力発電の構成比が高くない限り、ハイブリッドカーと比べてもEVの方が単位走行距離当たりの二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物などの排出量は低くなっています。ただし、原子力発電所の利用率が低下し、この不足分を火力発電で補っている日本や、石炭火力発電が主体の中国では必ずしもEVが環境にやさしいわけではありません。

 ほぼ同じサイズ、装備のEVとガソリン自動車を比較すると現在の車両価格はEVの方が割高ですが、補助金や税負担の軽減分を考慮した実際の購入価格では大差ありません。今後、EVの生産台数が増加し、バッテリーや関連部品のコストが下がれば、車両の構造がシンプルなEVの方がガソリン車より安くなると見込まれます。なお、燃費は、現時点でも追加コストがかかる急速充電などを頻繁に使用しない限りEVの方が割安なケースが多くなっています。

 EVの問題点としてよく指摘される1充電当たりの航続走行距離の短さも解決されつつありますが、今後、搭載バッテリーの容量の拡大、モーターやエアコン、照明、電装品などの効率が向上すれば、EVの航続走行距離はさらに伸び、早晩、ガソリン自動車と遜色なくなると予想されます。

 今後の課題は、車両コスト及び燃費のさらなる低減、バッテリーなどの耐用年数の向上、充電時間の短縮、利便性の高い充電インフラの普及などでしょうが、いずれも対応は可能と思われます。

 普及のネックと指摘されることが多い充電インフラは、EVが普及してニーズが拡大すれば設置件数は増加すると見込まれますが、現状でも政策的な支援によってEV以上に充電インフラの普及が進みつつあると考えられます。


我が国でEVがいつ本格的に普及するかはメーカーの判断次第
 日本の自動車メーカーでEVに最も積極的なのは日産で、トヨタ、ホンダ、マツダなどは消極的とみなされることが多いのですが、この評価は必ずしも正しくないと思われます。

 トヨタはハイブリッドカー(HV)のリーディングカンパニーで、ホンダはこれに次ぐ存在です。

 両社のHVは、モーターだけで発進、加速、高速走行ができますので、ハイブリッドエンジンの代わりにバッテリーを積み増せばEVになります。

 トヨタとホンダは、ハイブリッドカーの製品寿命を延ばすことを意図した経営戦略をとっているように思われますが、EV化の流れが本格化する兆しが見えたらEVにかじを取り、この分野でもEV化で先行しているメーカーに対抗できると思われます。

 ただし、自動車のEV化は、自動車メーカーなど、部品、素材など自動車関連産業に大きな影響を及ぼします。わが国の自動車関連産業の規模はきわめて大きいので、自動車メーカー、そして日本政府がすぐにEV化を推し進めるとは思えません。

 我が国でいつから本格的に普及し始めるかは、国、及び政策に強い影響力がある自動車メーカーどのように判断するかによるでしょう。


EV化の影響は石油業界やSS業界にはすぐに広がらない
 EV化は石油業界やSS業界に大きな影響を及ぼすようになると考えられますが、仮に、その年に販売される自動車の過半がEVになったとしても、走行している自動車が置き換わるのは年に3~4%に過ぎませんので、徐々に影響が広がっていくと考えるのが妥当と思われます。

 特にSS業界では、洗車、ボディコーティング、リペアなどのボディケア関連の事業環境には大きな影響は生じませんので、今後の変化を踏まえた取り組みによって将来は左右されると考えられます。


北海道のガソリン価格予想
4月22日(月)から4月28日(日)まで
変わらず
仕切りにより、値上げも

04月25日付ヘッドライン

■膨らむ期待GW商戦 一気呵成の「挽回」期す
■「失敗は有効解導く手段」 札危協保安研修会で三田薫氏講演
■石販業者への配慮明記 官公需「基本方針」が閣議決定
■保有率77.6%、小幅減少 自工会が乗用車市場動向調査
■好調油販さらなる拡販に照準 フルの強み生かし道エネ環状通SS