潮流が変わった原油相場
2016.7.25
原油価格は一時7カ月ぶりに1バレル50ドル台まで上昇
 原油価格は、2月中旬に1バレル20ドル台半ばまで下落してから徐々に水準を切り上げ、6月に、北海Brent原油や米国WTI原油は昨年11月以来7か月ぶりに50ドル台まで上昇しました。

 その後、英国のEU離脱騒動の影響などから値を下げましたが、他の国際商品や金融商品などと比べて底堅い値動きが続いています。

 原油相場が上昇している理由の一つは、需給の変化にあると考えられます。

 例えば、米国の原油生産は減少し続けています。DOE(米国エネルギー省)のEIAが毎週公表している需給統計によると、16年7月初めの米国内の原油生産量は日量842万8千バレルで、15年6月5日の週に記録したピーク生産量の日量961万バレルに対して12%減少しています。

原油相場を押し上げた需給の変化
 米国内の石油リグ(原油掘削設備)の稼働基数は、原油価格が1バレル約150ドルから30ドル台に急落した影響で、08年から09年にかけて減少し、シェールオイル開発の急拡大を受けて14年秋まで増加傾向で推移した後、原油価格の急落を反映して14年10月から16年5月にかけて大幅に減少しました。16年7月8日の稼働基数は351と、前年同期の半分以下、直近のピークの14年10月10日の1609と比べると約5分の1になっています。

 リグの稼働基数の減少率に比べると生産量の減少率は小さくなっていますが、これは、14年10月以降に停止したリグの大半が在来型の油田に比べて規模が小さいシェールオイルのリグだったこと、採算性が低く生産量が小さいか生産量が減衰しているリグから停止が進んでいること、稼働中のリグの多くで原油価格の低下を生産量の拡大で補うための対策を講じていることなどによると考えられます。

 ただし、生産量を増やす対策もほぼ限界に達していると推察されますので、今後は、原油価格が上昇してリグの稼働基数が増加しない限り、油井の減衰などによって生産量が減少していくと予想されます。

 なお、シェールオイル開発のコストを回収できる原油の損益分岐点価格は、原油価格とリグの稼働基数との相関性などから、1バレル50ドル~80ドル程度のプロジェクトが多いと推察されます。原油の開発・生産コストは、人件費や一部の資材・機材の調達コストの低下
、探鉱・開発・生産技術の向上などによって多少下がっていると予想されますが、原油価格が50ドルを上回って上昇していかない限り、リグの稼働基数が増えるとは考えにくく、すぐに生産量が増えるとは思えません。

 探鉱・開発投資が減退し、リグの稼働基数が減少しているのは、米国に限りません。2000年代に入って原油価格が高騰してから積極的に開発が進められた新興産油国・地域に共通する動きです。そして、これらの国・地域では原油生産量が減少しつつあり、これらの影響で、原油の需給は今後徐々に引き締まっていくとの見方が一般的になりつつあります。これは、原油価格が急騰しても生産量が簡単に増えないことを意味しています。


潮流は変わったが、原油相場がすぐに急騰するとは考えにくい
 このように原油の需給構造の変化は、原油価格の方向性が上昇方向へ変化したことを示唆していると考えられます。

 ただし、産油国、消費国のいずれにおいても、依然、原油の在庫水準が高いこと、サウジアラビア、イランなどに増産余力が十分あることなどを考慮すると、短期間で需給が引き締まって原油価格が急騰するとは思えません。

 また、原油価格の押し下げにつながりかねない変化も見られます。例えば、昨年6月以降に原油相場が二番族を探るようになった理由の一つになった「チャイナショック」が、ブラジル、ロシアなどを加えた「BRICSショック」として再来する可能性もありますし、米国で予定されている利上げなどをきっかけに原油相場と相関性がみられることが多い為替相場において「ドル高」が生じる可能性もあります。

 石油相場を取り巻く環境は、下げ材料のみを拾い続けた昨年後半から今年2月中旬までの状況とは様変わりしていますが、まだ上げ下げどちらに振れるか予断を許さない状況にあると考えられます。




北海道のガソリン価格予想
5月6日(月)から5月12日(日)まで
価格上昇
実質ベースで仕切り価格が上昇

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