低・脱炭素化で収益を拡大するのは難しい
2024.7.25
低・脱炭素化関連事業の収益性は低下

 エネルギー関連事業者のほとんどが中長期構想としてカーボンニュートラル(CN)の実現を掲げ、成長戦略として低・脱炭素化事業に取り組んでいます。

 低・脱炭素化関連事業は、エネルギー事業者、再エネ専業事業者、外国企業なども交えて、競争が激化しています。この結果、その収益性は急激に低下しています。

 製造業や流通サービス業などでエネルギーを大量に消費する事業者は、間接的に二酸化炭素を大量排出していますので、主力事業を継続・維持・拡大するために低・脱炭素化に取り組んでいます。このような事業者にとって低・脱炭素化事業は収益を稼ぐためではなく、主力事業を継続するための手段に位置づけられており、その収益性は半ば度外視されています。低・脱炭素化関連事業そのもので収益を稼ぐのは難しくなっていると考えるべきでしょう。

 化石燃料の代替として、水素やアンモニア、SAF、合成燃料などの導入及び利用の拡大が図られていますが、いずれもコストが高く、アンモニアは生体毒性、水素は低いエネルギー密度、ハンドリングの難しさなど多くの課題を抱えていますので、これらを現行のエネルギー計画どおりに導入するためには、膨大なコストを要する導入支援策が必要になると考えられます。

 エネルギーは、ほとんどの経済活動や暮らしにとって必要不可欠な基礎資材ですので、供給コストの増大は、国民負担を重くし、製造業の国際競争力を押し下げます。

 エネルギー需要が拡大傾向で推移する局面では、合理化・効率化によって成長戦略を描くことができましたが、事業構造の変化がコストの大幅な増加につながるようになると、低・脱炭素化関連事業で収益を拡大するのは容易ではなくなると考えられます。


石油精製・元売の最優先課題は今後も 需給の適正化と採算販売の徹底


 石油業界の収益環境は、2016年以降、概ね良好に推移していますが、低・脱炭素化政策の影響で石油製品の国内需要の減少ペースが今後加速すると見込まれますので、良好な収益環境を維持し続けるためには、燃料油の国内需要の減少に対応した国内向け供給能力の削減、過剰供給の抑制、採算販売の徹底などに取り組み続けることが求められます。

 そのためには設備の廃棄、事業所の廃止、非石油事業の拡大などが必要でしょう。

 精製能力の削減に関しては、エネルギー供給構造高度化法の2次告示以降の設備廃棄を伴わない公称能力削減分を考慮すると、2030年までに現状より20%以上削減することが必要と考えられます。

 なお、計画外停止を減らして製油所の稼働率を引き上げる取り組みによって収益を拡大するためには、精製能力を削減し、稼働率上昇による増産分を製品輸出の拡大、石化製品の生産増に振り向けることが必要不可欠です。

 増産によって石油製品の国内シェアを拡大しようとすると、価格競争を誘発して、販売量の拡大による効果より大きなダメージを被るリスクが高まるからです。

 また、一部で期待されているSAFや合成燃料は、総需要を拡大する効果はありませんから、既存燃料の一部を置き換える程度の効果しか期待できませんし、コストが割高なため大きな収益を生む商材になるとは思えません。


石油販売事業では強みを生かす経営構造改革が必要に


 油外事業では、カーケア、自動車の買取・販売、カーリースなどで事業環境の変化を考慮した対応が求められるでしょう。

 カーケア事業では、点検・整備はカーディーラーの台頭、メーカー指定工場以外では整備が難しい電動車やエンジンカバー装着車の増加などにより、石油販売業者の対象は軽自動車、高経年車などが中心になると予想されます。

 洗車、ボディコーティング、ガラスコーティング、ボディリペア(軽鈑金)、車内クリーニング、タイヤ交換、消耗品やアクセサリーパーツの販売、保険などの事業環境は、電動車の普及に左右されることはありません。車の買取・販売、リースなどで収益を拡大している事業者も増えています。

 自動車の燃費の向上、電気事業者の普及などに対応するためには、見込み客を積極的に呼び込み、質の高いサービスを提供してお客様の満足を得る取り組みが重要になります。販促を強化したり、効果的な告知をするために顧客管理システムを導入したり、デジタルマーケティングを活用したりすることが有効と考えられます。

 既存事業者が存在する領域で成果を上げるのは容易ではありません。新規事業では、ほとんどのケースにおいて「先手必勝」、先に取り組めば、成果を得やすく、失敗しても修正しやすいからです。

 業績が良好で資金を低コストで十分に調達できる状況でなければ、抜本的な経営構造改革を実現することはできません。いち早く取り組むことが肝要でしょう。


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7月29日(月)から8月4日(日)まで
変わらず
仕切りによっては値下げも

07月30日付掲載予定

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