お客様の来店頻度が下がる 我が国の三輪車以上の自動車の保有台数は、06年度末から16年度末にかけての10年間に7568万台から7783万台へ、215万台(2・8%)増加しました。
また、過去10年間の新車の国内販売台数の平均は504万7千台で、前年度末の保有台数に占める比率は平均6・7%でした。内訳は乗用車が424万5千台(前年度末保有台数比7・2%)、トラックが78万9千台(同5・3%)、バスが1万2千台(同5・7%)でした。
一方、ガソリンの国内販売量は、06年度が6055万kl、16年度が5250万klでしたので、両年度のガソリンの販売量をガソリン車の保有台数の期首期末平均で割ると、1台当たりのガソリンの年間消費量(平均燃費)は06年度が902㍑、16年度が739㍑となり、この10年間に平均燃費は18%減少した計算になります。
買い替えサイクルを考慮すると、過去10年間に販売された新車と既存車の平均燃費の差は約33%と算定されます。この差は年々拡大する傾向にあります。
さらに、今後、ガソリンをまったく、あるいは、ほとんど消費しない電気自動車(EV)やプラグインハイブリッドカー(PHV)などが本格的に普及するようになると、車の平均燃費の改善はさらに顕著になり、SSのカーケアビジネスの事業環境に少なからぬ影響を及ぼすようになると予想されます。
来店頻度が減少したり、SSを利用しない自動車が増えたりするからです。1年単位でみると置き換わる車の比率は高くありませんので、急に事業環境が変わるわけではありませんが、このような変化が起きることを踏まえた対応が必要だと思われます。
SSでは車の点検・整備事業を提供しにくくなる 一方、専用の工具を使わなければ取り外すことができないエンジンカバーを装着した車が増えてきています。メーカーの指定工場以外でエンジンカバーを外したら、メーカーの保証を受けられなくなる車も増えてきています。中には、タイヤのエアバルブの開閉にも制約を設けている車も出てきました。このような車は、カーディーラーや自動車メーカーの認定を受けた工場でしか点検・整備することができません。今後、自動車メーカーの認定が得られていない整備工場やSSで点検・整備できる車は限られるようになると予想されるのです。
対して洗車、コーティング、軽鈑金(リペア)、車内クリーニング、タイヤ交換、消耗品やアクセサリーパーツの販売、保険は自動車メーカーに制約されません。
SSの収益を油外事業で伸ばそうとするなら、自動車メーカーの認定を受けられるようにするか、自動車メーカーの制約を受けない事業に経営資源を集中・特化させていく必要があると思われます。
SSの油外サービス事業ではお客様を呼び込む努力が必要になる これまでのように来店客に油外サービスの利用をお勧めするだけではなく、質の高いサービスを提供してお客様の満足を得ること、油外サービスを利用していただいたお客様にタイムリーに告知をして再利用を促すこと、さらに、給油を目的としないお客様を積極的に呼び込むことなどが重要になると考えられます。ナショナルブランドで展開されているフランチャイズ方式のカーケアサービスでは、お客様に再利用を促したり、新規顧客を呼び込んだりする努力が事業の成否を占うカギとなるでしょう。
SSの経営環境が年々徐々に変化していきますので、急に変わるわけではありませんが、5年先、10年先を見据えると、どの事業に力を注いでいくのかを決め、その事業を極め、併せてお客様へのアプローチ方法を変える工夫と努力も必要になりつつあると考えられます。