石油業界は変わっていない? かつて石油販売業界に従事されていた方々とお話しすると、ほとんどの方が決まりごとのように評される言葉があります。「石油業界は変わりませんね」の一言です。
そして、そのように評される方は、そろって「異常な安売」、「業転」、「事後調整」、「採算販売意識の欠如」などの悪弊を断たなければ石油業界は良くならないと指摘しています。同感できるところとできないところがあります。
実は、変わっているところもあるからです。精製・元売の再編・集約は着実に進展し、精製・元売会社の数は1980年代半ばまでと比較すると半減しています。精製・元売各社が単独あるいは合併時に経営計画で掲げた収益性の改善目標は確実に達成されています。
ほぼ適切に行われている需給面への対応とコスト削減・効率化 石油製品の国内需要の減少が続くと予想される中で石油業界が取り組むべき対策は、まず過剰供給や過当競争などが起きにくい供給・販売体制をつくっていくことでしょう。
そのためには、需要の減少に合わせて、精製設備の集約を進めて供給能力を削減したり、製品輸出を拡大したり、石油化学製品などに生産をシフトしたりして、需給が緩みにくい事業環境をつくっていくこと、そして、元売各社が常に需給バランスの適正化を図っていくことが求められます。
これら需給面での対応は、ほぼ適切に行われています。製油所の数はピーク時の37カ所から22カ所に集約され、原油処理能力は日量594万バレルから日量382万バレルへ35%余り削減されています。
また、石油製品の輸出も拡大しています。例えば、軽油の輸出量は02年度~04年度には年間200万klを下回っていましたが、08年度には1300万klを超え、15年度も939万klに及びました。
2000年代前半まではほとんど輸出されていなかったガソリンも15年度には約400万kl輸出され、ジェット燃料油、A重油の輸出も大幅に増加しています。
さらに、パラキシレンなどの石油化学製品への生産シフトも着実に進んでいます。
ただし、供給能力の削減は段階的にしか行うことができませんので、需給が緩みやすくなったり、引き締まりやすくなったりして、その都度、マージンが縮小したり、拡大したりが繰り返されているのです。今後も同様の状況が繰り返されると予想されます。
課題は石油販売業界の悪弊の根絶 問題は業界関係者のほとんどが指摘している販売業における悪弊を断つことができるかどうかでしょう。
業転品は、需給調整など様々な理由で発生しますので、完全になくすことはできませんが、需給バランスさえ崩れていなければ、著しく割安な業転品が大量に流通することはありません。需給が緩めば、業転品の価格は下がって流通量も増加し、需給が引き締まれば、業転市況は上昇し流通量も減少します。
業転問題よりも重要なのは商慣行の是正です。
すべての取引先に共通な公表されたルールに基づく合理的な幅のインセンティブは、多くの業界で行われている正常な商慣行ですので、水準が適正なら問題はありません。ところが、石油業界において行われているルールに基づかない大幅な仕切価格の事後調整や巨額の経営支援等は廃絶していかなければいけません。
このような不合理な商慣行が採算を度外視した価格競争を生み出したり、販売事業者間での競争をゆがめて、本来なら経営を存続できる販売事業者を廃業に追いやったりしているからです。
変わらないこれらの悪弊を断てるかどうかによって、石油業界の将来は左右されると考えられます。