需給構造や事業環境に影響を及ぼすエネルギー政策
2018.8.25
需給構造の変化を伴いながら増加傾向で推移する世界のエネルギー需要
 エネルギーは、近代社会において、国民生活や経済活動に必要不可欠な基礎資材であり、豊かな暮らしや経済成長を実現するためにエネルギーを安定的に調達し供給し続けることが、すべての国において重要な政策課題となっています。わが国では「S+3E」すなわち安全確保を大前提に、安定供給の確保、経済性の向上、環境対応を同時に達成することがエネルギー政策における基本方針とされています。

 世界のエネルギー消費が急増するようになったきっかけは18世紀後半に起きた産業革命でした。その後、1950年代以降の大油田の発見を契機にしたエネルギー流体革命や人口の増加、エネルギー利用機器の開発と利用の拡大、地球気候変動問題の顕在化などをきっかけにした自然エネルギー利用の拡大などを反映して、需給構造の変化を伴いながら、世界のエネルギー消費は拡大傾向で推移しています。

 エネルギーの消費量は、経済成長と呼応するように拡大傾向で推移しており、第2次世界大戦後に世界全体のエネルギー消費が減少したのは、第1次石油危機時の1974年、第2次石油危機の影響を受けた1980年~1982年、そして、リーマンショックと呼ばれた国際金融危機の影響で世界経済が停滞した2009年に限られています。ただし、その構成は変化し続けています。古くは草木、水力、風力などの自然エネルギー利用に始まり、18世紀に起きた産業革命で石炭を熱源とする蒸気機関の利用が急増、第2次世界大戦後の1950年代から60年代には中東やアフリカで大規模な油田が発見・開発され、その利用技術が発展したことと相まって石油の利用が急増しました。そして2度にわたる石油危機をきっかけに、1970年代半ばから天然ガスや原子力の利用が広がり、近年は、地球環境問題の顕在化や技術進化などを背景に、風力や太陽光など自然エネルギーの利用が急拡大しています。


わが国のエネルギー産業で進められた規制・制度改革と総合政策化
 エネルギーの需給構造は経済性だけでなく政策による影響も受けて変化します。わが国では1950年代から1970年代初頭にかけて利便性や経済性の高さから石油の消費量が急増し、1973年には1次エネルギー供給量の70%余りを輸入原油が占めるようになっていましたが、石油危機による原油価格の急騰、資源国の政情不安拡大や資源制約説の流布などによる石油の安定調達に対する懸念の拡大などから、エネルギーの安定供給を確保するため、石油代替エネルギーの導入及び利用の拡大とエネルギー利用の効率化(省エネ)が政策的に推し進められました。これにより1970年代半ば以降に石油依存度の低下とエネルギー利用効率の向上が進みました。

 しかし、①利便性が高かったり代替が難しかったりする分野で石油の消費が続けられている、②石油代替として導入が拡大した天然ガスや石炭もその大半を輸入に依存している、③新興国や発展途上国の人口急増・高度経済成長を背景に世界のエネルギー需要が急増している、④エネルギー資源国の中に政情が不安定な地域が少なくない、⑤福島原子力事故をきっかけにした諸情勢の変化により原子力の利用を維持・拡大することが困難になったといった事情から、わが国は、依然、化石燃料依存度が高く、自給率が低いといった課題を抱え続けています。

 一方、わが国のエネルギー価格は1990年代半ばにおいて世界の主要国の中で最も割高でしたので、⑥経済活動の国際化の進展に伴って競合国に対してエネルギーコストを抑制することが求められるようになり、⑦地球温暖化などの地球環境問題が世界的に取り組むべき課題として顕在化し、温室効果ガスの大半を占めるエネルギー起源の二酸化炭素の排出抑制が重要課題として浮上したなども課題として加わりました。このような事情から、エネルギー事業者の経営合理化・効率化を促し、効率的なエネルギー供給システムの実現を目指す目的で、エネルギー事業分野における規制・制度改革を推進するとともに、エネルギー政策を総合的・統合的に検討する必要に迫られるようになったのです。

 具体的には、石油事業で1987年から2002年にかけて規制緩和・自由化が段階的に進められ、電力及び都市ガス事業では、1995年から2005年にかけて参入規制の緩和、託送制度の整備、小売部分の自由化などの規制・制度改革が行われ、東日本大震災、福島原子力事故、地球環境問題の顕在化、資源情勢の変化等を勘案して電力・ガスシステム改革が行われることとなりました。現在は省エネの推進、脱炭素化、原子力政策の見直し、再生可能エネルギーの導入拡大(再エネ主力電源化) 、小売全面自由化、電力卸取引市場の整備・活用、新規事業者の参入促進、電力会社の送配電事業部門及び都市ガス大手3社のガス導管事業部門の法的分離等々が政策的に推し進められています。


エネルギー政策は実情に沿った修正が必要
 エネルギー政策の総合化に関しては、2002年に「エネルギー政策基本法」が制定され、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図る目的で「エネルギー基本計画」が策定されるようになりました。エネルギー基本計画は、当初計画が2003年10月に閣議決定され、2007年3月に第1回改訂、2010年6月に第2回改訂、2014年4月に第3回改訂、今年7月に第4回改訂がなされました。

 7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」は、その前提となる長期エネルギー需給見通し、政策の骨子などは前回計画からほとんど修正されていません。というより前回計画策定後、原子力、再エネ、地球環境問題などの状況の変化によって、2030年のエネルギー需給見通しの達成がより困難な状況になっていましたが、その反映、具体的な修正策などが示されなかったというのが実情でしょう。政策の変更は、エネルギーの需給構造や事業環境に大きな影響を及ぼします。今後、実情に沿って、どのような修正がなされるかが注目されます。


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