精製・元売の合併・再編の影響
2016.8.25
需要減少局面では精製・物流部門の集約が必要に
 石油製品の国内需要は減少し続けています。ガソリンは04年度にピークをつけた後、足元までに約15%減少しており、燃費の改善などによって今後も減少し続けると予想されます。ガソリンを含む燃料油全体の国内需要は95年度から15年度にかけて約26%減少しており、燃料転換や省エネなどによって今後も減少傾向で推移すると予想されます。

 国内需要が減少するのであれば、石油業界が取り組むべき対策は自ずと決まってきます。国内で流通している製品の大半を供給している精製・元売各社が、精製設備の集約を進めたり、製品輸出を拡大したり、石化製品などに生産をシフトしたりして石油製品の供給能力を削減し需給が緩みにくい事業環境をつくっていくこと、そして、精製・卸売・小売の各段階で適正なマージンが確保できるよう、需給バランスの確保、商慣行の是正などに取り組むことです。

 精製・元売各社は、80年代から精製設備の集約を進めてきました。製油所数はピーク時の37か所から22か所に集約され、原油処理能力は日量594万バレルから日量382万バレルに削減されました。

 この結果、16年8月現在では、JXを除く各社は、単独では需要に合わせて能力を適時削減していくことが難しい状況になっています。将来、解消される可能性がある業務提携では、設備を廃棄するといった判断を行いにくいという事情がありますので、需要に合わせた供給体制を構築するためには、製油所を地域単位で統合したり、精製部門を統合したり、合併したりすることが必要になると考えられます。

 物流部門についても同様で、全国に効率的に配送できる体制を維持するためには、物流部門の統合あるいは合併が避けられない状況になっていると考えられます。

 現在、交渉が最終局面を迎えているJXと東燃ゼネラル石油、出光興産と昭和シェル石油の両統合計画が実現するかどうかによって、これら4社だけでなく業界全体の今後数年間の収益環境が大きく左右されることになると考えられます。


元売が集約されても石油販売業界の収益環境が改善するとは限らない
 一方、元売の合併・再編は、販売業界の収益環境や販売事業者の経営に大きな影響を及ぼすことはないと考えられます。少なくとも90年代以降に実現した元売の合併後に、卸売、小売両段階において収益環境の改善につながる変化は見られませんでした。

 販売事業者の統合・集約についても同じことが言えます。流通構造や、事業者及びSSの数と石油販売業界の収益環境との間にも関係は認められません。元売が合併によって集約され、販売事業者数は80年代から、SS数は90年代半ばから減少し続けており、また、元売の販売子会社や出資特約店の販売シェアが拡大するなど、元売の影響力が強くなる方向に流通構造が変化しているにもかかわらず、市況の低迷につながる過当販売競争が繰り返されているからです。

 流通構造上の問題を指摘するとしたら、市況形成において大きな影響力を持っている元売が、販売子会社や一部の取引先を通じて、シェア重視の販売政策を続けていること、一部の取引において不合理な商慣行が是正されていないことなどにあると考えられます。


業転はなくすことはできないが不合理な商慣行は是正できる
 業転について、販売業界関係者の一部から、業転をなくせ、あるいは、業転をなくすことができないのなら業転品を自由に購入させろといった指摘がなされることがありますが、業転をなくすことはできません。業転は、製造・流通の各段階における需給調整局面などにおいて発生するからです。

 系列販売のルールを逸脱した業転品の自由な取り扱いを元売各社が容認するようになるとは思えません。元売各社にとって系列販売こそが利益の源泉になっているからです。

 事後調整については、すべての取引先に共通なあらかじめ公表されたルールに基づくインセンティブやバックマージンなどには大きな問題があるとは思えません。問題なのは、あらかじめ設定されたルールに基づかない恣意性があり、かつ、大きな価格差を生んでいる過度な価格調整や経営支援です。このような不合理な対応は、採算を半ば度外視した価格競争を生み出す原因の一つになっているからです。

 要は、すべての元売が、精製、卸売、販売の各段階において、合理的な経営を実践すれば、石油業界の収益環境は改善すると考えられます。



北海道のガソリン価格予想
4月22日(月)から4月28日(日)まで
変わらず
仕切りにより、値上げも

04月25日付掲載予定

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