今年の冬は灯油価格の高騰が話題に上る可能性が…
2015.12.7
期間によって異なるガソリン価格の上昇理由

 今年は春から夏にかけてガソリンの小売価格の高騰が話題になりましたが、今後、需要期を間近に控えた灯油についても話題になる可能性があります。

 レギュラーガソリンのSS店頭小売価格(消費税込、一般社団法人エネルギー経済研究所石油情報センター調べ)の全国平均は、消費税率が5%から8%へ引き上げられた4月1日に前週比5・2円高の1㍑当たり164・2円に上昇した後、徐々に値を切り上げ、7月中旬に㍑169・9円に達しました。その後、値下がりに転じましたが、9月上旬現在の価格は㍑約168円で、依然、前年同期の水準を㍑8円程度上回っています。㍑160円台後半まで上昇したのは、原油価格が1バレル150ドル近くまで高騰した08年8月以来のことでした。ちなみに、当時の高値は㍑約185円でした。


 いつを起点にするかによって、ガソリン価格の変動幅とその理由は異なります。2年前の12年7月の安値㍑139・9円から30円上昇した理由は、原油価格が1バレル約20ドル上昇した影響約12円、為替が1ドル約22円円安になった影響約14円、消費税率の引き上げ5・9円、石油石炭税の引き上げ㍑0・5円など、原油コストの上昇と増税の影響によってほぼ説明することができます。

 ちなみに、ガソリンには揮発油税が㍑53・8円(沖縄県は㍑7円軽減された㍑46・8円)加算されていますが、揮発油税にも消費税が課税(二重課税)されています。今年4月の消費増税の影響は二重課税分だけで㍑1・6円になります。このため、軽油引取税には課税されない軽油や製品税が課せられていない灯油に比べてガソリンの価格には消費税率引き上げの影響がより大きく出たのです。


年初からの上昇要因は精製・卸売マージンの拡大

 一方、今年1月初旬の安値㍑158・3円と7月中旬の高値とを比較すると㍑11・6円上昇していますが、7月の原油コストは1月に比べて低下(輸入CIF価格は㍑74・6円から㍑71・4円に低下)していますので、この間の上昇理由は、原油コストの変化によるものではありません。消費増税による影響が㍑5・1円ありますが、最も大きな理由はガソリンの利ザヤ(マージン)の拡大だったのです。1月時点では、国内の需給ギャップ(石油製品の生産能力と国内需要との差)が大きかったことなどから、ガソリンをはじめとする石油製品が安値で取引されていましたが、その後、石油精製能力が削減されて需給ギャップが縮小したこと、複数の石油元売が卸売価格の決定方式を見直したことなどによって卸売価格が大幅に上昇したからです。なお、利ザヤは精製・卸売マージンと小売マージンに分けることができます。1月時点と7月時点を比較すると精製・卸売マージンは拡大していますが、小売マージンは拡大していません。このため、石油精製・元売各社は利益を稼げるようになったと推察されますが、販売業者の多くは、低マージンと販売数量の落ち込みによって厳しい経営を強いられていると考えられます。現状は、精・販の利益配分にゆがみが生じすぎているように思われます。


お客様に正しい情報を伝えて石油暖房・給湯機器の減販を防ぐ必要がある

 需給ギャップが縮小した影響で、他の石油製品の需給も引き締まりやすくなっています。間もなく灯油の需要期を迎えますが、灯油の8月の利ザヤを昨年と比較すると㍑5円程度拡大しています。石油連盟が公表している原油・石油製品供給統計週報(石連週報)によると灯油の8月末の在庫は前年同期に比べて2割以上少なく、需給は引き締まっていると考えられます。もちろん、冬場の天候によって灯油の需要は大きく変化し、価格も影響されます。原油価格や為替によっても灯油の価格は左右されますが、今年の冬は灯油価格の高騰が話題になる可能性があると思われます。

 原油価格が急騰し灯油価格も高騰した07年~08年の暖房シーズンには、石油暖房・給湯機器の販売台数が大きく落ち込み、その後の灯油需要の伸び悩みにつながりました。灯油暖房・給湯機器は、ガス機器に対してコストで引けを取ることはありません。前回の高騰期と同様の状況に陥らないようにするため、石油業界は、業界を挙げて、お客様に石油に関わる正確な情報をお届けすることが重要と思われます。


北海道のガソリン価格予想
7月28日(月)から8月3日(日)まで
価格上昇
上昇のあと、徐々に下げ方向で

08月05日付掲載予定

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