石油業界は自らの判断で構造改善を実現してきた
2026.2.15
87年度から01年度に行われた規制・制度改革とその影響


 石油産業の全面自由化に向けた規制・制度改革は、87年度から01年度にかけて2段階に分けて進められました。

 まず、87年度から91年度にかけて、主に石油精製や生産にかかわる規制が緩和され、石油精製・元売の経営の自由度が高まりました。

 石油各社は、設備の新増設が制限されていたため不足していた分解・改質・脱硫など2次精製設備の能力を増強し、石油製品を国内需要に合わせて生産できるようになったことで、輸入が減少し、石油製品の供給コストが低減されるとともに、需要の変化に柔軟に対応できるようになり、燃料油の需給が引き締まって精製・販売マージンが拡大しました。

 この結果、石油各社の収益は生産・販売量の増加とマージンの拡大の相乗効果によって、94年度まで拡大傾向で推移しました。

 ところが、需給がバランスした後にも2次精製設備の能力を増強し続けたため精製能力が過剰になり、需給バランスが崩れて、販売競争が激化したことから、94年頃から99年頃にかけてガソリンの精製・販売マージンが大幅に縮小、中間留分のマージンも縮小し、石油各社の業績は低迷しました。

 95年度から01年度にかけて第2段階の規制・制度改革が実施されました。主な内容は、石油製品の輸出入規制の撤廃、石油備蓄法の改正、SSの転籍指導の廃止、セルフSSの運営解禁などで、「石油業法」が01年12月に廃止されて、石油業界は全面自由化されました。

 なお、「ガソリンのマージンは特石法が廃止された影響で縮小した」と説明されることがありますが、この解釈は妥当ではありません。

 なぜなら、ガソリンのマージンの縮小は輸入規制が廃止される前から始まっており、輸入規制が廃止された後にガソリンの輸入は減少しているからです。過剰投資と過当販売競争がガソリンのマージンが縮小した原因だったと考えられます。



ガソリンと軽油のサルファフリー化が促した需給改善と製油所集約


 02年以降に実施された主な規制・制度改革の一つがガソリンと軽油のサルファフリー化(03年告示、08年施行)です。サルファフリー化は、環境対策として、ガソリンと軽油に含まれる硫黄分を、それ以前の100PPM(ガソリン)及び50PPM(軽油)から、それぞれ10PPM 以下まで低減した品質規格の改定です。

 石油各社は、08年の規格改定を待たず、一部製油所で脱硫能力を増強して、05年1月にサルファフリーガソリンと軽油の出荷を開始しました。これにより脱硫装置の能力増強による生産量の制約、輸入の減少などからガソリンと軽油の国内需給が引き締まって両製品のマージンが拡大しました。

 出光興産が03年から04年にかけて行った兵庫製油所、系列の沖縄石油精製及び東邦石油の石油精製設備の廃棄のきっかけにもなったと考えられます。



高度化法が石油業界の構造改善に 直接寄与したのは一次告示のみ


 09年にエネルギーの安定供給、経済効率性の向上、環境への適合を図る目的で「エネルギー供給構造高度化法」(以下、「高度化法」)が制定されました。

 石油業界では、燃料油の内需減少に伴う供給過剰の是正、白油化シフト、原油の重軽格差拡大等に対応する目的で、10年7月に石油精製設備にかかわる重質油分解装置装備率の引き上げを目標とする規制が告示されました(高度化法1次告示)。

 この規制により、グループごとに残油流動接触分解装置(RFCC)、残油熱分解装置(コーカー等)、残油水素化分解装置などの重質油分解装置の能力合計の常圧蒸留装置の能力に対する比率を14年3月末までに引き上げることが義務付けられました。

 その効果もあり、国内精製能力は10年3月末の日量479万バレル(以下、BD)から14年4月には394万BDへ約18%削減され、重質油分解装置の平均装備率は約10%から約13%へ向上し、供給能力の削減によって需給バランスが改善したことで、ガソリン、中間留分ともにマージンが拡大しました。さらに、設備集約による稼働率の改善、コスト削減・効率化などの効果も得られ、石油業界の収益力は向上しました。

 14年7月には高度化法の新たな判断基準(2次告示) 、17年10月には高度化法の3次告示が出されました。しかし、いずれも常圧蒸留装置の能力削減において公称能力削減による対応が認められたため、設備の集約は限定的にしか行われず、収益構造の改善にはつながりませんでした。



石油業界は自らの判断で 収益構造の改善を実現してきた


 私は、90年代半ば以降にわが国の石油業界で行われた業務提携や経営統合のほとんどに何らかの形で関与させていただきましたが、99年4月に行われた当時の日本石油と三菱石油の経営統合から現行の3・5社体制につながる元売統合の判断のうち、オイルメジャーズの日本の石油下流市場からの撤退をきっかけに行われた事例以外は、石油各社の自らの判断によって実現したと考えています。

 現行の元売3・5社体制の実現が決まって以降の設備集約、採算をより重視した供給・販売政策の見直しなどの経営判断もENEOSをはじめとする元売の経営陣の判断によって実現したと考えられます。

 燃料油の内需は減少し、近い将来、その減少ペースが加速すると予想されます。燃料油の輸出を拡大し続けられるとは思えませんし、石化製品への生産シフトにも限りがあります。石油精製設備や事業所の集約は必要不可欠と思われます。

 製油所や事業所の統廃合を円滑に進めるためには、従業員、取引先、地元との事前調整が必要です。減損の発生も予想されます。事業構造の改革は、余裕があるうちに進める必要があると思われます。





北海道のガソリン価格予想
2月16日(月)から2月22日(日)まで
価格上昇
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