
北米からの輸入が拡大してもLNGやLPGの輸入コストが大きく下がることはない
北米で、原油や天然ガスの生産が増加して需給構造が変化し、北米における天然ガスの取引価格を大きく押し下げた「シェール革命」が及ぼす影響に関しては、エネルギー事業者やエネルギー分野の専門家の見解も分かれていますが、専門的な知識をお持ちとは思えない方々の評論の中には実情とかけ離れたものが散見されます。
その最たるものが、北米からLNGやLPGを大量に輸入するようになると日本の天然ガス調達コストが大幅に下がるとの推論でしょう。
確かに、現在、北米における天然ガスの取引価格は百万BTU当たり3~4ドルで、日本のLNG輸入コストの四分の一から五分の一にすぎませんので、北米から天然ガスを輸入できれば、コストが大幅に下がると考えがちです。しかし、北米の天然ガス取引価格は過剰供給によって開発コストを割り込んだ水準まで低下しており、需給が適正化すれば五~六ドル以上に上昇すると予想され、液化・輸送コスト(五~六ドル)、事業者マージンなどを考慮すると、日本入着時のLNG価格は12~13ドル以上になると見込まれますので、現状の原油価格にリンクした輸入価格と大きな差は生じません。
LPGに関しても、今年の1月~7月の平均輸入価格1トン当たり909ドルに対して、アメリカからの平均輸入価格は882ドルとほとんど差は見られません。簡単な加圧装置や冷却装置で液化できるLPGは、原油や石油製品と同様に国際間取引が一般的に行われているため、ローカル性が強い天然ガスと違って、各国間での取引に大きな価格差が生じないからです。
北米からLNGやLPGを大量に輸入できるようになると、競争原理が一層活用できるようになって幾分か安く調達できるようになったり、供給の柔軟性を高めたりすることができるようになると期待されますが、輸入コストが大幅に下がるとは考えにくいのです。
中長期的にLPGの価格決定方式を変えるきっかけの一つになる可能性はある
ちなみに、シェール革命によって、アメリカで需給構造がもっとも変化しているエネルギー資源の一つがLPGです。シェールガス・オイルの増産に伴ってプロパンやブタンの生産量が拡大しているからで、アメリカのLPG輸出量は、07年から12年にかけて20・8百万バーレル(日量57千バーレル)から71・9百万バーレル(日量197千バーレル)へ3・5倍に増え、アメリカは12年にLPGの純輸出国になっています。13年1月~6月の輸出量は50・4百万バーレル(日量278千バーレル)とさらに増加し、日本のアメリカからのLPG輸入量も1月~7月のシェアが7%弱になるなど急拡大しています。
なお、現状では北米からのLPG輸出の拡大は、世界の取引価格に大きな影響を及ぼしてはいませんが、輸出がさらに拡大すると、世界全体の需給構造が変化し、LPGの価格決定方式が変わるきっかけの一つになる可能性があります。
原油は、80年代に、非OPEC産油国の増産、スポット取引の拡大、スポット市場・先物市場の発達などによって、メジャーズやOPECの市場支配力が低下して、価格を市場が決めるようになりました。
LPGにおいても、シェールガス・オイルの増産が見込まれる北米やLPGを随伴する大規模なLNGプロジェクトが複数進行しているオーストラリアなど先進国の生産及び輸出の拡大、スポット取引市場の発展などによって、サウジアラビアが一方的に通告しているCPに準じた価格決定方式が崩れていく可能性があると考えられるからです。