小売全面自由化により地域間格差は拡大する
2017.7.20
電力小売全面自由化で地域差が拡大
 電力のスイッチング件数は、17年6月末時点において全国で425万3千件、需要家総数の約5%を占めています。スイッチングは月30万件前後のペースで進んでいますので、17年末には、スイッチング件数は約600万件、総数の7%程度を占めるようになると予想されます。

 電気事業では、卸取引市場や電力会社による常時バックアップシステムなどによって、自ら供給力や調整力を持たなくても新しい小売電気事業者(新電力)が電気事業に参入することができる仕組みが全国で整えられていますが、地域によって競争状況に大きな差がみられます。

 17年6月現在においてスイッチング比率が全国平均を上回っているのは、東京電力、関西電力、北海道電力の供給地域だけです。これらの地域のスイッチング比率は5~7%に達しています。

 一方、北陸電力、中国電力、四国電力の供給地域の比率は1%前後、沖縄電力ではまだ百件程度しかスイッチングが起きていません。

 地域によってこのような差が生じているのは、新電力が効率的に事業を展開できる大都市圏や料金水準が相対的に高い地域に絞って事業を展開しているからと考えられます。新電力は利益の獲得を目指していますので、地域間での競争状況の差は今後も存続し続けると予想されます。


さらに大きいガスの地域差
 都市ガスの地域間格差はさらに大きくなっています。

 電力は、新電力が全国で一般需要家向けの小売事業を開始していますが、都市ガスでは、全国に209ある都市ガス事業者の一部の供給地域でしか競争は起きていません。

 ガス小売事業者の新規登録数は、17年6月27日現在で49、うち17の事業者が一般需要家向けの小売事業を開始したり、開始を予定したりしていますが、7月初旬時点で、新しいガス小売事業者(新ガス会社)が一般需要家向けの小売事業を展開している地域は、関東、東海、関西、福岡県の4地域に限られています。

 これは、都市ガス事業に参入するためには、参入する地域のガス導管網に同じ品質(同じ熱量に調整し同じ腐臭をつけた)のガスを消費される量と同時に同量供給する仕組みをつくらなければならないからです。ガス原料を安定的に調達できる仕組みを整えている電力会社や一部の石油会社、あるいは、都市ガス会社と提携しない限り、都市ガス事業には参入できないのです。

 都市ガスの17年6月末時点のスイッチング件数は、全国で約29万件、電力の3カ月後のスイッチング件数は約126万件でしたので、電力と都市ガスの総需要家件数の差を考慮してもスイッチングの進捗ペースは半分程度にとどまっています。

 地域による差は大きく、関西では電力、都市ガスともにスイッチングが急ピッチで進んでおり、自由化後3カ月間のスイッチング件数は電力の約26万件に対してガスは約17万件、対象需要家数を考慮すると都市ガスのスイッチングは電力の2倍以上のペースで進んでいます。

 電力のスイッチングが最も進んでいる関東ではガスの件数は電力の約6%に過ぎず、電力のスイッチング比率が、関東、関西に次いで高い北海道では、都市ガス事業では一般需要家は新しいガス事業者を選べない状態が続いています。東海および福岡県では、電力に比べて都市ガスのスイッチング比率の方が高くなっていますが、スイッチング比率そのものは低い水準にとどまっています。

 そして東北、北陸、中国、四国、沖縄県では、電力のスイッチング比率が低く、都市ガスでは新規参入自体が起きていません。電力と都市ガスの間、あるいは、地域間でイコールフィッティングが実現していない状態なのです。

 都市ガス小売の全面自由化をきっかけにLPガス業界の競争状況も変化しつつあります。これまでLPガス事業者の切り替えは、商権の売買や、ガス事業者による勧誘以外ではほとんど行われていませんでしたが、今後、ガス事業者間での競争が激化するとともに、需要家がガス事業者を選ぶ動きも広がると予想されます。

 ガス価格には、都市ガス、LPガスともに大きな価格差がみられます。ガス事業では需要密度が高い地域と低い地域の供給コストに大きな差があり、LPガスでは価格の透明性が低いことも価格差が生じている理由の一つになっていました。

 都市ガス小売全面自由化をきっかけに大都市やその周辺地域では競争が起きて価格も低下すると見込まれますが、世帯・人口密度の低い地域では競争が広がりにくく、ガス価格は高止まりすると予想されます。小売全面自由化は電力・ガスともに地域間格差を拡大する仕組みなのです。


北海道のガソリン価格予想
4月22日(月)から4月28日(日)まで
変わらず
仕切りにより、値上げも

04月25日付ヘッドライン

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