
10年間でほぼ半減した民生用石油機器の販売台数
石油温水給湯暖房機の販売台数は、2010年代は年間40万台前後で推移していましたが、2025年はほぼ前年並みの18万1千台で10年前の半分以下の水準まで落ち込んでいます。同じ期間にガス機器(ガス湯沸かし器、ガス温水給湯暖房機)の台数はほぼ横ばい、電気温水器の台数は増加傾向で推移しています。
石油機器の平均耐用年数は民生用で10年程度、産業用で10数年から20年程度ですから、利用機器の販売台数の減少は今後10年から20年にわたって燃料油の需要にマイナス影響を及ぼし続けることになります。
石油機器の経済性はガス機器に劣っているわけではありませんし、エコフィールに代表される高効率機器は環境にも優しいエネルギー利用機器です。
また、石油は供給安定性に優れたエネルギーです。今年3月に米国とイスラエルがイランを攻撃したことをきっかけに原油やLNGの供給危機が叫ばれた際に話題になったように、二百数十日分の備蓄が供給を支える構造になっているからです。
わが国の現在のエネルギー政策では、電化が可能な分野は脱炭素化された電気に需要をシフトし、電化が難しい分野では合成燃料や水素・アンモニアなどの脱炭素化燃料へのシフトを促す方針が示されています。
しかし、まだ電気の脱炭素化のめどが立っていないこともあり、本格的に電化シフトを促す制度は導入されていません。冒頭に示した石油機器の販売台数が落ち込んでいる一因は石油業界の石油機器の拡販努力が足りなかったためと考えられます。石油業界は、機器メーカーとともに、消費者ニーズに応えた機器を開発し、機器の拡販に取り組み、導入及び利用を促していく必要があると思われます。
温暖化は確実に進んでいるが 地域によって状況は異なる
ところで、気象庁の長期気象データを分析すると、わが国でも温暖化は確実に進んでいることが分かります。
平年の気候を評価する際に一般的に用いられる30年間の平均値(現在の平年は1991年から2020年の平均が用いられています)の変化でみると、全国47都道府県(原則、都道府県庁所在地、以下同様)の平均気温は1946年~1975年の平均値14・4℃から1996年~2025年の平均値15・8℃へ50年で1・4℃上昇しています。同期間の最高気温の平均は35・1℃から36・5℃へ1・4℃上昇し、同じく最低気温の平均はマイナス5・7℃からマイナス3・6℃へ2・1℃上昇しています。
ただし、地域によって気候変動の状況は異なります。都道府県庁所在地の中で30年間の平均気温が過去50年間にもっとも上昇したのは岡山県岡山市の2・0℃、もっとも上昇幅が小さかったのは岩手県盛岡市の1・1℃、同期間に最高気温の平均値が最も上昇したのは栃木県宇都宮市で2・7℃、小さかったのは和歌山県和歌山市で0・2℃、同じく最低気温の平均値が最も上昇したのは青森県青森市で5・1℃、小さかったのは島根県松江市で0・4℃でした。ほぼ全国的に最高気温の上昇幅の方が最低気温の上昇幅より大きくなっていました。
エネルギー政策において石油の位置付けを見直すべきでは
温暖化などの気候変動は、その原因物質と指摘されている二酸化炭素など温室効果ガス(GHG)の濃度の上昇だけでなく、様々な原因によってもたらされているためと考えられます。エネルギーを製造・供給・消費する際に発生する排熱はその一つで、例えば、発電時のエネルギーロスは温暖化の原因の一つと考えられます。また、エアコンなどで冷暖房を行う際にはその逆の熱が大気中に排出されており、これが人口が多く経済活動が活発な都市部の温度上昇が地方に比べて大きくなっている原因になっていると考えられます。
石油製品には、原油の開発から輸送・精製・消費の全過程におけるロスが、電気や都市ガスに比べて小さいという特性があります。私は、今回のイラン危機を勘案しても、エネルギー政策において、石油の在り方を見直すべきではないかと考えています。