
ガス事業制度改革の目的は天然ガスの導入・利用の拡大
ガス事業では、エネルギーセキュリティに優れ、環境負荷の低い天然ガス利用の拡大、効率的なガスの供給体制の実現を基本的な視点として、95年度から四次にわたって制度改革が行われ、大口供給規制の見直し、小売部分自由化及び自由化範囲の拡大、ガス導管事業の創設、託送供給制度の拡充などが実施されてきました。
この結果、大口需要家向け販売事業を中心に新規参入が進み、自由化分野を中心にガス価格の低廉化が進みました。そして、都市ガス大手では98年から08年にかけて、経営合理化や販売数量増効果などを反映して、約3年ごとに料金が引き下げられ、大手の供給区域では内外価格差が縮小しました。しかしながら、全般に価格改定幅が自由化分野に比べて小さい規制分野では内外価格差は十分に是正されていませんし、中小事業者の中には90年代以降に一度も料金を改定していない事業者もあり、内々価格差の是正も進んでいませんでした。事業者の再編・集約も石油やLPガスなどの産業に比べて進んでいません。規制緩和後の料金の引き下げ幅や内外および内々価格差を評価する限り、すでに全面自由化されている石油産業や電気事業に比べて競争原理の導入が不十分だったと考えられなくもありません。
加えて、東日本大震災によって、大規模集中電源を中心にした既存の電力供給システムへの不安が高まったこと、原子力の導入及び利用の拡大を図るのが難しくなったことなどから、化石エネルギーの中で環境にもっともやさしく、供給安定性にも優れた天然ガスへの期待がさらに高まり、天然ガスの導入及び利用の拡大をより図りやすくするため、ガス事業制度を改革する必要性が認識されるようになったのです。
ガス事業制度改革は電気事業の制度改革と並行して実施されることになる公算大
電気事業では、15年をめどに広域系統運用機関を設立、16年をめどに電力小売を全面自由化、18~20年をめどに送配電部門の分離、料金規制の撤廃などの規制・制度改革が実施される見通しです。そして、ガス事業制度についても電力システム改革と並行的に規制・制度改革が進められることになると予想されます。
制度改革を進める上でもっとも重要なことは、現状に比べて日本経済の発展や国民の暮らしの改善につながるようにすることでしょう。すべての制度には策定された理由があります。事情が変化したことで、廃止すべきものや大幅に見直すべきものもありますが、小幅な修正で十分なもの、修正の必要のないものもあると思われます。国民の利益につながる制度改革を実施するためには、国民に、現状、課題、検討されている制度改革の内容、及び、制度改革を実施することによる影響などを正確に周知させることが重要となります。
です。
エネルギー事業の制度改革では失敗が許されない
エネルギーはあらゆる経済活動、国民の暮らしと切っても切れない関係にあります。特に、電力やガスは、その需要が経済活動と一致した動きを示し、実質GDPが1%増減する局面で同時に大口電力需要が2~3%、産業用ガス需要が約3%、家庭用を含めた電力需要全体が約1%それぞれ増減することが統計上明らかにされています。これは、停電、ガスの供給障害、大規模な節電・省エネ要請などが、経済活動や生活に大きな支障を及ぼすことを意味します。さらに、電気料金・ガス価格の上昇は、産業界の収益力や国際競争力を落とし、家計負担を重くします。
電力およびガスのこのような特性から、産業界や一般消費者の大半は、電力の供給が不安定になって、停電の発生頻度が増加したり、大幅な節電・省エネを求められたり、あるいは、電気料金・ガス価格が上昇したりするような制度改革を望んではいません。電力システム改革・ガス事業制度改革では失敗が許されないのです。
なお、ガス事業においては、まだ、すべての地域でガスをほぼ同じ条件で十分に利用できる条件が整っていませんので、ガス導管網の整備・拡充、競争原理が十分に機能する公平な競争環境の整備、保安体制の拡充などを、制度改革と同時並行的に議論していく必要があると思われます。
今後進められる電気事業制度の詳細設計、ガス事業制度の設計においては、事業システムの変更にどれだけコスト及び時間がかかるか、どのような弊害が発生する可能性があるかなどを、実務に精通した有識者、事業者、関連産業や需要家の代表者などを加えて十分に議論し、コストや弊害が最少になるように制度を設計すべきと思われます。