出光興産と昭和シェル石油の経営統合実現へ
2018.7.20
出光昭和シェル2019年4月誕生へ
 出光興産株式会社(以下、出光)と昭和シェル石油株式会社(以下、昭和シェル)は、2018年7月10日に「経営統合に関する合意書」を締結し、今後、株式交換契約の締結等の手続きを経て、出光の株式を昭和シェルの株主に交付して出光が昭和シェルの発行済株式を全部取得する株式交換を実施することにより、2019年4月1日に経営統合を実現することを決定したと発表しました。

 出光と昭和シェルは、2015年7月に、経営統合に向けて本格的な協議を進めると発表していました。そして、2015年11月に経営統合に関する基本合意書を締結し、2017年4月の経営統合実現を目指していました。ところが、出光の大株主の創業家が両社の経営統合に反対していたため計画が大幅に遅延していました。

 出光創業家の議決権比率は、経営統合計画発表時には33・92%でしたが、出光が公募増資を実施した直後に26・09%まで低下し、その後、創業家が市場で株式を買い増したため、2017年12月27日時点では28・48%に上昇していました。

 経営統合を実現するためには、株主総会で3分の2以上の賛成を得る必要がありますので、創業家の賛成が得られなければ、経営統合は難しい状況でした。

 今回、出光は、創業家の一員で14・20%の議決権を左右する出光正和氏との間で、①経営統合実行当初に出光が指名する取締役候補5名程度(独立社外取締役を除く)のうち2名を推薦できること、②「出光」のブランドを継続して使用すること、③年内を目途に1200万株の自己株式を取得すること、④経営統合後3事業年度の最終利益の目標を5千億円とし、その50%超を株主還元に充てることなどの条件により、経営統合への賛同を得たと説明しています。


出光と昭和シェルが経営統合を目指した背景
 出光と昭和シェルは、2015年に経営統合を決断した理由を、国内石油業界が石油製品需要の中長期的な減退や過剰設備・過当競争を原因とする低収益体質など、様々な構造的課題を抱えており、これに対応するためには、強固な経営基盤を持つ企業グループの形成、すなわち業界再編が必要との共通認識から、両社が協議を重ねた結果と説明していました。


出光・昭和シェルの統合計画発表 機に変貌した石油業界
 出光と昭和シェルの経営統合計画の発表をきっかけに石油業界は変貌しました。

 まず、JXホールディングス株式会社と東燃ゼネラル石油株式会社(以下、東燃ゼネラル)とが、2015年12月3日に両社グループの経営統合に関する基本合意書を締結し、2016年8月に経営統合に関する最終契約を結び、当初計画どおり2017年4月1日に経営統合を実現しました。発表で先行した出光・昭和シェルグループに先駆けて石油製品の国内シェアの過半を占めるJXTGグループが誕生したのです。

 JXTGは、石油業界の収益環境の改善を先導・実現するとともに、経営統合によるシナジーを積み上げ、収益を大幅に拡大しています。

 コスモエネルギーホールディングス株式会社(以下、コスモ)は、2017年2月21日にキグナス石油株式会社(以下、キグナス)と資本業務提携契約を締結し、キグナスの普通株式20%を取得。2020年を目途にコスモがキグナスに石油製品を全量供給するようになる見通しです。コスモは、アブダビ石油を中核とする石油開発事業と、カーサービス事業に強いコスモ石油販売を核にした石油販売事業に強みを持っていますが、財務体質が悪く、石油精製部門の競争力に問題を抱えていました。このためコスモは、千葉地区で東燃ゼネラル(現JXTGエネルギー)、三重県四日市地区で昭和シェルとそれぞれ事業提携を締結し、精製部門の収益性を高めることに成功しました。キグナスをグループ内に取り込むことで、販売シェアの拡大と精製販売ギャップの縮小が図られ、収益力はさらに向上する見通しです。

 太陽石油株式会社も、石油製品事業の西日本地域への集約と南西石油の買収による沖縄県への進出を実現し、以前から注力していた石油化学事業の収益拡大と合わせて、収益力を高めています。

 出光・昭和シェルグループの誕生によって、石油業界は2強体制になると評することが多いのですが、コスモエネルギー、太陽石油も、JXTG、出光昭和シェルに対抗できる収益力を確保していますので、日本の石油業界は、規模の異なる4つの元売グループによって営まれる体制になると考えられます。


設備集約の成否が石油業界の将来を左右する
 石油業界の収益環境は2017年に大きく改善しました。石油製品の国内需要は伸び悩みましたが、JXTGエネルギーが先導する形で実現した需給の改善と採算販売の徹底により、卸売・小売それぞれの段階でマージンが拡大したからです。

 出光と昭和シェルも、昨年秋以降、仕切価格体系の見直しや業転・商社ルートへの供給抑制などに取り組んでおり、これが市況を底上げする効果を発揮しています。

 出光・昭和シェルの経営統合が実現すれば、両社の精製部門と販売部門が相互補完されて石油製品の国内需給はさらに引き締まりやすくなり、市況が底上げされやすくなると予想されます。

 ただし、石油製品の国内需要が減少傾向で推移するのは避けられませんし、海外の主要製油所に対抗できるコスト競争力及び収益力を備えている国内製油所は限られていますので、製品輸出の拡大、石化製品への生産シフトにも限界があります。

 石油産業の収益環境が中長期的にどのように変化するかは、需要に合わせて石油精製設備を集約し、需給が崩れにくい体制を整えられるかどうか、そして採算販売を継続できるかどうかによると考えられます。


北海道のガソリン価格予想
5月6日(月)から5月12日(日)まで
価格上昇
実質ベースで仕切り価格が上昇

04月30日付ヘッドライン

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