
石油各社の好決算理由
石油元売は2026年度第1四半期(2026年4月~6月)も好決算を計上しました。好決算となった要因の一つは、今年2月28日の米国およびイスラエルによるイランへの空爆をきっかけにした中東情勢の変化によって、原油及び石油製品の市況が高騰したからです。
原油価格の上昇によって在庫評価で利益がかさ上げされたこと、仕切価格に反映される石油製品のスポット価格(業転価格)が原油価格と呼応してほぼ同時に上昇したのに対して、在庫が影響して原油価格の上昇がまだ売上原価に十分に反映されていないため、タイムラグによって石油製品のマージンが拡大したこと、ジェット燃料油など石油製品の国際市況が上昇していることで石油製品の輸出採算が向上していること、原油・天然ガス価格の上昇によって石油・天然ガス開発事業の収益が押し上げられたことなども好業績となった理由ですが、ベースとなっているのは良好な石油製品のマージンが維持されているからです。
懸念される石油製品のマージン悪化
石油業界では収益環境の悪化につながりかねない問題も発生しています。仕切価格と業転価格との差が拡大していること、コストコの廉売による周辺市況への影響が全国に広がっていることなどです。
仕切価格と業転価格との間には9月初旬時点で㍑10円程度の価格差が生じています。ここまで価格差が広がったのは、元売の集約が始まる2010年代半ば以来のことで、これが各地に広がっている陥没市況の原因になっていると考えられます。
現状では仕切価格から㍑10円安い価格で販売しても元売や輸入事業者は十分な利ザヤを確保できていますが、業転価格の下落は仕切価格に反映されて卸売マージンの縮小につながり、小売マージンも縮小します。
卸売・小売の両段階で適正なマージン水準を確保するためには過剰供給能力を削減し、需給バランスの適正化を図り、業転市場への安値供給を抑制し、適正価格での販売(採算販売)を徹底することなどが必要です。2016年以降に石油製品の国内マージンが拡大する局面では、これらの対応が適切に行われていたからです。
しかし、ENEOSと出光興産は、需要が減少傾向で推移すると予想される中で、石油精製設備の集約を当面行わず、製油所の稼働率を引き上げて販売量を増やす方針に転換し、市場からの余剰玉の買受の減少、スポット市場への安値供給の増加などの動きもみられるようになっています。これらの対応は、短期的には収益の拡大につながると考えられますが、収益環境を悪化させるリスクをはらんでいます。
生産量を増やしても収益が 拡大するとは限らない
元売各社は製品輸出を拡大する方針を示していますが、わが国の製油所の多くは、中国、韓国、シンガポールなどの主要製油所に比べてコスト競争力が劣っていますので、利益を確保しながら輸出を増やせるとは限りません。
エネルギー供給構造高度化法(高度化法)が告示された2014年7月以降の原油処理設備(トッパー)の能力削減のほとんどは設備の廃止を伴わない公称能力の削減によって行われてきましたので、必ずしもあてにできない輸出の拡大に拠らずに、トッパーの稼働率を80%台まで引き上げるためには、2030年頃までに石油精製設備を20%~30%廃止する必要があると考えられます。
仕切価格を大きく下回る価格で業転市場に出荷すると、結果的に収益性を損ねてしまうことは1990年代半ば以降に何度も実証されています。生産量を増やすことが収益の拡大につながるとは限らないのです。
中東情勢の変化によって、足元の収益の実態が分かりにくくなっていますが、石油業界は収益環境の悪化を警戒しなくてはいけない局面に差し掛かっていると考えられます。
そのようにならないために原点に立ち返る必要があると思われます。