燃料油価格抑制策の影響
2025.6.20
燃料油価格抑制策は卸売価格に的確に反映されている

 日本維新の会の斉木武志衆議院議員が、25年5月に、ガソリン補助金(正確には燃料油価格激変緩和対策事業及び燃料油価格定額引き下げ措置) 、電力補助金(同じく電気・ガス料金負担軽減支援事業)に関して経済産業委員会で質問を行い、その後、ご自身のユーチューブチャンネルで図表類を用いて意見を発信していらっしゃいました。

 斉木代議士のご発言内容にはごもっともと思われる指摘もございましたが、長年、関連業界を調査・分析し、また、現行の電気及び都市ガスの規制料金の制度設計に携わったアナリストとして、説明が必要と思われる箇所もいくつか見受けられましたので、本稿で石油業界に関する部分について論評させていただきます。

 斉木代議士は、燃料油価格の抑制制度が導入されたことで石油元売会社の利益が大幅に増加し、一部の会社が過去最高益を更新しているのは、補助金が値下げにつながっていないからではないかと指摘されていましたが、燃料油価格に対する補助金が卸売価格に反映されていることは、石油各社が公表している資料によって容易に確認することができます。

 また、ガソリン補助金が始まったとたんに21年度の石油会社純利益(当期純利益)がジャンプアップし、ENEOS、出光、コスモの3社が過去最高利益を計上したと説明されています。最高益を更新したのは事実ですが、補助金による影響を検討するのであれば、比較する時期が間違っています。

 燃料油価格を抑制するための補助金の支給が始まったのは22年1月27日ですから、21年度には約2か月しか支給されていません。補助金が年度を通して支給された22年度は減益になっていますので、補助金によって石油会社の利益が増えたというロジックは成り立ちません。

 斉木代議士は、燃料油の卸売価格は操作できると認識されているようですが、石油元売の系列特約店向け仕切価格はあらかじめ算定諸元が設定された価格フォーミュラによって決定されています。

 このため、石油元売が卸売価格を恣意的にコントロールできるわけではありませんし、石油会社別の原油購入価格が明らかにされても仕切価格が下がるわけではありません。

 元売各社が21年度に過去最高益を更新した主因は、原油価格等の資源価格の高騰による影響でした。
 まず、3社は棚卸資産を総平均法で評価していますので、原油価格、為替レートなどの変動に伴って期中の仕入価格が期首の在庫価格を上回ると在庫評価益が発生して会計上の利益がかさ上げされます。

 元売会社は、石油備蓄法によって70日分の石油を備蓄する義務を課せられていますので、一般の事業会社と比較して多くの在庫を抱えています。このため在庫評価による影響額が大きいので、実質的な損益を評価するためには、在庫評価損益を考慮する必要があります。

 ENEOSの在庫評価損益は20年度+387億円、21年度+3703億円、出光は20年度+75億円、21年度+2333億円、コスモは20年度+208億円、21年度+723億円でした。ENEOSの21年度の営業利益7859億円に占める在庫評価益の比率は47%、出光の営業利益+持分損益4495億円に占める比率は52%、コスモの経常利益に占める比率は31%に及んでいました。

 また、原油価格の上昇局面では、卸売及び小売価格の方が原油コストより先に変動するため、タイムラグによって利ザヤが拡大しやすくなります。このタイムラグが21年度の石油製品事業の利益を押し上げたと考えられます。

 石油元売会社は補助金が支給された国内の燃料油事業以外に石油製品の輸出、石油化学、石油・天然ガス開発、金属等の非石油事業なども営んでいます。原油価格の高騰は石油・天然ガス開発事業の収益拡大要因にもなっていました。
 石油会社の経営実態は、決算説明資料で開示されている燃料油事業の損益に在庫評価損益、タイムラグ影響などを考慮した実質損益でみるとより正確に把握することができます。 


暫定税率を引き下げればガソリンと軽油の価格は確実に下がる

  ガソリンと軽油の税率に上乗せされている暫定税率(特例税率)を引き下げるべきとの斉木代議士の指摘はそのとおりだと思います。

 ガソリンと軽油の税率に暫定税率が加算された当時の目的が高速道路網の全国整備の推進などのために不足していた道路財源の確保にあり、その目的がすでに達せられていることを考慮すると、「特例税率の廃止」あるいは「特例税率を含む税率の引き下げ」を行う方が望ましいように思われます。


北海道のガソリン価格予想
7月7日(月)から7月13日(日)まで
変わらず
仕切によっては下げも

06月30日付ヘッドライン

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