
危険物施設が年々減少する中でも増加傾向で推移する危険物施設事故。関係者の危機感は深まるばかりだが、昨年も火災と流出とを合わせた事故の発生は全国で753件となっていたことが、このほど消防庁のまとめで明らかになった。調査が始まった平成元年以降で最も多く、これに無許可施設など危険物施設以外での事故も含めれば773件になる。
危険物施設における事故件数は平成6年の287件(火災113件、流出174件)から増加に転じ、600件を超えた平成19年以降は、増減を繰り返しながらも高い水準での「横ばい」状態が続いているが、昨年1月から12月までに全国で発生した危険物施設事故は火災、流出を合わせて753件。
調査を開始した平成元年度以降で最も多かった令和5年の711件を42件上回り、また、危険物施設が前年より3520カ所減って37万9120カ所となる中、危険物施設1万カ所当たりの事故発生件数も前年を1・28ポイント上回る19・86へと跳ね上がり、ともに過去最高を更新した。
このほかにも無許可施設で8件、危険物運搬中に11件、仮貯蔵・仮取扱いで1件の事故が発生しており、これらも合わせると危険物に係る事故は前年を43件上回る773件となる。
■火災事故
危険物施設で発生した火災事故は、死者が発生するなどの重大事故11件を含む267件で、前年を24件上回って過去最高となっている。
これら事故による死者は前年と同じ1人、負傷者は21人増えて50人、損害額は33億円ほど減って45億573万円。施設別では一般取扱所での発生が147件となって最も多く、これに製造所での56件、給油取扱所での45件が続いている。
出火原因物質は、4割となる109件が第4類の危険物で、内訳はガソリンなどの第1石油類が62件、重油などの第3石油類が18件、潤滑油などの第4石油類が15件、軽油や灯油などの第2石油類が10件など。
また、発生原因は半数を大きく超す147件が維持管理や操作確認不十分などの人的要因、83件が腐食疲労等劣化などの物的要因、37件が不明や調査中を含むその他の要因となっており、着火原因は静電気火花が61件で最も多く、次いで過熱着火が33件、高温表面熱が25件などだった。
なお、このほかにも無許可施設で7件、危険物運搬中に3件の事故が発生しており、これを含めると危険物に係る火災事故は277件となる。
■流出事故
危険物施設で発生した流出事故は、重大事故12件を含む486件で、4年連続で400件を上回るとともに、前年を18件上回って過去最高となった。
これら事故による死者は皆増となる1人、負傷者は29人増えて40人、損害額は4億6000万円余り減って4億2422万円。施設別では一般取扱所での発生が139件で最も多く、屋外タンク貯蔵所での92件、製造所での87件、移動タンク貯蔵所での62件、給油取扱所での56件が続く。
流出した危険物は、98%近い476件が第4類の危険物で、内訳は第2石油類が156件、第3石油類が141件、第1石油類が117件など。
また、発生原因は物的要因が265件、人的要因が198件で、物的要因では腐食疲労等劣化が165件、人的要因では操作確認不十分が60件でそれぞれ最多。その他の要因は23件だった。
なお、このほか無許可施設で1件、危険物運搬中に8件、仮貯蔵・仮取扱いで1件の事故が発生しており、これらも含めると危険物に係る流出事故は496件となる。