アメリカがLNGに続いて原油の輸出も解禁
2015.12.7
シェール革命で世界最大のエネルギー資源生産国になったアメリカ

 アメリカで、シェール資源開発の拡大によって、原油及び天然ガスの生産量が急増しています。天然ガス生産量は05年から13年にかけて35%増加し09年にロシアを抜いて世界最大の天然ガス生産国になっています。原油の生産量も08年から13年にかけて49%増加しました。13年の原油生産量は日量約1000万バレルで、サウジアラビアの日量約1150万バレル、ロシアの日量約1080万バレルに次ぐ世界第3位でしたが、増産余力が十分ありますので、サウジアラビアが大幅に増産しなければ、原油において数年内に世界最大の生産国になる可能性があります。アメリカは世界最大のエネルギー資源生産国になっているのです。


 国内生産が拡大したことで、天然ガスと原油の輸入依存度は急速に低下しています。天然ガスは、06年に16%だった純輸入依存度(供給量全体に占める純輸入量の比率)が約4%まで減少し、原油も08年に66%だった輸入依存度が今年1月~5月累計で46%まで低下しています。


アメリカはエネルギー資源輸出国に

 アメリカは、上述したような需給構造の変化を考慮し、これまで原則的に禁止していた天然ガスや原油の輸出を部分的に解禁し始めました。LNGについては、先に自由貿易協定(FTA)を結んでいる一部の国向けに解禁し、今年5月にはFTAを締結していない日本向けの輸出を計画しているフリーポート社の輸出も承認しました。原油についても、今年、一部の石油会社に輸出が許可されました。アメリカは、1975年にエネルギー政策・保存法(EPCA)を制定し、それ以降、カナダの国内消費向けなど一部除いて未精製の原油を輸出することを禁止していましたので、原油を輸出するのは実に約40年ぶりのことです。

 原油や天然ガスの国内取引価格の上昇を懸念する石油業界や化学業界、シェール資源の開発による環境への悪影響を懸念する環境団体などは、原油や天然ガスの輸出の全面解禁に反対しています。このため、原油や天然ガスの輸出が全面解禁される可能性は低いと思われますが、輸出規制の緩和とシェール資源開発の拡大によって、アメリカからのエネルギー資源の輸出量は今後急速に拡大していくと見込まれます。

 
輸出の拡大によってアメリカの国内価格が国際市況にさや寄せされる

 LNGや原油の輸出を解禁された背景は、国内のエネルギー消費量が伸び悩む中で、シェール資源の開発によって前述したように天然ガスや原油の生産量が急増し供給過多状態に陥ったからです。

 これにより、天然ガスの国内価格が他地域や他のエネルギー資源の価格に比べて著しく低下していました。12年のアメリカの取引価格は、天然ガスの大半がLNGで調達されている日本、韓国、台湾など東アジア地域に比べる5分の1から6分の1、ヨーロッパと比べても約3分の1という著しく割安な価格で取引されるようになりました。熱量単価もアメリカ国内における原油の取引価格の20%程度まで低下し、石炭より割安になりました。この結果、火力発電用燃料がコスト面での理由から石炭から天然ガスにシフトするといった動きも見られました。

 原油においても、商品先物取引市場において、08年から09年にかけての原油価格急落局面でNY商品取引所(NYMEX)の軽質低硫黄原油(WTI原油)の価格がインターコンチネンタル取引所(ICE)のブレント原油、ドバイ商品取引所(DME)のオマーン原油などに比べて割安になり、11年にその差が著しく拡大しました。その理由の一つは、生産量の増加や物流ネックからアメリカ国内で超軽質原油が供給過多に陥ったからです。

 この結果、アメリカでは、現在、供給過多状態になっている原油、天然ガス、LPGなどを輸出によってさばけるようになるため、国内需給は引き締まり、国際市況に比べて割安になっている国内取引価格が相対的に上昇し、国際市況にさや寄せされると予想されます。なお、アメリカからの輸出量の拡大が国際市況を押し下げる原因の一つになる可能性があり、日本の調達コストにも影響を与える可能性がありますが、コストや構成比を考慮すると、一部で指摘されているような「LNG及びLPG価格の大幅な下落」が起きるとは思えません。過度な期待を抱かないようにするべきでしょう。


北海道のガソリン価格予想
7月28日(月)から8月3日(日)まで
価格上昇
上昇のあと、徐々に下げ方向で

08月05日付掲載予定

■令和6年度末道内SS数1641カ所に 29年連続、前年比27カ所減
■「随契に特段の配慮を」官公需で帯広石協が十勝振興局に要望
■「最賃の引き上げ必要」道最賃審専門部会が参考人の意見聴取
■災害時対応実地訓練始まる 給油再開への手順確認 上士幌で
■盛況のうちに夏祭り サクライオイルショップ清田SS