14年にはSSの経営環境が改善していた 全国石油協会が、毎年行っている「石油製品販売業経営実態調査」の平成27年度(2014年度)調査版が公表されました。同調査は、対象企業が毎年変わっていますので、厳密には経年比較することに意味はありませんが、集計対象企業数が2千前後、SS数が2千数百から5千数百とデータ数が十分にありますので、経営環境の変化の傾向をつかむことはできると思われます。
同調査によると、14年度のSS店頭販売分の売上総利益(粗利益)は、1SS当たり月間平均554万9千円となり、07年度以降で最も高い金額を記録しました。主な内訳は、ガソリン803千円、灯油282千円、軽油428千円、A重油45千円、自動車用潤滑油79千円、油外646千円、その他145千円、兼業部門312万円で、灯油、軽油、カーケア部門、兼業部門などの粗利益が前年実績を上回っていました。粗利益が増加したことで、経常損益が黒字になった企業の比率が前年度の調査の65%から71%に高まっていました。経常黒字企業の比率が70%を超えたのは01年以来13年ぶりのことです。
石油製品の粗利益が増加した主な理由は、原油コストの低下局面で灯油と軽油の利ザヤが拡大していたからです。これは、石油製品の市況データや私がSS経営者にヒアリングした結果と符合します。
TBASPの販売、洗車、点検整備などのカーケア事業の粗利益が増加した主な理由は、調査結果によるとTBASPと洗車の収益が拡大したからでした。景気の回復などが好影響を及ぼして、業界全体ではそのような結果になっていた可能性はありますが、やや違和感があります。販売業者・SS間でばらつきが出ているのではないでしょうか。
SSの経営環境悪化は止まりつつある? SS店頭販売分の粗利益の推移をみると、90年代から2000年代にかけては減少傾向で推移していましたが、近年、悪化が止まっているようにみえます。90年代から2000年代にかけて経営環境が悪化した最大の理由はガソリンの利ザヤが縮小したためでしたが、各地で利ザヤの縮小に歯止めがかかる水準が確認されるようになってきました。これには、カーケア事業や兼業事業に依存しない単純安売量販型SSの損益分岐点が影響しているように思われます。
石油製品の平均販売数量が落ちていないのは、SS数の減少ペースが製品需要の減少ペースを上回っているためと考えられます。ただ、これも平均するとそうなっているだけで、販売業者・SS間で増減の方向性に違いが出ているようです。
カーケア事業では、自動車用潤滑油、点検整備の収益が減少してきていますが、これもヒアリング結果と一致します。異業種店、とりわけカーディーラーの台頭による影響を強く受けていると考えられます。点検整備に関しては、SSで整備が難しいハイブリッドカーやエンジンカバーが装備されている車が増加していることも影響していると思われます。
カーケア収益を拡大できる余地はある カーケア事業で高い収益を上げているSS経営者の方々にヒアリングさせていただくと、高収益SSの新しいモデルが誕生しつつあることが分かります。中古車の買い取り、中古車や新車の販売、カーリースなどの取り扱いが拡大した結果、カーディーラーのような業態を確立したSSです。このようなSSは、車の取扱に関わる収益が拡大するに従って顧客数が増加し、SS業界全体では減少傾向にある自動車用潤滑油や点検整備を含めたカーケア事業全般の収益を着実に拡大しています。
また、ボディコーティング、リペアなどボディケア関連事業の収益を伸ばすことに成功しているSSも少なからず見受けられます。車の駆動系や制御系、付属機器などがどのように変化したとしても、ボディ、ウィンドウ、タイヤ、ホイールなどが大きく変化することはありません。目視によって簡単に状況を把握できるこれらの部位に対するケアは将来にわたってSSの収益源であり続けると考えられます。
一方、一時急成長したSS店頭での低価格レンタカー事業は、専業者や駐車場業者との競合によって収益が落ち込むケースがみられるようになっています。
残念ながら、SSの数は減少し続けると考えざるを得ません。自動車の登録台数も減少傾向で推移する見通しですが、SSに比べると減少ペースは緩やかになると予想されます。これはSSがサービスを提供できる自動車の数が増加すること、すなわち、取り組み次第で、カーケア関連サービスの収益を拡大できる可能性が十分にあることを意味します。
SSの経営改善につながる努力と工夫の余地はまだまだあると思われますが、そのためには時流をつかむことが肝要と思われます。