
変化し続けるカーケアサービス事業でSS間競争をどう勝ち抜くか
石油製品の小売マージンは、2010年頃から量販型のセルフSSですら十分な採算が確保できない1リットル当たり5円前後の水準までたびたび下落するようになっています。ある意味、廉売店ですら利益を確保できないマージンは、ほぼ限界といえる水準と考えられますので、今後さらに縮小することはないと予想されます。かといって大半のSSが石油製品の利益だけで経営が成り立つような水準までマージンが拡大し定着するとは思えません。
一方、カーケアサービス事業全体の市場規模は、乗用車の保有台数が当面減少するとは思えませんので、現状から大きく縮小することはないと予想されます。ただし、①カーディーラー、カー用品専門店、タイヤショップなどとの競合、②SSにおいて整備・点検・車検などの収益を上げにくいハイブリッドカーや電気自動車などの普及、③カーケアサービスを提供しないか、限定的にしか提供しないSSの増加などが影響し、SS業界が上げられるカーケアサービス事業の収益は徐々に縮小していく見通しです。そして、経営者、マネージャー、スタッフの取り組み姿勢や資質によって、SSおよび販売事業者間でカーケア収益の差は拡大し、これが、SS業界の競争において勝ち抜けるかどうかを左右することになると予想されます。
カーケアサービス事業の内容は変化し続けています。例えば、洗車、モーターオイル・エレメンツの交換、タイヤ・ホイール、バッテリー、アクセサリーパーツなどの販売、点検・整備など、SSにおいて従来から行われていたカーケアサービス事業の競争環境は、カーディーラー、カー用品専門店、タイヤメーカーなどとの競合によって年々厳しくなっていますが、収益を着実に拡大しているSS、販売店が多数見られます。
さらに、ボディやウィンドウのコーティング加工、リペアなどの軽鈑金・塗装、車内やエアコンなどの高度洗浄など、より付加価値の高いサービス事業の収益を拡大しているSSも少なからず見受けられます。
新しいビジネスへの取り組みの鉄則は先手必勝、成否を早く見きまわること
近年、SSで事業展開が始まり、急成長しつつある新しい車関連ビジネスもあります。低価格レンタカー、中古車の買取、車の販売などです。
低価格レンタカー事業は、既存のレンタカー事業者にコインパーキング事業者など新規事業者を交えて競争が激化してきましたので、そろそろ事業の成否が明らかになりつつあるように思われます。
中古車の買取、および、車の販売事業は、中古車の流通システムの変革と相まって近年急成長しつつあり、まだしばらくの間は拡大が続くと期待されます。持ち込まれた車の査定、中古車の仕入れ・メンテナンス・販売などに関わるノウハウの習得が必要になりますが、付加価値の大きいビジネスだけに、初期投資や売買ロスなどのリスクを考慮しても、経営資源に余裕があれば、参入を検討する価値があると思われます。
そして、車を販売したお客様に車検・整備、カーケアなどのサービスを継続して提供することでカーディーラーに類似したビジネスモデルを確立することに成功したSSも出てきています。カーディーラー型SSともいえるこの新しいSSのビジネスモデルは石油販売業界における勝ち抜け業態の一つになる可能性が十分あると思われます。
これからもSSにおける新しいサービス事業が開発されることが想定されますが、ビジネスの鉄則は先手必勝です。いち早く取り組んで成否を見極めること、成果があがるようなら思い切って経営資源を投入すること、深追いは避けることなどが肝要です。