石油業界の平成時代を振り返って
2019.2.20
 石油業界の「平成」時代は、石油製品の需給変化、規制・制度改革、オイルメジャーズの経営戦略などをきっかけに事業所や事業者の再編・集約が進み、業界構造が変貌した時代でした。

 石油製品の国内需要は平成7年度まで、ガソリンは16年度まで増加傾向で推移し、その後は減少傾向で推移しています。

 国内販売量は元年度が1億9169万kl、ピークの7年度が2億4540万kl、30年度はピーク比で30%余り少ない1億6850万kl程度になる見通しです。

 元売各社は、製品輸出の拡大や石化製品への生産シフトに取り組みましたが、内需の減少分をカバーしきれなかったため、原油処理量は、元年度が1億9080万kl、ピークの9年度が2億5094万kl、30年度はピーク比で約30%少ない1億7650万kl程度へ減少する見通しです。

 石油産業にかかわる規制・制度改革は昭和末期の昭和62年4月に始められました。それ以前は、精製、輸出入、販売のすべての事業分野が厳しい法規制によってがんじがらめにしばられた状態でしたが、平成14年までに段階的に規制緩和・自由化が進められました。

 この結果、事業者は自らの判断で、精製設備の新設・増設・改造、石油製品の精製、輸出入ができるようになり、石油販売業では2年に出店・転籍ルールが撤廃され、10年にはセルフ給油が解禁されました。

 これらの変化は、当初、不足していた精製設備の能力増及び高度化、製品輸入依存度の低下などによって、石油業界全体の収益の拡大につながりました。しかし、精製設備やSSへの過剰投資によって設備余剰を抱えるようになり、需給の悪化、販売競争の激化などが生じるようになりました。

 そしてオイルショックの際に行政指導によって形成されたガソリン独歩高のいびつな価格体系、仕切価格の事後調整をはじめとする不合理な商慣行などが、ガソリンの安売りを増長し、石油製品の利幅が急激に縮小する結果となりました。

 レギュラーガソリンの精製・販売マージン(小売価格と原油輸入コストの値差)の年度平均は元年度がリットル47円、ピークの4年度がリットル55円でしたが、そのわずか3年後の7年度にリットル25円、13年度にはリットル22円まで縮小しました。

 この時期には、灯油、軽油など他の石油製品の利幅も縮小傾向で推移していましたので、石油業界全体の収益環境は著しく悪化し、14年度以降は、精製・販売マージンは上げ下げを繰り返すようになりましたが、需要減による影響から収益環境は近年まで芳しくない状況が続いていました。

 石油業界の収益環境の悪化のきっかけは規制緩和・自由化にあったと評されがちですが、規制・制度改革の実施時期とは必ずしも符合していません。収益環境悪化の直接的な原因は、業界自らの過剰あるいは不合理な対応が原因だったと考えられます。




 石油業界は、収益環境の悪化に徹底したコスト削減と再編・集約で対処しました。元売各社は、石油製品の需要が減少傾向に転じた平成7~8年頃から自発的に同業他社との業務提携、事業・経営統合などに取り組み、製油所・油槽所・SSの統廃合などを進めてきました。

 元売の統合は昭和後期に始まりましたが、平成の再編・集約の先鞭を切ったのは日本石油と三菱石油でした。両社は3年4月に合併し、市場シェアの約25%を占める日石三菱(新日本石油)が誕生しました。

 その後、元売の再編・集約が精製専業会社も交えて繰り返され、昭和後期に15社を数えた元売は、出光興産と昭和シェル石油の経営統合が予定されている31年4月に5グループに集約され、新元号2年にはコスモエネルギーがキグナス石油に全石油製品を供給する予定であるため、事実上、JXTG、出光昭和シェル、コスモエネルギー、太陽石油の4グループに集約される見通しです。

 そして精製・元売の再編・集約により精製部門の集約が進み、平成当初38を数えた製油所の数は23に減少し、元年当初455万BD(日量バレル)だった原油処理能力は、10年に541万BDまで増加した後に縮小に転じ、31年2月現在の能力はピーク比約35%減の352万BDに削減されました。これによりコスト低減が進みましたが、平成10年ごろから設備集約によって需給ギャップが縮小するたびにマージンが拡大して、石油関連事業者の業績が改善するようになりました。

 なお、規制・制度改革によって護送船団方式とも言えたルールが消失したことも一因となり、メジャーズが日本の石油市場に対する見方を変えたことも石油業界の再編・集約を促すきっかけのひとつになりました。

 日本で事業を展開していたメジャーズ各社は、規制緩和前には高い収益が安定的に確保できた日本市場を重視していましたが、メジャーズ間での再編、事業の選択と集中を進める過程において、日本を含めた先進国の下流(精製、販売)部門から撤退して、上流部門やケミカル分野などに経営資源をシフトするという判断がなされたからです。

 販売業界でも、事業環境の悪化、元売の販売事業戦略、販売事業経営者の後継者難などを背景に再編・集約が進んでおり、元年当初から31年末までに販売事業者数は3万3千から1万4千、SS数は5万5千から約3万へ減少する見通しです。

 販売事業者の収益構成も、ガソリンなど石油製品主体だったものが、カーケア事業を始めとする油外事業の構成比が高まる変化が起きており、事業環境変化への対応の如何によって業績格差が生じています。

 JXTGの先導によって平成時代の終わりに石油業界の収益環境は改善しましたが、新元号時代にどのような新たな変化が起きるかが注目されます。


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