JXTGグループの誕生で石油販売業界の収益は改善するか
2016.9.20
17年4月にJXTGグループ誕生へ
 JXホールディングス(以下JXHD)と東燃ゼネラル石油(以下TG)が、16年8月31日に経営統合契約等を締結しました。

 これにより、今年12月21日に開催が予定されている両社の臨時株主総会による承認、および経営統合に必要な公正取引委員会等の当局による許認可の取得を経たのち、17年4月1日に、両社のエネルギー関連事業が全面的に統合されて設立されるエネルギー事業会社「JXTGエネルギー」、石油・天然ガス開発事業会社の「JX石油開発」、金属事業会社「JX金属」を傘下に抱える統合持株会社「JXTGホールディングス」、並びにJXTGグループが誕生することが決まりました。

 先行する形で進められていた出光興産と昭和シェル石油の経営統合計画は、出光興産の発行済み株式数の3分の1余りを保有している出光創業家が反対を表明したことで、暗礁に乗り上げた形になっていますが、石油製品の国内出荷量の約半分を占めるJXTGグループが誕生することによって、石油業界の再編・集約が大きく進展し、業務提携関係の組み換えなども進み、業界構造が変貌することになると予想されます。

 JXHDとTGの合意書の中には、内部統制体制の整備・運用の強化、販売基本方針など、石油業界の収益環境改善のきっかけになり得ると思われる施策が少なからず盛り込まれています。JXTGが業界をより良い方向にリードしていくことが期待されます。

収益性の改善目標は十分に達成可能
 2010年に新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営を統合してJXグループが誕生した際、各方面からこの経営統合による効果や影響に関するご質問を頂戴しました。

 私は「両社が経営統合前に掲げていた収益改善効果のうち、コスト削減・効率化に関しては十分に達成が可能だが、販売部門の経営政策が変わらない限り、同社の系列販売業者を含め、石油販売業界の収益性が改善することはない」との見解を示させていただきました。この見通しはほぼ正しかったと思われます。

 今回も同じ見解を示させていただきます。JXHDとTGは、経営統合効果について「経営統合後5年以内に1事業年度あたり連結ベースで1000億円以上の収益改善を達成する」と説明しています。石油精製、石油製品の物流、石油化学製品などの製造・物流部門の収益性は、設備の集約、原料調達・生産得率・設備運用の最適化、管理間接部門の集約などによって確実に改善すると見込まれますし、管理間接部門のコストも集約効果や業務の効率化などによって着実に削減できると予想されます。これらによって年1000億円以上の収益性の改善は十分に図れると思われます。

 なお、実際の業績は、原油、天然ガス、銅などの国際市況、為替レート、景気動向といった外部環境の変化や、同業他社との競合などによる影響を受けますので、収益性の改善分だけ利益が増加するわけではありません。

 JXTGにとって最大の課題は、収益改善効果1000億円の中には含まれていない系列特約店を含む販売部門の合理化・効率化をどれだけ積み上げることができるかでしょう。残念なことに、石油業界において90年代以降に成立した経営統合で、どのグループにおいても、この部門の収益改善だけは達成されてこなかったという事実があるからです。

石油販売業界をより良くするための課題は仕切価格差の縮小
 石油製品の国内需要が減少し続ける中で取り組むべき対策は、まず国内市況を是正するための対策を講じることです。

 そのためには、精製設備の集約を進めて供給能力を削減したり、製品輸出を拡大したり、石化製品などに生産をシフトしたりして、需給が緩みにくい事業環境をつくっていくとともに、精製・卸売・小売の各段階で適正なマージンが確保できるよう、商慣行の是正などに業界を挙げて取り組むことが必要です。

 特に重要なことは、仕切り価格差の縮小です。これが、採算を半ば度外視した価格競争を生み出す原因になったり、競争をゆがめ、本来なら淘汰されるべきSSや事業者を存続させたり、逆に勝ち残るべきSSや事業者を追いやったりしているからです。


北海道のガソリン価格予想
5月6日(月)から5月12日(日)まで
価格上昇
実質ベースで仕切り価格が上昇

04月30日付ヘッドライン

■「採算販売」最優先に 北石連・商理事会が総会提出議案承認
■「まずは技術力磨け」 HNCが勝ち組SS応援セミナー
■基本方針への準拠求める 官公需で経産省が都道府県知事に要請
■LINEでショップカード 道エネチャレンジ西野3条SS
■油販増大へ集客策次々 東日本宇佐美セルフ山の手通宮ノ丘SS