
地球温暖化の発生要因とされる温室効果ガスの排出量は増加傾向で推移している
地球全体の平均気温と海水表層の平均水温が上昇しているのは事実です。
その要因の一つが大気圏内で地表や海水面から放出される赤外線の一部を吸収することで温室効果をもたらす温室効果ガスの濃度の上昇であると指摘されています。
確かに産業革命以降の温室効果ガスの排出積算量と地球表面の平均気温・水温との間に強い相関性がみられます。
温室効果ガスをもたらす物質として、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロン類などが挙げられており、これらのうち化石燃料をエネルギーとして利用する際に排出されるエネルギー起源二酸化炭素が7割程度を占めています。エネルギーの利用と環境問題は表裏一体の関係があるとされているのはこのためです。
Energy Instituteが集計しているStatistical Review of World Energyによると、世界全体のエネルギー起源二酸化炭素排出量は2014年から2024年の10年間に年率0・8%のペースで増加していますが、OECDは年率1・3%減、非OECDは年率1・9%増で、OECDのシェアは2024年に31・2%まで低下しました。
地球気候変動問題に関する国際的な枠組みであるパリ協定などの国際的な取り組みにおいて温室効果ガスの排出量削減に向けた数値目標を設定し、さらには、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルの実現を公約しているのはOECD諸国だけで、世界最大の排出国である中国(2024年のシェア31・5%)、3位のインド(同8・3%)を含む新興国・発展途上国は数値目標を義務付けられていません。
現在の取り組みのままでは温室効果ガスの排出量を削減して地球温暖化のペースを抑制していくことはかなり難しいと思われます。
ただし、人為起源による地球環境問題は年々厳しくなっていますので、温室効果ガスの削減目標やカーボンニュートラルの達成目標時期を議論する際には、我が国はさらに厳しい取り組みが求められるようになると思われます。
我が国でも温暖化は進んでいるが地域間で変化には差がみられる
気象庁がホームページで公表している過去の気象データを分析すると、わが国でも平均気温が上昇傾向で推移していることが分かります。単年のデータはぶれが大きいので、平年を示す際に一般的に用いられている過去30年の移動平均の変化をみると、1974年(1945年~1974年の平均)から2024年(1995年~2024年の平均)の50年間に47都道府県庁所在地の年平均気温は14・3℃から15・7℃へ1・4℃、最高気温は35・1℃から36・5℃へ1・4℃、最低気温はマイナス5・9℃からマイナス3・8℃へ2・2℃それぞれ上昇していました。
ただし、地域によって平均気温、最高気温、最低気温の変化率には差がみられます。札幌市では、同じ期間に、平均気温が8・0℃から9・4℃へ1・4℃上昇していましたが、最高気温は33・0℃から33・1℃とほぼ横ばいで、最低気温はマイナス17・5℃からマイナス12・5℃へ5・0℃上昇しており、平均気温の上昇幅は全国平均とほぼ同じだったものの、最高気温と最低気温には大きな開きがみられました。なお、47都道府県間の過去50年間の気温の変化幅の範囲は、平均気温が+1・0℃~+1・9℃、最高気温は+0・1℃~+2・7℃、最低気温は+0・5℃~+5・2℃で、平均気温の変化幅の較差は比較的小さかったものの、最高気温と最低気温の上昇幅には地域間で大きな差がみられました。
ちなみに、南極の昭和基地の1974年と2024年の30年移動平均は、平均気温がマイナス10・4℃で横ばい、最低気温はマイナス37・4℃からマイナス36・5℃へ0・9℃上昇していましたが、最高気温は7・1℃から6・1℃へ0・9℃低下していました。
温暖化対策は多面的な取り組みが必要と思われる
このように、気温の変化に地域差がみられることから、温暖化は温室効果ガスの濃度の上昇だけで起きているわけではないのではと私は推察しています。 例えば、①気温の変化を和らげ、かつ、二酸化炭素を吸収する効果がある森林や草原の面積の縮小、②地表面より温度変化が小さい地下との熱交換を阻害する舗装率の増加、③地表面より温度変化が緩やかで蒸散による気温引き下げ効果もある水域面積の縮小、④エネルギー利用の過程で発生する排熱の増加、⑤機械などを使用する際に発生する廃熱の増加などは、経済活動や社会・生活様式の変化の過程で、気温や水温の上昇につながっていると考えられます。
温暖化対策は多面的な取り組みが必要と思われます。