都市ガス小売全面自由化から約1年が経過
2018.3.20
地域によって事情が異なる都市ガス小売全面自由化の影響
 17年4月に都市ガスの小売事業が全面自由化されてから1年近くが経過しました。その1年前の16年4月に小売全面自由化が実施された電力業界の変化に比べると、都市ガス業界の変化は小さいと一般に受け取られているようです。

 ガス業界の変化が小さいように受け取られている主な理由は、①新しい都市ガス小売事業者が新たに自由化された一般家庭向けの小売事業に参入した地域は、関東、東海、関西、福岡県の4地域に限られているため、他の都市ガス供給地域では都市ガス自由化による影響が生じていないこと、②最大の都市ガス市場である関東地域のスイッチング(事業者切り替え)のペースが電力に比べると緩やかなこと、③一般家庭用ガスの約半分を占めるLPガス業界では、近年、規制・制度の見直しが行われていないため、全国的にみると大きな変化が起きていないこと、④電力小売が全面自由化された際に比べるとマスメディアの取り扱いが小さいことなどと考えられます。

 ところが、新しい都市ガス小売事業者が一般家庭向けのガス小売事業に参入した地域の中には、電力を上回るペースでスイッチングが進んでいる地域があります。

 都市ガス小売全面自由化後10カ月が経過した18年1月末時点の地域別のスイッチング申込件数は、資源エネルギー庁が公表している資料によると、関東が19万2千件、中部が10万6千件、近畿が33万3千件、九州が5万件です。

 切り替えの申込件数が最も多いのは近畿ですが、地域別のスイッチング申込件数を新しい都市ガス会社が参入した地域の都市ガス需要家件数で割ると、関東1・5%、中部4・4%、近畿4・6%、九州9・2%となります。

 一方、電力小売全面自由化から10カ月後の17年1月末時点のそれぞれの地域のスイッチング申込件数の総需要家件数に占める比率は、関東6・1%、中部2・5%、関西4・8%、九州2・2%でした。同じ期間を経過した時点の都市ガスのスイッチング申込比率は、もっとも高い九州が電力の4~5倍、関西がほぼ同じ、東海が2倍弱、関東は約4分の1と地域によって大きな差が生じているのです。

 もちろん、新しい都市ガス小売事業者が参入していない地域では、一般需要家のスイッチングは全く起きていません。全国一斉に事業者を選べるようになった電力と事情が大きく異なっているのです。

 なお、関東は東京電力、関西は関西電力、東海は中部電力、福岡県は九州電力とその提携先が切り替え先の大半を占めていますが、関東では、東京ガスがサイサンと提携して東京電力と提携した日本ガスグループの都市ガス会社の供給地域で小売事業を始めています。ガス事業者同士で相互参入が起きたのはこの地域だけです。

 電力では、複数の電力会社が主に関東地方で小売事業を展開し始め、東京電力が他電力の供給地域に参入するなど、相互参入が広がっています。この点でもガスと電力には違いがみられます。


北海道電力が都市ガス事業への参入を予定
 ちなみに、LNGを自ら調達している電力各社は比較的容易に一般家庭向けの小売事業に参入できると思われますが、現時点で、自らの供給地域で一般家庭向けのガス小売事業に参入することを表明しているのは北海道電力だけです。他の電力会社が慎重姿勢である理由のひとつは地元の都市ガス会社の経営に大きな影響を及ぼす可能性があると考えているからと推察されます。

 北海道電力は、11年10月に北海道ガスと同社が運営する石狩LNG基地の共同利用に関する「基本合意書」を締結して、現在、同基地で2基のLNGタンクの建設工事を進めています。うち1基は今年8月、2基目は20年8月に完成・稼働する予定です。北海道電力は同時に建設を進めている石狩湾新港発電所へ、自社で調達したLNGを石狩LNG基地で受け入れて燃料ガスの供給を行う予定ですが、併せて、北海道エア・ウォーターと提携して都市ガス事業にも参入する計画を明らかにしています。北海道電力が都市ガス小売事業に参入すれば、北海道ガスの供給地域のガス需要家は事業者を選べるようになります。


事業全体で合理性・効率性を高め、良質なサービスを利用できる地域を広げることが重要
 都市ガス事業の競争をさらに促進するために、ガス託送の合理化・透明化、LNGターミナル等の共同利用の促進、LNGの卸取引市場及び先物取引市場の創設などが検討されています。

 ただし、ガス事業は地域によって事情がまったく異なっていますので、これらの対策によって利用者全体にメリットがもたらされるかどうかはわかりません。

 そもそも、規制・制度改革によって、国民全体にメリットがもたらされるようにするためには、事業全体の合理性・効率性を高めて、事業の健全性・供給安定性を確保しながら、良質なサービスを利用できる地域を広げる必要があると思われます。

 都市ガスは、沖縄と一部の離島を除く全国の送・配電ネットワークがつながっている電力と違って、導管ネットワークが分断されており、地域によって料金やサービスに大きな差があります。ガス導管がつながっている隣接したガス会社間で料金やサービスに少なからぬ差がみられるケースもあります。現在進められているガスシステム改革は、地域間での格差を広げるリスクを抱えているように思われます。


北海道のガソリン価格予想
4月22日(月)から4月28日(日)まで
変わらず
仕切りにより、値上げも

04月20日付ヘッドライン

■広がる困惑、失望感 対量販構図変わらず 札幌市場
■昨年度、減少に転じ17件 危険物取扱者の違反行為
■3月決算組「まずまず」 収益環境の良化が支える
■消費、供給ともに減少 2022年度エネルギー需給実績
■42%が「月に1回以上」 GfKJapanが洗車で調査