
民意を正確に反映しないことがある世論調査
世論調査は、調査の対象や方法によって結果に大きな違いが見られることがあります。例えば、調査対象の性別、年齢、地域などのバランスが取られた対象から無作為に抽出されていれば、少数でも正確な結果が得られますが、対象に偏りがあれば結果がずれてしまうおそれがあります。
調査方法によっても結果が異なってくることがあります。面談であれば調査対象を正確に把握できますので、回答が得られなかった対象の影響を修正できますが、電話や郵便では非回答者のずれを修正することが難しくなります。インターネットによる調査は回答者が偏りやすく実態と全く異なる結果となる可能性があります。
これらは選挙の際に実施された調査の結果と実際の結果にかい離が生じたことなどから実証されています。
質問の内容によって回答者の答えが影響を受けることもあります。また、同じ質問でも、単に質問するだけと、実情や影響などを正確に説明した場合、あるいは、意図的に偏った情報を提供した場合とでは結果が大きく異なってきます。
一方、公聴会は、参加希望者を公募すると参加者に偏りが生じてしまい、サイレントマジョリティを含めた世論全体の意思と異なった論調に陥ってしまうおそれがあります。有識者による審議会や研究会もどのような委員が選ばれるかによって、議論の方向性は大きく異なってきます。
残念ながら、マスメディアが実施している世論調査や独自調査に基づく報道の一部には公平性を欠くと思われるものが含まれており、政策の審議や審査にも歪みが生じることがあるのです。
政策や公共性のある決定を行う際には、世論や有識者の意見に配慮しなければいけませんが、世論が歪んでいるおそれがある場合には正確な情報を提供して速やかに正していく必要があり、選定、調査、検討などの方法にも配慮しなくてはいけないのです。
問題がある電気料金審査の現状
北海道電力が料金の再値上げを申請し、現在、総合資源エネルギー調査会総合部会電気料金審査専門委員会でその審査が行われています。審査会合は公開されており、議事録も公表されていますが、それらをみる限り、審査の目的は、申請された料金をいかに引き下げるかにおかれているように思われます。規制分野の電気及びガス料金を算定する際に用いられている総括原価方式は、原価に応じた料金を設定する方式で、事業者間の競争を促す仕組みも導入されていますが、このような原理原則を無視した意見も散見されます。
北海道電力は、2011年度以降、3年連続で巨額の赤字決算を計上し続けており、財務内容も著しく悪化しています。仮に、料金が改定されず、発電・燃料構成が変わらず、燃料価格と為替レートが現在の水準で推移し続けると、今年度中に債務超過状態に陥る可能性があります。同社が経営に失敗したわけではありません。経営努力が不足しているわけでもありません。業績が悪化した主因は、政治判断と行政施策によって原子力発電所の利用率が低下し、火力発電用の燃料費が著しく増加しているからです。同社は、コストの削減・効率化に取り組むとともに、地域経済や住民の暮らしに配慮するため、収支の悪化を半ば無視して、停電を避けるための努力を続け、料金の値上げ時期を遅らせ、料金の改定幅の圧縮に努めています。コストに関しては、賞与の不支給、基本給の削減などを行い、設備投資額、修繕費用、販売費及び一般管理費などは恒常的に維持することができない水準まで圧縮しています。
経営難は、北海道電力に限らず、大半の電力会社、その関連会社、取引先に及んでいます。電力関連産業からは、業務量の減少と単価の圧縮によって事業を維持することが難しくなっているとの声が聞こえてきています。電力関連産業は衰退してもよい産業なのでしょうか。
世論は誤解すると正しにくい
私は、8月に北海道内でエネルギー事情に関する講演をさせていただいた際、北海道電力が料金の再値上げを行った直後でしたので、電力事情についてやや詳しく説明させていただきました。出席者からは、電気料金の値上げに批判的な反応はなく、むしろ、なぜこれまで原価と異なる料金が設定されていたのか、正しい情報が十分に提供されていないのかなどを疑問視する質問や意見が寄せられました。当時、現地のマスメディアの多くは、同社の電気料金の再値上げを批判する報道を繰り返していましたが、それらの報道では背景事情がほとんど説明されていなかったようです。
唐突に「電気料金の値上げが申請されましたがどう思いますか?」と質問されたら、どのような回答が多くなるでしょうか?対して背景事情が説明されていたらどうでしょうか?結果は当然変わってくるはずです。
石油業界にとっても他人事ではなくなる可能性があります。9月29日の北海道の灯油の配達価格は18リットル当たり1942円(石油情報センター調べ)で、昨年の同時期の1832円と比べると110円、1リットルあたりでは約6円上昇しています。需要期を控えたこれからの時期に電気料金と同じような世論調査が行われると、灯油の売れ行きや価格に悪い影響が及ぶ可能性があります。灯油の価格が上昇した理由は、為替が円安になったことと、精製能力の削減によって需給が引き締まりやすくなったため卸売マージンが拡大したことです。石油販売業界はその恩恵にあずかっていません。需要家に実情を理解してもらえるように、情報の提供に努めることが肝要と思われます。