
景気回復続くも先行きは不透明
第二次安倍政権が推進するアベノミクスによる効果で、景気は12年の第4四半期以降、回復基調を維持しています。
アベノミクスの第一の矢「大胆な金融政策」と第二の矢「機動的な財政政策」によって、円高の是正、株価の上昇、低利資金の潤沢な供給、公共投資の拡大などが図られた結果、①輸出比率が高い、海外事業の収益構成比が高い、あるいは、輸入品と競合する産業・企業における業績の改善、②輸出あるいは輸入品に対する競争力が回復した工場の稼働増、③土木・建設工事の増加、④業績が改善した企業における賞与・給与の引き上げ、④株価の上昇による保有資産価値の増加および資本市場の機能回復、⑤対外保有資産の邦貨価値の拡大、⑥消費の拡大、⑦設備投資の拡大などが起きているからです。
しかし、第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」は、まだその効果を十分に発揮できていません。その理由の一つはエネルギー事情の混迷にあります。電力の供給安定性が確保できておらず、エネルギーコストが今後さらに増加しかねない状況にあるため、国内で生産設備の稼働率の上昇が抑制されていたり、生産設備を新増設する企業が限られたりしているからです。
ちなみに、発電分野における原子力利用率が低下(現在、全機停止中)し、火力依存度が高まった(同90%以上)影響で、11年以降、LNG、石油、石炭など火力発電燃料の輸入が大幅に増加しています。13年の貿易収支は史上最大の11兆4千8百億円の赤字となりましたが、鉱物性燃料の輸入超過額は10年比で10兆円増の25兆9千億円となり、貿易赤字の主因になっています。
日本経済に悪影響を及ぼしている原子力事情
昨年8月以降、すべての原子力発電所が停止し、再稼働のめどが立たない状態が続いています。原子力発電所が利用できなければ、火力依存度を引き下げることは難しく、貿易収支の改善はおぼつかない見通しです。
原子力発電所が動いていない中で極端な節電が求められなくなったことから、「原子力は不要」と指摘される方がいますが、この判断には多くの問題が含まれています。エネルギー産業が求められている公益的課題の「供給安定性(エネルギー安全保障)」、「経済性(コストの低減)」、「環境性(温室効果ガスの排出抑制)」、「安全性」のうち、供給安定性、経済性、環境性が崩れてしまっているからです。
電力各社の火力発電設備は、東日本大震災以降、設計基準を大幅に上回る高付加状態で運転を続けているため故障の発生率が著しく高くなっています。もし、このまま電力需要が増加する夏季を迎えると大規模な停電が起きる可能性が高くなってしまいます。
一方、東日本大震災以降に、電力6社が電気料金を引き上げ、1社が値上げを申請していますが、電力各社の現在の料金は原子力発電所の一部が再稼働する前提で算定されている上に、人件費や設備の維持・補修費などが維持できない条件に設定されていますので、原子力を利用できない状態が続くと、さらなる値上げが避けられません。
また、火力依存が高まったことで二酸化炭素の排出用が大幅に増加しています。
発電コストを比較すると、休止中の原子力発電所を再稼働されるのが最も低く、次いで石炭火力発電の導入及び利用の拡大が続きます。原子力および石炭の利活用策が固まらなければ天然ガス、石油、LPガスをどの程度利用する必要があるかが判断できないのです。石油産業の今後を占ううえでも、一日でも早く原子力政策を確定させる必要があると思われます。
国民に広がるエネルギー事情に関する誤解
一昨年の7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が導入されたことをきっかけに太陽光発電の設置が急増し、風力発電の導入計画も増えています。しかし、太陽光と風力は設備利用率が低く、需要に合わせた発電ができず、コストが高いといった問題を抱えています。火力燃料の消費を多少抑制できますが、原子力発電の代替にはなりませんし、FITによる負担額が、買取期間中(太陽光は10キロワット以上が20年、10キロワット未満が10年、風力は20年)、電気料金に加算され続けることにも留意しなくてはいけません。おそらく、平均的な世帯のFITによる年間負担額は数年内に5千円程度まで増加すると見込まれます。
政策による誘導もあり、わが国では一次エネルギー供給に占める天然ガス依存度が高まっています。その天然ガスに関して、北米で起きたシェール革命や、日本近海に大量に賦存していることが確認されているメタンハイドレートの利用などによって、調達コストが今後大きく低下すると誤解されている国民が多いことも気がかりです。これらは実情とかけ離れた推論にすぎないからです。
資源小国である日本のエネルギー政策の選択肢は、石油、天然ガス、LPガス、石炭、原子力、再生可能エネルギーなどを大きな偏りなく組み合わせて利用していくことしかないのではないでしょうか。