収益環境の改善が期待される中で将来のために何ができるか 
2015.12.7
エネルギー政策の見直しは石油業界にはプラスに働かない公算大

 エネルギー産業を取り巻く情勢の変化を踏まえて、エネルギー基本計画、電気事業システム、ガス事業システムなどの改定作業が進められています。太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーやガス・コージェネレーションシステムなどの分散型エネルギーの導入も推し進められています。


 エネルギー関連の規制・制度が最終的にどのように見直されるかはまだ確定していませんが、審議会で議論されている内容を見る限り、新しいエネルギー政策が、石油業界にとって好ましい内容となるとは思えません。石油製品やLPガスは、東日本大震災によって供給安定性・柔軟性に優れたエネルギーであることが実証されましたが、その位置づけを見直す機運が盛り上がっていないからです。需要が一定水準を下回ると効率的に製品を供給することが難しくなってしまいます。石油の需要が短期間で大きく押し下げられることがないよう、業界をあげて取り組む必要があると思われます。

 石油産業では、「エネルギー供給構造高度化法」による元売別に設定された石油精製設備の分解能力引き上げの期限を14年3月末に控えて、石油精製設備の能力の削減が進められています。

 
精製能力削減の効果で需給は引き締まり市況の改善も期待されるが…

 13年の燃料油の国内需要は、震災の復興や消費税引き上げを控えた建設・土木向け需要の拡大、景気の回復などによって需要が回復している軽油と、航空便の運行数の増加によって需要が拡大しているジェット燃料油を除いて減少傾向で推移しました。ガソリンは、軽自動車・小型車・ハイブリッドカーなどの普及によって自動車の平均燃費が改善していること、灯油は家庭分野のエネルギーが電気や都市ガスにシフトしていること、産業用燃料需要が政策的に支援されている都市ガスへの燃料転換が進んでいることなどがその理由です。原子力発電所の設備利用率の低下などによって嵩上げされていた火力発電用燃料需要も石炭火力発電設備の復旧や新設、ガス火力発電設備の新増設などによって減少に転じました。

 東日本大震災をきっかけに見直され、一次販売台数が急増した石油暖房機器や給湯機器も12年半ば以降は販売が伸び悩んでいます。家庭用石油機器の普及状況は灯油の将来にわたる需要に影響します。ガス機器の販売が好調に推移しているだけに、石油の将来が不安視されます。

 14年も燃料油の内需は減少する見通しです。軽油の需要は景気の回復によって増加が見込まれますが、ガソリン、灯油、A重油、一般C重油の需要は、自動車の低燃費化、民生用分野における電気・都市ガスへのシフト、産業用分野における都市ガスへの燃料転換などによって減少が続くと予想されるからです。電力向けC重油は、石炭火力発電および天然ガス火力発電の新増設に加え、原子力発電も13年7月に施行された新規制基準を満たしたユニットが徐々に再稼働すると見込まれるため、14年の国内需要は東日本大震災以前を下回る水準まで落ち込む見通しです。

 ただし、14年3月末までに実施される精製能力削減の効果によって14年は原油処理設備の利用率が85%前後まで上昇する見通しですので、石油製品の需給が引き締りやすくなって市況が改善し、石油産業の収益環境が改善すると予想されます。

 しかし、石油製品の国内需要が減少し続けると予想されることなどを考慮すると、仮に収益環境が改善したとしても過去の需給改善局面ほど好環境が長続きするとは思えません。


14年は石油製品事業の収益改善が見込める

 13年の精製・元売各社の石油事業の(在庫評価の影響を除いた)実質損益は、燃料油の国内需要の減少とガソリンマージンの低下によって悪化しました。ただし、石油化学製品事業はパラキシレン、ベンゼン、スチレンモノマーなどのマージンが高水準で推移したため高水準の利益を維持し、石油開発事業も、原油高に支えられて好業績を確保できました。非石油事業の業績は、昭和シェル石油の太陽電事業の収益が再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)導入による需要の押し上げと為替の円安によって大幅に改善し、コスモ石油の風力発電事業の業績もFIT導入による買取価格引き上げの効果で拡大しましたが、出光興産の石炭事業は石炭価格の低下により悪化するなど、元売間でばらつきが見られました。

 精製・元売の石油事業の業績は14年に回復すると予想されます。前述したように14年3月末にかけての石油精製設備の能力削減によって需給が引き締まりやすくなると見込まれることがその理由の一つです。過去に精製能力の削減などによって需給が引き締まりやすくなった局面では、卸売・小売の両段階でマージンが拡大していたからです。

 ただし、ガソリンや灯油の需要が伸び悩む中で、きびしい販売競争が続くと予想されること、シェール革命の影響などでガソリン・ナフサ留分の国際市況が低迷し続ける可能性があることなどから、収益環境が十分に改善しない可能性もあります。

 収益環境の改善度合い、好環境が維持される期間は、精製・元売全社が、需要に見合った生産・供給に努めるとともに、製品輸出、石化製品への生産シフトなどに取り組み続けるかどうか、そして、業転市場への製品供給が絞り込まれるかどうか、元売各社が小売市況の改善に積極的に取り組み化などによって左右されると考えられます。


石油販売事業者の収益はカーケアサービス事業の成否によって左右される状況が続く

 石油販売事業者の経営環境は厳しい状態が続いています。ガソリン・灯油需要の減少、ガソリンマージンの低下、カーケアなど油外収益の減少などが続いているからです。

 元売が、系列販売業者の経営を支援したり、販売を促進したりするため、個別に対応するケースがみられますが、差別的な対応では販売業界全体の収益環境を改善することはできません。むしろ、事業者間の競争をゆがめてしまい、石油販売業界の健全性や合理性を損なってしまう可能性があると思われます。

 14年に石油販売事業の収益環境が改善するかどうかは、元売各社の対応次第と考えられます。需要に見合った生産・供給に努めて割安な製品の供給を絞り込めるかどうか、元売が販売子会社を通じて小売市況の改善に積極的に取り組むかどうかなどがポイントになると考えられます。

 そして、カーケア事業などへの取り組みとその成果によって、販売事業者およびSS間の収益力の格差がさらに拡大するようになると予想されます。


中東産原油の14年の中心価格レンジは1バレル90~120ドルと予想

 中東産原油の価格は年間を通じて1バレル100ドル台から110ドル台前半で安定的に推移しました。世界的な景気の停滞やシェールオイル・ガス、オイルサンドなど非在来型エネルギー資源の供給増などが影響して、原油の需給はやや緩んでいましたが、新興国・発展途上国の需要増、中東やアフリカの産油国の政情悪化や地政学リスクの高まり、過剰流動性(金余り)などが油価の支えたためと考えられます。

 原油価格は、14年も12~13年とほぼ同じ90~110ドル台を中心としたレンジで推移すると予想されます。非在来型エネルギー資源の供給量の拡大が原油価格を押し下げる可能性がありますが、過剰流動性や産油国における地政学リスクが価格を支え続けると予想されるからです。


収益環境改善局面で何ができるか

 石油製品の国内需要は中長期的に伸び悩み続けると予想されます。前述したように14年は精製能力の削減によって需給が引き締まって、収益環境が改善に向かう可能性がありますが、製油所をさらに集約できなければ、改善した設備利用率をこのまま維持することはできません。

 アジア各国で石油精製設備の新増設が計画されていますので、製品輸出の拡大や石油化学製品への生産シフトによって収益を改善できる余地は限られていますが、国内需要の減少に見合ったペースで国内供給能力を削減して、国内需給を引き締めやすい環境を維持することができるかどうか、そして、元売各社が主導して合理化な経営を行っている販売事業者が健全に経営できる水準まで小売市況を立て直すことができるかどうかが、石油業界を健全化できるかどうかのポイントになると考えられます。

 石油販売業界では、販売事業者やSS数の減少が続く見通しです。これに伴って、流動化される顧客の中で、油外サービスを利用していただける優良顧客をいかに確保できるか、コスト構造を適正化できるか、リペア、軽塗装、自動車の買取・販売、レンタカー・カーリースなど近年急成長している新しい油外事業などに取り組んで収益を拡大したりして、経営体質をいかに改善できるかどうかによって、会社およびSSの収益力の格差がさらに拡大すると予想されます。

 カーケアサービスなど油外事業で高い収益を上げている販売事業者やSSのほとんどがこれらの事業に積極的に取り組んでいる意識の高い経営者やマネージャーによって率いられています。これらマネジメント層がリードをして、優秀な人材である「人財」を確保したり育てたりし、スタッフのモチベーションを高めることができるかどうかによって、石油販売事業者やSSの収益が左右される状況が続くと考えられます。

 収益環境が改善する可能性の高い14年に、先に向かって何をできるかが、石油業界、精製・元売、および、販売事業者の将来を左右することになると私は予想しています。



北海道のガソリン価格予想
3月30日(月)から4月5日(日)まで
変わらず
緊急的激変緩和補助金で価格維持か

03月30日付ヘッドライン

■灯油商戦「まあまあ」で推移 最終盤で異常事態に直面
■系列外にも製品供給を エネ庁が元売などに要請
■自主廃業、倒産が増加 中央会が昨年の実態を調査
■石油業界の収益環境は2~3年内に悪化の可能性 戦略特集
■好調洗車に加えタイヤにも注力 キタセキ札幌新川SS