石油販売事業者の中期経営戦略は 収益環境の悪化を前提にする必要がある
2024.10.20
石油販売事業者の収益環境は改善している

 経済産業省が、毎年度、取りまとめている揮発油販売業者数及び給油所数では、2023年度末(2024年3月31日)現在の登録事業者数は前年度末比347減の1万2407、給油所(SS)数は549減の2万7414となり、SS数は最も多かった1994年度末に比べて55%減少し、同期間に事業者数は61%減少しました。

 ガソリンと中間3品(灯油、軽油、A重油)の国内販売量の合計は、2002年度の1億6008万klをピークに減少傾向で推移し、2023年度はピーク比39%減の9738万klまで減少しました。

 同期間にガソリンの国内販売量は26%、灯油は61%、軽油は21%、A重油は67%それぞれ減少しています。このように燃料油の国内販売量は減少しているのですが、SS及び石油販売事業者の数がそれ以上のペースで減少しているため、SS及び販売事業者のガソリン及び中間3品の平均販売数量は同期間に増加しています。

 一方、2002年度から2023年度に石油情報センターが取りまとめている給油所価格調査の小売価格の全国平均と原油輸入コスト、税等から計算した平均マージンは、ガソリンが㍑22・5円から㍑43・0円、灯油が㍑20・7円から㍑43・2円、軽油(小売)が㍑25・3円から㍑46・9円に拡大しています。特に、元売の再編・集約が進み、元売各社が採算を重視した販売施策に移行した2016年度以降のマージン拡大は顕著です。

 このように単純平均値だけで比較すると、1SS及び1事業者当たりの石油製品の粗利益額は2002年度から2023年度にかけて大幅に増加している計算になるのですが、単純平均と個々の事業者の販売数量の変化は必ずしも一致するわけではありません。私がヒアリングした印象では、小規模な販売事業者の販売数量は減少しているケースが少なくありませんので、前述した説明に違和感を感じる事業者もいらっしゃるかもしれませんが、石油製品販売業の足元の収益環境が歴史的にみて悪くないことは事実です。


石油製品販売業の収益環境は今後悪化に向かう可能性が高い


 わが国の低・脱炭素化政策と照らすと、自動車や石油利用機器の燃費の改善、電化シフトによる利用台数の減少などにより、燃料油の国内需要は減少し続けると予想されます。特に電化シフトの影響を受けやすいガソリンと灯油の需要減少ペースは今後加速する可能性が高いと見込まれます。軽油は、トラックの台数が増加していること、ディーゼル車の燃費の改善度合いがガソリン車ほど顕著ではないこと、利用形態から大型トラックは電気自動車へのシフトが進みにくいことなどから、需要の減少ペースは相対的に緩やかになると予想されます。

 なお、石油製品の国内需要を見通す上で重要なポイントの一つが、電化シフトを促す政策がいつ、どのような内容で実施されるかになります。

 国全体としての低・脱炭素化目標の達成度合い、原子力発電所の稼働の正常化や再エネの導入拡大によって電力の低・脱炭素化が進むかどうかなどがエネルギー政策に影響を及ぼすと考えられます。

 そして、これまで元売の再編・集約に伴って着実に進められていた石油製品の精製・供給能力の削減が進みにくくなると予想されますので、需給ギャップが拡大して、過剰供給に陥りやすくなり、マージンも縮小しやすくなると考えられます。

 異業種の安売量販店の出店によって市況が崩れて収益環境が悪化している地域が広がっており、1~2年前から、既存事業者の中にもマージンを圧縮して販売数量あるいは顧客数を伸ばそうとする動きが散見されるようになっていることも懸念されます。このような動きは今後さらに広がっていくと予想されるからです。

 SS及び石油販売事業者の数は減少し続けますが、燃料油の需要減少ペースが拡大することで、1SS当たり及び1事業者当たりの平均販売数量は、数年内に減少に転じる見通しです。数年先を見越した石油販売事業者の中期経営戦略は、石油製品販売業の収益環境が今後悪化することを前提に立てる必要があるように思われます。



北海道のガソリン価格予想
4月28日(月)から5月4日(日)まで
価格下降
値戻し後の下げ基調

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