原油市況低迷要因は引き締まらない需給 昨年9月末にOPEC加盟国が協調減産を実施することで合意したことをきっかけに原油市況は1バレル40ドル台から50ドル台に上昇したものの、その後、上値を追う動きがみられません。OPEC加盟国やロシアが減産しているにもかかわらず、需給が引き締まらないのがその要因と思われます。
今年1月から協調減産を実施しているOPECやロシアなど主要産油国の減産量は180万BD前後に及んでおり、1月~3月の減産順守率は90%前後に達しています。これは過去に協調減産を実施したケースに比べて極めて高い比率です。ところが、過剰在庫は解消せず、需給は引き締まらない状態が続いています。
需給が引き締まらない理由のひとつは需要が伸び悩んでいるからです。
IEAが4月13日に公表したOil オイルマンスリーレポートにおいて、17年の世界の原油需要は前年比137万BD(日量バレル)増の9791万BDと予想されています。ちなみに、15年は同197万BD増の9495万BD、16年は同164万BD増の9659万BDでしたので、伸び率は年々鈍化しています。
もうひとつの理由は、米国の原油生産量が増加しているからです。
米国の17年4月の原油生産量は929万BDと、ピーク時の15年6月初旬の961万BDに比べると30万BD余り減少していますが、昨年7月初旬に比べると80万BD余り、昨年末に比べても50万BD余り増加しています。理由は、シェールオイルの生産量が、生産性の改善による生産コストの低下などによって増加しているからです。
OPECの協調減産局面では原油市況は上げ渋ることが多い 過去にOPEC加盟国が協調減産を実施した局面では原油市況が上昇するより下落したケースの方が多かったという事実があります。生産シェアが高いOPECが減産すれば原油の需給が引き締まりますので、意外に思われるかもしれませんが、OPECが原油の需給を調整するスウィングプロデューサーの役割を担っていること、協調減産が終了すると減産分に相当する増産が行われて需給が緩む可能性があることなどを考慮すると、原油市況が上昇しないのは理にかなった動きとも考えられます。
非OPEC諸国の油田では、原油価格が採算を割り込むような低水準でない限り、能力いっぱい生産するケースが多くなっています。このため、需要の伸びが高く、非OPECの増産でカバーできないケースでは、OPECが供給量を増やして需給のバランス化を図り、逆に、需要が伸び悩んだり、非OPECの供給量が需要の伸びを上回ったりしたケースでは、OPECが減産して原油価格の下落を抑止しようとすることがあります。
これがOPECのスウィングプロデューサーとしての役割で、OPECが協調減産を実施する局面は、「OPECが減産しなくてはならないほど需給が緩んでいる」と解釈することができます。
需給が緩んでいた局面で、需給を引き締める目的でOPECなど主要産油国が協調減産した局面では、減産の実施が公表された直後に油価が上昇したケースが何例か見られましたが、その後に反落するケースが多くなっていました。
OPECが協調減産の実施に合意したと発表した昨年9月以降の原油価格の動きは、この経験則どおりの動きだったと考えられます。
需給要因だけからみた原油価格の本格上昇時期は1年余り先に OPECやロシアなどの主要産油国が7月以降も協調減産を継続したとしても、原油市況が崩れない限り、米国の生産量がさらに増加すると見込まれますので、需給を引き締めきれない状態が当面続く見通しです。
なお、協調減産が終了すると足元の需要増ペースの1年分以上生産量が増加することになりますので、一気に需給が緩んでしまいかねません。
原油の需給が均衡するまでには、1年半~2年程度の期間が必要になると見込まれますので、需給要因だけからみると、原油価格が本格的に上昇するまでには、まだ1年余りの期間を要すると考えられます。