再エネの導入は拡大すべきだが…
2025.9.25
開発が推進されている洋上風力発電に広がった暗雲

 三菱商事、中部電力系のシーテックが2021年に実施された入札で両社などによるコンソーシアムが落札した「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖」、「千葉県銚子市沖」の3地点での洋上風力発電事業の開発を断念したと発表しました。両社は、今年2月に、インフレ、円安、サプライチェーンのひっ迫、金利上昇などの事業環境の変化によって事業環境が悪化していることを踏まえて、これらのプロジェクトの事業性の再評価を行っていると公表し、前年度の決算で三菱商事は522億円、シーテックは186億円の減損損失を計上していましたので、この発表に意外感はありませんでした。


 前記3案件の入札価格は、当時、競合事業者に対して大幅に割安だったと報道されていました。3案件を確実に落札するためだったと思われますが、必要以上に低い価格で入札し過ぎた、事業採算の見積もりが甘すぎた、将来のコスト上昇など事業環境の悪化を想定していなかったなどが、結果的に撤退を余儀なくされた原因だと思われます。

 さらに、今回の撤退が風力発電事業の将来に深刻な悪影響を及ぼすといった批判もなされています。いずれももっともな指摘と思われますが、これらを事前にどの程度予想できたかを考慮すると、一概に批判することはできないように思われます。

 これらの案件は、FITで契約されていますので、運転開始から15年間、販売価格は据え置かれますし、設備の維持・メンテナンス費用が将来下がるとは思えません。事業を継続することによって、買取期間中に3案件合わせると総額で数千億円の損失が発生する可能性が生じていましたので、事業会社として撤退するという判断は当然だったと思われます。

 洋上風力発電の導入拡大は、電気事業の低・脱炭素化において重要な政策課題の一つに掲げられていますが、私は以前から、わが国では風力発電の導入が進んでいる諸外国と比べると設置が検討されている地域でも発電効率を左右する風況が劣るケースが多い、地震・風水害などの発生頻度が高いため設備基準が厳しく設置及びメンテナンスコストがかさむ、北海のように水深が浅く低コストで設置できる固定式洋上設備の適地が少ない、水深にかかわらず設置できる浮体式洋上設備の設置・メンテナンスコストが著しく高い、風況や設置コスト・容易性などを考慮すると送電設備の増強に多額のコストと期間を要する、諸外国にはない漁業補償によるコストを考慮する必要がある、送電設備増強のためのコスト負担がかさみ、かつ、発電量と電力需要との関連性が低いため供給安定性を確保するための蓄電設備や需給を調整するための火力発電設備などのコスト負担が重くなるといった理由から、導入の拡大を図ると、電力供給コストを押し上げる可能性が高いと指摘させていただいていました。

 条件が異なる海外の事例は風力発電にかかわらず、いずれの事業においても、国内では参考にならないと考えるべきなのです。



太陽光発電の需要家負担が減少するのは2030年代半ば以降


 一方、太陽光発電は、着実に導入が進んでいます。しかし、近年、大規模設備の導入に際して、自然環境の破壊、土砂災害などの発生リスクの拡大などが問題視されるようになり、大規模開発を制限する地方条例が施行されるケースが増えてきました。

 太陽光発電の導入拡大に伴う電力価格の押し上げ、将来発生する太陽光発電設備の廃棄に伴う問題も懸念されています。

 太陽光発電のコストは低下傾向で推移していますが、FITによる買取価格は契約期間には下がりませんし、夜間は発電せず、天候によって必ずしも需要と関係なく発電量が変動する太陽光発電の導入の拡大に伴って、送配電設備の増強や需給バランスを整えるための需給調整・蓄電などコストが増大しますので、需要家の負担は確実に押し上げられます。

 私は、太陽光発電設備は送配電設備への負担が小さく、自然環境への影響が小さいビル・工場・倉庫・流通設備などの事業設備や家庭の屋根・壁などの遊休スペースを中心に設置の拡大を図るのが妥当な方策だと考えています。
 

再エネ導入コストが下がり 始めるのは2030年代半ば以降


 わが国で、再エネの導入負担が下がり始めるのは、FITによる太陽光発電の買取コストが現状のコストに比べて著しく高い水準(2012年度40円、2013年度36円、2014年度32円など)に契約された20年の事業用太陽光発電の買取期間が終了する2032年以降、太陽光発電設備の運転開始時期を考慮すると2030年代半ば以降、さらに、風力の導入拡大の影響、送電設備や蓄電設備の増強に伴うコスト増などを勘案すると早くても2030年代後半になると予想されます。

 風力、太陽光、地熱、小規模水力、バイオマス発電など再生可能エネルギーの導入は拡大する必要性はあります。

 私は、そのために再生可能エネルギーの導入拡大につながる規制・制度の改革にも積極的にかかわらせていただいてきましたが、併せて、様々な問題が発生するリスクがあると繰り返し提言してきました。同様の意見は少なからぬ有識者や電気事業関係者の間でも議論されていました。再エネにかかわらず、電気事業において近年生じている問題のほとんどは新たに明らかになったわけではないのです。







北海道のガソリン価格予想
10月6日(月)から10月12日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げ、据え置きも

10月05日付掲載予定

■ガソリン価格「乱高下」 札幌市場 疑念抱く消費者
■非常時の給油手順確認 稚内で本年度最後の災害時対応実地訓練
■「トドック車検」開始 エネコープ
■再び前年割れ 8月の国内燃料油販売 ガソリン、灯油伸びず
■「満タン運動」など周知 全石連などが道新防災展にブース