電池の進化とその影響
2018.5.20
人々の暮らしを便利かつ豊かにした電池の進化
 電池は、化学反応、熱、光などによって電気を発生させる装置のことです。

 物質には固有の電位があり、物質の化学反応、2種類の物質の電位の差などを利用して電気を発生させたり貯めたりすることができます。特定の物質の化学反応によって電気エネルギーを一方向に発生(放電)させる電池を1次電池(使い切り電池)と呼び、双方向の化学反応によって電気エネルギーを発生させたり貯めたり(充電・放電)できる電池を2次電池(蓄電池)と呼びます。1次・2次電池は、電位が高い側の正極材料、低い側の負極材料、化学反応によって正極・負極で発生した電気イオンを行き来させる電気伝導性がある電解液、正極側と負極側を分けるセパレーター、構造に気密性・液密性を持たせる固定用シール材(ガスケット)、電気を通さない絶縁体、ケースなどによって構成されています。電極などに用いられている材料や形状によって電池の呼び名は異なり、その性質や用途も異なっています。

 また、1次・2次電池以外にも、触媒を用いて水素と酸素を反応させて水を合成する際に電気エネルギーと熱を発生させる燃料電池、熱を電気に変える性質を持った物質によって熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換して電気を発生させる熱電池(熱電素子)、光と反応して電気エネルギーを発生する物質によって電気を発生させる光電池(太陽電池など)などがあります。

 このような電池を利用した懐中電灯、電子玩具、時計、音響製品、カメラ、ビデオ、通話・通信機器、パソコン、情報機器、リモコン、工具、計器、制御機器、医療機器といった電気製品や部品の普及によって人々の暮らしは便利、また、豊かになりました。


電気製品の可能性を飛躍的に高めた2次電池
 電池は、電極材や形状の違いによって名称が異なり、それぞれ、電圧、電流、耐久性などに差があります。

 2次電池を例にとると、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池(ニッカド電池)、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池(NAS電池)、レドックスフロー電池などがあります。

 最も古くに開発された鉛蓄電池は、蓄電容量当たりのコストが安く、放電が安定しているため、自動車、2輪車のバッテリーや非常用電源などに用いられています。
 ニッカド電池は、内部抵抗が小さく大電流放電が可能で小型化しやすく低温での動作性に優れているといった特長から、マンガン乾電池やアルカリ乾電池の代替用等に普及しました。

 90年に製品化されたニッケル水素電池は、ニッカド電池に比べて蓄電容量が大きく、大電流を発生させることができるため、AV機器や電動工具に用いられ、トヨタのハイブリッド自動車(HV)初代プリウスにも用いられました。旧三洋電機(現パナソニック)が05年に発売して大ヒット商品となった充電式乾電池「エネループ」はニッケル水素電池です。

 リチウムイオン(2次)電池は91年に実用化された電池で、軽量でエネルギー密度が高く、自己放電が少ないといった特長から、携帯電話、スマートフォン、携帯パソコン、タブレット端末、デジタル機器などに幅広く使われています。

 また、HV、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)など電動自動車の多くの電源に用いられています。リチウムイオン電池は、電極、電解液などに用いられている材料の性質から、電解液の液漏れや短絡による膨張・破裂・発火などが起きやすく、高温及び低温の環境下では使用しづらいといった問題点があり、資源の希少性や偏在に課題を抱えるレアメタルを使用しています。

 これらの問題を克服するため材料の開発や構造の改良、低コスト化などが図られています。

 ナトリウム・硫黄電池(NAS電池)、レドックスフロー電池は、ともにエネルギー密度が高く、大容量化しやすく、自己放電が少なく、長寿命であることから大量の電気を貯蔵できますので、電力の負荷平準化(ピークカット、ピークシフト)、非常用電源、風力発電や太陽光発電の供給安定化などに用いられていますが、NAS電池は、エネルギーロス、火災事故発生リスク、ナトリウムと硫黄の毒性、レドックスフロー電池は、高価格のバナジウムの使用、低い充電効率、大きな設置スペースといった問題を抱えています。

 今世紀に入って地球温暖化など気候変動問題が深刻化しました。

 我が国では、地球温暖化の原因のひとつとされている温室効果ガスの排出量を削減するため、福島原発事故をきっかけにした原子力事情の変化も踏まえて、12年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が導入されました。

 これにより太陽光発電の導入が急拡大し、風力発電の導入も今後拡大すると見込まれています。気象条件によって発電量が変動する太陽光及び風力発電の導入を拡大するためには、電力需給の調整機能を高めなくてはいけませんが、そのカギのひとつは蓄電池の開発が担っており、この対応が進めば、発電・燃料構成に少なからぬ影響を及ぼすと考えられます。


実用化されれば電動自動車の普及を加速するとみられている全固体電池
 ほとんどの電池が電解液を使用していますが、電解液を用いず、正極材料、負極材料とイオンのみを通す性質がある固体電解質のセパレーターで充放電できる電池を全固体電池といいます。

 全固体電池は、液漏れによる劣化・発熱・発火が起きにくいため安全で、エネルギー密度を上げやすい、自己放電が少ない、短時間で充電できる、様々な形状に加工できるといった特長がありますが、まだ性能、生産技術、コストの各面で課題を抱えており、実用化には数年単位の期間を要する見通しです。

 ただし実用化されれば、電動自動車の航続走行距離の延長、充電時間の短縮化、安全性の向上などを図ることができますので、自動車の電動化・EV化が一気に加速され、石油、電力などの業界に少なからぬ影響を与えるようになると予想されています。


北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月20日付ヘッドライン

■広がる困惑、失望感 対量販構図変わらず 札幌市場
■昨年度、減少に転じ17件 危険物取扱者の違反行為
■3月決算組「まずまず」 収益環境の良化が支える
■消費、供給ともに減少 2022年度エネルギー需給実績
■42%が「月に1回以上」 GfKJapanが洗車で調査