
中東産原油の15年の中心価格レンジは1バレル70~90ドルと予想
中東産原油の価格は11年の年初から14年半ばにかけて1バレル100ドル台から110ドル台前半を中心にした価格レンジで比較的安定的に推移していましたが、8月に下落に転じ、その後、価格水準を一気に切り下げました。
下落に転じる以前から原油の需給は引き締まっていませんでした。シェールオイル(タイトオイル)・シェールガスなど非在来型資源の開発によって原油・天然ガスが増産されたアメリカの輸入量が減少したのがその主因でした。コスト的にみても100ドルを上回る価格には割高感がありました。しかし、アラブの春を契機に中東、北アフリカの産油諸国などで政情悪化が広がったり、ロシア産の原油・天然ガスをヨーロッパに輸送するパイプラインの主要ルートにあたるウクライナの政情悪化、イスラム国問題の深刻化など、次々と地政学リスクが顕在化したこと、主要各国の金融緩和政策などによる過剰流動性(金余り)が下支えしていたことなどによって、原油価格は高止まりしていたと考えられます。
ところが、北米におけるシェールオイルの増産が続く中で、中国、欧州、日本などにおいて景気が低迷して需要が減退したことなどによって原油の需給が緩んだ上に、原油価格を押し上げた地政学リスクの多くが実需給には大きな影響を及ぼさないことが確認されたこと、米国が金融緩和政策を修正(出口戦略)したことなどから、価格水準の訂正が始まったと考えられます。価格チャートを分析すると、8月から9月にかけて09年後半以降に形成されていた下値抵抗線を割り込みましたので、当面、原油価格が100ドルを上回る可能性は低いと考えられます。
近年開発が拡大している北米のシェールオイルの油田の損益分岐点は、原油価格と石油リグ(石油掘削設備)の稼働基数との相関関係から60~80ドル程度と推察されますので、探鉱・開発・掘削投資が減退して供給の減少につながるこの水準を下回り続けるとは考えにくいのですが、需給が引き締まり始めるまで原油価格は下値を模索する展開が続くと予想されます。過去の経験則からみて、原油価格と北米の石油リグの稼働基数との間には3カ月から半年程度のタイムラグが見られますので、原油価格が80ドルを下回る状況が続くと、新年2月から3月頃に北米の石油リグの稼働基数が減少し始め、原油・天然ガスの生産量に影響が出るようになると予想されます。
私は、15年の中東産原油の価格は、14年末から年初にかけて下値を模索した後に上昇に転じて、春あるいは年央以降は、前年に比べて20~30ドル低い70~90ドルの価格レンジを中心に推移するようになると予想しています。
エネルギー政策の本質的な議論の開始にはまだ時間を要する
エネルギー基本計画が14年4月に改訂されました。10年7月以来の三度目の改定となった第四次計画の中で、石油とLPガスは、東日本大震災によって大規模災害時における供給信頼性の高さが再認識されたことなどを反映して『災害時には、エネルギー供給の「最後の砦」になるため、供給網の一層の強靱化を推進する』と示されました。しかしながら、現時点において、石油製品及びLPガスをより一層活用するための具体的な施策は打ち出されていません。
一方、都市ガスは、近年起きた阪神淡路、新潟中越、中越沖、東日本のいずれの大規模地震の際においてもエネルギーの中で復旧に最も長い期間を要したにも関わらず、石油から天然ガスへの燃料転換を促す制度は維持され、ガス・コージェネレーションシステムなどガス利用機器の導入及び利用が推進され続けています。これにより都市ガスのシェアは拡大し続けると予想されます。
電力は、震災直後から議論されてきたシステム改革が15年春からいよいよ実施に移されます。ただし、電力の供給力不足や、供給安定性、経済合理性、環境性などの低下といった喫緊の課題を解決できるめどは立っていません。
原子力については、新しいエネルギー基本計画で、安全が確認された設備を活用する方針が示されましたが、13年7月までに改定された原子力施設に関する規制基準を満たすか、満たす目途が立った発電所で再稼働の是非を判断する審査が行われていますが、いつ、どの程度利用できるようになるかを見通せる状況にはありません。
経済性や供給安定性が優れている石炭火力は、これまで制約されていた新設が認められるようになりましたが、新増設に大きな影響を及ぼす環境アセスメントの運用がどのように見直されるかがまだ定まっていませんので、原子力の不足分をどの程度置き換えることができるようになるかは、まだ見通せません。
また、12年度に施行された固定価格買取制度などによって導入が推進されている再生可能エネルギーは、太陽光発電において、送電線の容量不足、需給調整の難しさ、コスト負担の重さなどの問題が露呈し、大量に導入することが難しいことが分かりましたが、政策的にどの程度導入を進めることができるのかはまだ判断できません。
このような状況から、エネルギー基本計画は改訂されたものの、需給などエネルギー政策の本質的な議論を始めることができていません。
ただし、エネルギー政策がどのように見直されたとしても、石油製品の導入及び利用が促進されるようになるとは思えませんので、石油業界の経営環境が改善するような内容になることはないと考えられます。
石油精製業における高度化法の新基準の効果は不透明
石油業界に関わる法・規制では、「エネルギー供給構造高度化法(以下、高度化法)」の石油精製設備に関わる新たな判断基準が示されました。新基準は、高度化法が施行された10年に定められた旧基準が14年3月末に期限を迎えたため、石油業界の過剰精製能力の解消、収益改善などを目的に内容を見直して策定されたもので、石油各社に、常圧蒸留装置の能力削減あるいは「残油処理装置」の装備率(常圧蒸留装置の能力に対する残油処理装置の能力の比率)の引き上げを求める内容となりました。数値目標は、14年3月末時点で45%程度の石油精製業全体の残油処理装置の装備率を17年3月末に50%程度まで向上させることを目指すとされました。各社がすべて常圧蒸留装置の能力削減で対応した場合、日本全体としては現在の約395万BDの精製能力が約40万BDに削減されることになります。
高度化法の旧基準は、JX日鉱日石エネルギー、出光興産、昭和シェル石油の3社が、制度施行前に独自に策定・公表していた石油精製設備の集約計画を基に策定されましたので、少なくともこの3社にとって合理性は確保されていたと考えられます。しかし、新基準に関しては、14年12月時点において、まだ、どの会社からも計画が公表されていません。このため今後どのように業界の再編や精製設備の集約が行われるかは分かりませんが、15年内に新たな再編・集約につながる動きが起きる可能性はあると思われます。
石油製品の国内需要は70年代以前の水準まで低下する見通し
燃料油の国内需要は、航空便の運行数の増加によって需要が拡大しているジェット燃料油を除いて減少傾向で推移しています。特にガソリン需要の落ち込みが大きくなっています。軽自動車・小型車・ハイブリッドカーなどの普及によって自動車の平均燃費が改善している上に、消費増税や円安などを背景にした値上がりをきっかけに買い控えが広がったことなどが影響していると推察されます。灯油は、家庭分野のエネルギーが電気や都市ガスにシフトしていること、産業用燃料は都市ガスへの燃料転換が進んでいること、発電用燃料は、原子力発電所の設備利用率の低下などによって嵩上げされていた需要が石炭火力発電設備の復旧や新設、ガス火力発電設備の新増設などによって震災以前の水準を下回るようになったことなどによって、いずれも需要が減少しています。
15年もこれまでと同じ傾向が続くと予想されます。ガソリンは、14年に価格が高騰したり天候不順に見舞われたりした時期に需要が著しく落ち込んだ反動で前年同期比では増加する局面があるかもしれませんが、減少傾向に歯止めがかかることはないと考えられます。灯油、A重油、一般C重油の需要は、民生用分野における電気・都市ガスへのシフト、産業用・業務用分野における都市ガスへの燃料転換などによって減少が続くと予想されます。発電用C重油は、石炭火力及びガス火力の新増設に加え、原子力発電の再稼働が徐々に進むと見込まれますので、需要がさらに落ち込むと予想されます。この結果、15年の石油製品の国内需要は、1億8千万キロリットル前後まで落ち込むと予想されます。これは80年代半ば、あるいは、70年以前の水準です。石油製品は、需要が一定水準を下回ると供給インフラを維持することが経済的に難しくなり、効率的に製品を供給することができなくなってしまいますが、地域的には、このような状態に陥る懸念が生じています。需要が短期間で大きく減少することがないよう、業界をあげて取り組む必要があると思われます。