自動車の買い替えと保有台数の伸び鈍化がガソリン需要を抑制
2017.6.20
アメリカのガソリン需要は昨年末から減少傾向に
 EIA(米国エネルギー省)の週次統計によると、アメリカのガソリン出荷量は、2012年から2013年半ばまでは伸び悩んでいましたが、2013年半ばから2016年11月にかけての時期には増加傾向で推移していました。

 ところが、2016年12月以降は前年実績を割り込むようになり、昨年12月から今年5月にかけてガソリン出荷量は前年実績を平均で約3%下回っています。

 アメリカでは、景気の回復に伴って、自動車の販売が好調になり、特にピックアップトラックやSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)などの小型トラックや大型車などの販売構成比が高まっていました。

 オートデータ社の集計データによると、2012年に48・9%だった小型トラックの構成比が2016年には59・5%へ10ポイント以上高くなっていました。小型トラックや大型車は相対的に燃費が悪いため、これが2013年半ばから2016年にかけてガソリンの出荷量が増加していた理由の一つになっていたと考えられます。

 この傾向は2017年に入っても変わっておらず、今年1月~5月の小型トラックの販売構成比は61・5%まで高まっています。ところが販売台数が伸び悩んできました。

 アメリカの新車販売台数の伸び率は2012年~2016年の平均が6・8%増でしたが、2017年1月から5カ月連続で前年実績を下回り、2017年4月は前年同月比4・7%減の142万6千台、5月が同0・5%減の151万9千台と2カ月連続で昨年だけでなく一昨年の実績を下回っています。


エコカーへの買い替えがガソリン需要を抑制
 先進諸国の新車の販売は、2011年頃から好調に推移していました。先進国では自動車の販売台数が増加していてもガソリンの需要が増加しないことがあります。これは新車の販売台数に占める買い替え需要の比率が高いからです。特に近年は、燃費の良い小型車やハイブリッドカー、環境性能の高いCDI(コモンレール・ディーゼル・インジェクション)システムを搭載したディーゼルエンジン車といったエコカーや電気自動車の普及が拡大していますので、自動車の買い替えによってガソリンの平均燃費が改善し、ガソリンの需要が抑制される傾向がみられるのです。

 このため新車販売が好調で自動車の保有台数が伸びていれば、保有台数の伸びによって平均燃費の改善による効果を吸収してガソリン需要は増加しますが、販売台数が伸び悩むと保有台数の増加で吸収できなくなって燃費の改善がほぼストレートにガソリン需要の減少につながってしまうのです。我が国で、自動車販売が好調に推移しているにもかかわらず、ガソリン需要が減少傾向で推移しているのはこのためです。

 日本自動車工業会の集計データによると、我が国の2016年度の新車販売台数は、普通車が前年比10・8%増の152万9千台、小型車が同5・3%増の137万7千台、軽自動車が同6・3%減の133万7千台、乗用車合計が同3・1%増の424万3千台でした。乗用車の保有台数は、1月末時点で前年3月末比1・1%増の6147万2千台です。これにより、保有台数に占める旧車の構成比は94・1%、新車の構成比は7・0%、昨年度に販売された新車の約84%が買い替えによるとみなすことができます。車の平均走行距離が変わらないと仮定し、新車の平均燃費と廃車の平均燃費の差が30%と想定すると、ガソリン需要は1・0%減少(100%×94・1%+70%×7・0%=99・0%)し、平均燃費の差が40%と想定すると1・7%減少(100%×94・1%+60%×7・0%=98・3%)する計算になります。ガソリン需要の減少はこのように分析することができますが、10数年前に売れていた車と今売れている車の燃費の差を考えると、おおむね実感に合うのではないでしょうか。


ガソリン需要の減少が原油価格の低迷要因の一つ
 アメリカで原油や石油製品の需給調整が進まない理由としてシェールオイルの増産が挙げられることが多いのですが、前述したような事情によって、ガソリン需要が伸び悩んでいることも原油及び石油製品の需給が引き締まらない理由の一つなのです。

 そして、これは、アメリカだけでなく、世界全体の石油及び原油需要の伸びが鈍化している理由、そして、原油価格が抑制されている背景事情の一つになっていると考えられます。

 自動車や石油利用機器の燃費の改善や他燃料へのシフトは今後さらに進むと予想されます。新興国や発展途上国では自動車、船舶など石油利用機器の普及が進むと予想されますが、原油市況を左右する原油及び石油製品の先物市場が立地する先進国の自動車の販売動向には注意を払う必要があると考えられます。


北海道のガソリン価格予想
4月22日(月)から4月28日(日)まで
変わらず
仕切りにより、値上げも

04月25日付掲載予定

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