急騰したガソリン市況 ガソリン市況が急騰しました。資源エネルギー庁が回収公表している石油製品価格調査によると、6月6日時点のレギュラーガソリンの店頭価格(消費税込み価格)の全国平均は、前週比2・6円高の1リットル122・5円となり、年初来の高値をつけました。3月7日につけた安値からの上昇幅は10・6円で、特に安売りが横行していた激戦区での市況の底上げが顕著です。
店頭価格が上昇した理由は、スポット(業者間転売)市況の上昇と一部元売りの事後調整の廃止(停止?)によると考えられます。最も安い価格で販売している(販売できる)業者、すなわち、製品の仕入価格が安いか、販売コストが低いか、コストを度外視して政策的に安い価格で販売しているかのいずれかの状況にある販売業者が各地域の店頭価格を左右していると考えられるからです。
なお、スポット市況は、原油価格の上昇、需給の引き締まり、事後調整の廃止によって上昇したと考えられます。事後調整は、直接的、間接的の双方から市況に影響を及ぼしていたと考えられます。
すなわち、国内に流通しているガソリンの大半を供給している元売の対応によって市況が左右されていることが、いみじくも今回の店頭市況の上昇局面で再確認されたということでしょう。
石油業界がとるべき対策は需給バランスの確保と商慣行の是正 日本ではガソリンなど石油製品の国内需要が減少し続けると予想されます。需要が減少するのなら取り組むべき対策は決まってきます。
国内で流通している製品の大半を供給している精製・元売は、精製設備の集約を進めて供給能力を削減したり、石化製品などに生産をシフトしたり、製品輸出を拡大したりして、需給が緩みにくい事業環境をつくっていくこと、そして、精製・卸売・小売の各段階で適正なマージンが確保できるよう、業界が一致団結して取り組む必要があると思われます。
そのために、必要不可欠な取り組みの一つが事後調整の廃止など不合理な小混淆の是正であることが、今回の市況上昇局面で明らかになったということです。
なお、販売業界から、業転品をなくせ、あるいは、業転品を自由に購入させろといった指摘がなされることがありますが、製造・流通の両段階における需給調整局面などにおいて発生し、ほとんどの業界に存在する業者間転売を完全になくすことはできませんし、系列販売のルールを逸脱した行為を元売が容認できるとは思えません。業者間転売品については、流通量を縮小していく取り組みを続けることが妥当な対応と思われます。
また、事後調整についても、すべての取引先に共通なあらかじめ公表されたルールに基づくインセンティブやバックマージンなどに問題があるとは思えません。このような価格調整は多くの業界において一般的に行われていることだからです。問題なのは、恣意性があり、かつ、大きな価格差を生んでいる不合理な「差別対価」にあると思われます。
市況是正はすべての元売が合理的な経営を実現できるかどうかによる なお、一部の元売が、石油製品の市況が低迷している理由を、透明・公正な価格指標が存在しないこと、石油製品の流通構造が複雑であることなどにあると説明していますが、元売の観点だけからなら分からなくもありませんが、業界全体でみると、この見解が妥当とは思えません。
前述したように、仕切価格の決定方式の問題は価格指標にあるのではなく、不合理な商慣行にあると考えられます。
流通構造、事業者やSSの数と収益環境との間に関係がないことは、90年代半ば以降に事業者及びSS数が減少し続けており、元売の販売子会社や出資特約店の販売シェアが拡大するなど、元売の影響力が強くなる方向に流通構造が変化しているにもかかわらず、市況の低迷が繰り返されていることからみても明らかでしょう。
要は、すべての元売が、合理的な経営を実現できるかによって収益環境は左右されると考えられるのです。