
元売各社が仕切価格体系を改定
4月にコスモ石油、5月に昭和シェル石油、6月にはJX日鉱日石エネルギーと出光興産が、相次いで仕切価格の通知・改定日、基準・指標価格、価格体系などを改定したもようです。
具体的な内容は公表されていませんが、特約店から各社の情報を収集したところ、主に以下のような変更がなされたもようです。
コスモ石油は、仕切価格の通知および改定日を、従来の金曜日通知・土曜日改訂から、月曜日通知・火曜日改定に変更するとともに、仕切価格を算定する際の基準価格を、原油価格や国内外の製品市況、需給動向、他社動向などを総合的に検討して決定する独自指標としたもようです。
昭和シェル石油は、通知・改定日を金曜日通知・土曜日改訂から火曜日通知・水曜日改定に変更し、仕切価格を決定する際の基準価格を、これまでの国内製品指標のみから、国内製品指標を一部変更するとともに原油価格動向を要素に織り込むように見直したもようです。
JX日鉱日石エネルギーは、通知・改定日を、金曜日通知・土曜日改訂から、水曜日通知・木曜日改定に変更し、指標価格の全国への一本化、指標価格の算定方式の国内製品市況中心から原油調達コストの変動を反映する方式へ変更し、上限・下限価格が廃止されたもようです。
出光興産は、通知・改定日を金曜日通知・土曜日改訂から、水曜日通知・木曜日改定に変更し、国内製品市況の指標を市況情報会社の価格情報から独自指標に見直したもようです。
仕切価格体系の改定で元売の収益性改善へ
通知・改定日の週末直前から週中への変更は、実情を考慮した妥当な判断と思われます。しかし、基準・指標価格を民間の市況情報会社の公表値から独自指標に変更すること、一部の元売が特約店規模格差を導入したことなどは、昨年、公正取引委員会がガソリン流通を是正するために示した見解に必ずしも沿っていないように思われます。
複数の元売が、基準・指標価格に独自指標を採用する理由として、これまで採用していた市況情報会社の業転価格は、価格決定過程の透明性・合理性に疑義があり、需給動向を反映した適正な指標とは言えず、これにより元売および販売業者のマージンが棄損される状況が続いたと説明しています。ところが、市況情報会社から提供されていた業転価格に準じた価格で製品が流通していたのは事実ですから、独自指標を採用することで価格の透明性が高まるとは言えませんし、小売市況が是正されるとも思えません。そもそも、市況は需給だけによって左右されるわけではありませんので、業界全体の在庫水準が高くなかったとしても、安値で供給する事業者がいる限り市況を是正することはできません。なお、国内で流通している石油製品の大半は元売が供給していますので、市況が低迷していた主な理由は一部の元売の経営姿勢に問題があったからと考えられなくもありません。
今回の仕切価格体系の改定によって、卸売マージン、小売マージンがそれぞれどのように変化するかはまだわかりません。ただし、昨秋から低迷していたガソリンのスポット(業転)市況が、精製能力の削減を背景にした需給の引き締まり、市中買いなどの効果もあって、今年3月以降に急上昇し、卸売マージンが改善していたこと、複数の元売が新しい価格体系に原油コストの要素を組み込んだことなどを考慮すると、元売の採算は改善し、収益の安定性も高まると予想されます。
今後の課題は小売マージンの是正
よって今後の課題は、小売段階での廉売を抑止し、小売マージンを是正することあり、それが実現できるかどうかは、元売の営業施策によって左右されることになると考えられます。