日米で異なる自動車販売とガソリン需要との関係
2016.5.20
米国では好調な自動車販売がガソリン需要の増加要因に

 米国のガソリン相場は2月から4月にかけて上昇し、昨年8月以来8カ月ぶりに1ガロン150㌣台まで値上がりました。5月に入って少し値を下げましたが、依然、比較的堅調な値動きが続いています。

 原油価格が反発したことが、ガソリンが値上がりした最大の理由ですが、米国ではガソリン需要が伸びていることも理由の一つになっています。

 米国エネルギー省(EIA)の統計によると、15年1月~10月の米国のガソリン出荷量は前年同期比約4%増、異常暖冬の影響で15年11月~16年1月は需要が伸び悩みましたが、16年2月以降は5%を上回る伸びを続けています。16年2月~4月の出荷量は前年同期比約6%増でした。

 ガソリン需要が伸びている背景には、自動車事情の変化があります。

 マークラインズが集計している米国の新車販売統計によると、15年5月~16年4月の新車販売台数は前年同期比4・7%増の1766万台、特にスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)やピックアップトラックが主体の小型トラックが同12・9%増の1004万台と高い伸びを記録しています。小型トラックの販売台数が高い伸びを示し始めたのは12年の半ばで、それ以降、年々、小型トラックの販売構成比が上昇し、12年に49%だった小型トラックの販売構成比は15年に56%に上昇しました。3月の新車販売台数は前年同月比3%増、うち小型トラックは11%増、4月は4%増と11%増と傾向に変化は見られません。

 このように自動車保有台数の増加と燃費の悪いSUVやピックアップトラックの構成比の拡大によって米国のガソリンの需要は押し上げられていると考えられるのです。

 原油安を反映してガソリンの価格が安くなっていることもガソリン需要の増加、並びに燃費の悪いSUVやピックアップトラックの販売が伸びている理由と考えられます。米国では、石油製品税が軽いため、原油価格の変動率とガソリン価格の変動率に大きな差が生じません。

 ちなみに、米国では、新車販売、とりわけ小型トラックの販売状況は、景気のバロメーターの一つと言われています。この数字を見る限り米国の景気はまずまず好調な状態を維持していると考えられます。

 米国では15年に石油需要が前年比2~3%増加しましたが、石油製品の総需要の過半を占めているガソリンの需要が事情で増加していることが、主な理由と考えられます。


日本では新車販売の好調がガソリン需要を抑制
 日本では、ガソリン需要が02年をピークに減少傾向で推移していますが、その理由の一つには米国とは異なる自動車事情があると考えられます。

 日本の自動車保有台数は、08年から11年にかけて伸び悩んだ時期がありましたが、12年以降は1%前後のペースで増加しています。

 保有台数の増加はガソリン需要を押し上げる効果を及ぼしているのですが、平均燃費の改善による効果の方が大きいため、ガソリン需要が減少傾向で推移しているのです。

 燃費が改善している理由は、軽自動車やハイブリッドカーなど燃費の良い車種が新車販売の主流を占めているからです。景気がよくなると、サイズが大きい普通車の販売が好調になる傾向は見られますが、普通車でもハイブリッドシステムを搭載した燃費の良い車が売れています。

 ちなみに軽自動車が自動車保有台数に占める比率は、95年から05年にかけての20年間に7%から21%へ上昇しています。
 これでは、新車販売が好調でもガソリン需要の増加にはつながりません。むしろ、新車と廃車の燃費の差分だけガソリンの需要は押し下げられることになります。

 なお、日本では、ガソリンに高い製品税が課せられているため、原油安の恩恵をドライバーが感じにくいこともガソリン需要や自動車の販売事情において米国と違いが出ている原因になっていると思われます。


石油業界がとるべき戦略は適正マージンの確保
 日本では、自動車メーカーの販売戦略と照らしても、燃費の悪い車が売れるような環境になるとは思えません。人口が減少に向かっている事情を考慮すると、自動車保有台数も近く減少に転じると予想されます。この結果、日本では、ガソリンの国内需要は減少し続けると考えざるを得ません。

 需要が増えないのであれば、石油業界が取るべき戦略は一つのはずです。安売りでシェアを競うのではなく、適正なマージンが確保できるよう、元売と販売事業者が一致団結して取り組むことです。

 安売りで失った利益をその後の数量増で補うことが難しいからです。



北海道のガソリン価格予想
4月28日(月)から5月4日(日)まで
価格下降
値戻し後の下げ基調

04月30日付ヘッドライン

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