懸念される第3次石油危機の影響
2026.5.20
勃発した第3次石油危機

 2026年2月28日にイスラエル国防軍と米軍がイランに対して大規模な空爆を行い、1989年からイランの最高指導者に就いていたアリー・ハメネイ師を殺害したことをきっかけに始まった中東情勢の悪化によって、第3次石油危機とも評されるエネルギー危機が起きています。


 イスラエル・米国両軍によるイラン各地への空爆、イラン軍によるクウェート、バーレーン、カタール、UAE、サウジアラビア、オマーン、ヨルダンにある米国関連施設や石油関連設備への攻撃で、現地の原油および天然ガス生産設備、LNGプラント、石油精製設備、港湾設備などにも被害が発生しています。被災した設備が全面復旧するまでには10年以上の期間を要するとの見方も示されています。

 世界の原油需要は日量1億バレル余り(以下、日量バレルをBDと表記)で、その20%程度に相当する2千万BDがペルシャ湾岸の8カ国(イラン、イラク、バーレーン、サウジアラビア、クウェート、カタール、オマーン、UAE)から供給されています。

 特に、アジア諸国の多くは原油の8割以上をペルシャ湾岸諸国に依存していますので、この危機が長引くと、エネルギー及び石化製品の供給不足と価格の高騰によって、アジア各国の経済は深刻なダメージを被る可能性があります。

 原油及び石油製品の国際市況は高騰し、中東産原油のスポット市況は3月に史上最高値を記録しました。中東産原油の代表油種であるドバイ原油のFOB価格は、2月には1バレル70ドル程度で取引されていましたが、3月半ばに約170ドルまで急騰し、5月中旬時点においても100ドル前後で取引されています。


ホルムズ海峡の航行制限とその影響は深刻

 3月以降、イランによって平時に1日当たり百数十隻通過していたホルムズ海峡の通過が阻害されています。ホルムズ海峡は完全に封鎖されているわけではなく、4月には10数隻の原油タンカー、LNGタンカー、LPGタンカー、コンテナ船、バルク船が通過し、5月に入っても週に数隻のペースで船舶が通過しています。その中には日本関連の船舶も複数含まれていますが、5月中旬時点でペルシャ湾内には日本関係船舶が原油タンカー11隻、石油製品・化学品タンカー12隻、LNGタンカー6隻など、40隻あまりが滞留を余儀なくされているとされています。

 なお、国連、IMO(国際海事機関)などがイランに、すべての船舶を自由かつ安全に通過できるように要請しており、日本を含む複数の関係国がイラン側と個別に交渉しているとされていますが、その内容は明らかにされていません。また、有識者の一部に、日本政府のイラン政府への働きかけが不足していると指摘する向きもありますが、ホルムズ海峡が国際航行に使用されている国際海峡で、すべての船舶に国際法による通過航行権が与えられているといった事情も勘案すると、この指摘は妥当とは思えません。

 ホルムズ海峡を回避する原油及び石油製品の輸送ルートには、①サウジアラビアの東西パイプライン経由ヤンブー港、②UAEのアブダビ・パイプライン経由フジャイラ港、③イラク・キルクーク─ジェイハンパイプライン、④イスラエル・トランス・イスラエル・パイプラインなどがありますが、③、④は主に欧州向けで、ホルムズ海峡ルートでアジアに出荷されている原油及び石油製品を迂回輸出できるのは、①と②のルートの合計で総出荷量の2~4割程度にとどまると推察されます。


中東情勢の緊迫が長引くとわが国の経済は深刻なダメージを受ける可能性があるが…

 わが国は2025年に、原油の94%、国内供給量の約6割を輸入に依存しているナフサの74%(実績)をペルシャ湾岸のイランを除く7カ国から輸入していました。これを短期間で他地域からの輸入に振り替えるのは容易ではありませんが、米国(輸入シェア2025年3・8%)、ウクライナへの軍事侵攻による経済制裁で輸出を抑制していたロシア(同2020年4・1%)、オーストラリア(同2025年0・2%)、中南米、アフリカなどからの輸入量をある程度増やすことはできます。

 また、わが国は、国家、民間、産油国共同の合計で243日分(今年2月末時点)の石油を備蓄していますので、これを取り崩すことで、計算上は8カ月分の供給量を確保することができます。ただし、実際は、わが国と経済交流があるアジア諸国の多くが十分な石油備蓄を行っていませんので、石油及び石化製品を供給して支援しなくてはならなくなる可能性もあることから、石油備蓄の取り崩しだけでは半年も持たないと考えるのが妥当と思われます。

 なお、石油統計速報によると今年3月の燃料油の国内生産量は前年同期比99・7%とほぼ前年並みで、石連週報によると原油処理量は4月には前年実績を10数%下回っていましたが、5月の処理量はほぼ前年並みでした。現時点では、まだ供給不足には陥っていないと考えられます。





北海道のガソリン価格予想
5月18日(月)から5月24日(日)まで
価格上昇
値戻し進むか

05月20日付ヘッドライン

■「難局」乗り切りへ総力 採算経営の徹底前面に 9石協の通常総会始まる
■道標「懸念される第3次石油危機の影響」
■洋上風力発電でシンポジウム 製造拠点化の可能性探る
■成長事業の創出等設定 出光興産が26~30年度新中計策定
■減収増益、純利2587億円 ENEOSホールディングス2025年度連結決算