石油元売は好市況と経営合理化で最高利益を連続更新
2019.6.20
石油元売全社の18年度の在庫評価影響除き利益は前年に続いて史上最高に
 石油精製・元売の18年度連結決算は、石油製品市況の改善、原油・天然ガス・石炭価格上昇による資源開発事業の収益拡大、コスト削減・効率化の効果などによって、元売全社の在庫影響を除いた実質的な経常利益(税前利益)の合計は、前年比23・9%増の7650億円で、前年に続いて史上最高を更新しました。

 18年度の元売大手3社の在庫影響除き利益は、JXTGホールディングスの税前利益が前年比38・2%増の4872億円、出光興産の経常利益が同16・4%減の1631億円、コスモエネルギーの経常利益が12・0%増の1074億円、昭和シェル石油の18年(18年1月~12月)の経常利益が同8・2%増の741億円でした。



資源価格市況上昇による開発部門の収益拡大石油製品の好市況、経営効率化が好調要因
 元売各社の18年度決算が好調だった要因は、①エネルギー資源価格の上昇によって、石油・天然ガス・石炭などの資源開発事業の収益が拡大したこと、②石油製品の国内市況が改善したこと、③コスト削減・効率化が進んだことなどでした。

 原油等の平均価格は、ドバイ原油の18年度平均が前年比1バレル当たり13㌦高の69ドル、ブレント原油の18年平均が同17㌦高の71㌦、一般炭の18年平均が1㌧当たり同18㌦高の107㌦と上昇しました。原油価格は、17年度は年間を通じて上昇傾向で推移したのに対して、18年度は11月から12月にかけて急落した後に反発しました。
 資源開発事業の収益は、原油・天然ガス・石炭の価格上昇、新規油田の増産などによって拡大しました。

 18年度のエネルギー資源開発事業の利益は、JXTGホールディングスの石油・天然ガス開発事業の営業利益が前年比2億円増の378億円、出光興産の石油・石炭開発事業の営業利益が同203億円増の871億円、コスモエネルギーの経常利益が同381億円増の569億円でした。JXTGホールディングスの増益幅が小さかったのは、カナダのオイルサンド事業の全保有権益売却・パプアニューギニアで発生した地震影響など318億円の一過性損失を計上したからでした。

 元売各社の石油製品事業は18年度も高水準の利益を確保しました。暖冬の影響で灯油の需要が大幅に減少し、燃費の改善や他エネルギーへのシフトによってガソリン、重油などの需要も減少して収益を押し下げましたが、高水準の国内マージンが維持されたほか、コスト削減・効率化が進捗したからです。元売各社の石油製品事業の在庫影響除き利益は、JXTGエネルギーの営業利益が前年比737億円増の2424億円、出光興産の営業利益が同70億円減の505億円、コスモエネルギーの経常利益が同129億円減の249億円でした。

 18年度の石油製品の卸売マージンの月次の変化は、4月~10月にかけて拡大傾向で推移し、11月~1月にかけて縮小、2月以降に再び拡大し、年平均ではガソリンを除いて前年の水準を上回りました。11月~1月に石油製品の卸売マージンが悪化したのは、原油価格の下落局面で原油市況に呼応するようにガソリン・軽油などのスポット市況が下落して仕切価格に反映されたため、原油コストが低下するまでのタイムラグによってマージンが圧迫されたからです。

 原油価格が反発した1月半ば以降に石油製品の卸売マージンは回復しました。資源エネルギー庁から公表されている卸売価格の全国平均と原油輸入CIF価格の差から計算される卸売マージン(1㍑当たり)の年平均値はレギュラーガソリンが16・1円、灯油が17・7円、軽油が17・9円で、16年度の平均(レギュラーガソリン16・0円、灯油15・4円、軽油14・7円)を大きく上回り、17年度平均(レギュラーガソリン16・8円、灯油16・8円、軽油16・3円)もガソリンを除いて前年比で改善しました。

 17年4月に誕生したJXTGエネルギーが、卸・小売の両段階で採算販売を徹底していることが、好市況が維持されている主な背景事情と考えられます。

石油製品事業の収益悪化リスク要因
 石油製品事業の収益悪化リスクは、需要の減少に対応した国内向け供給力削減の遅れ、製品輸入の拡大、アジアなど海外市況の悪化、天候不順による需要の減少、原油価格の乱高下、元売各社の販売政策の変更などでしょう。

 石油製品の国内需要が減少傾向で推移していますが、精製能力の削減が進んでいませんので、製油所の稼働率は17年度から19年度にかけて低下する見通しです。

 良好な市況を維持しつつ、精製部門の収益性をさらに高めるためには、精製設備の廃止、製油所の集約、海外事業者との提携などによる輸出専用製油所化などの対応が必要です。

 当面は、石油製品の国内シェアの約5割を占めるJXTGエネルギーが採算販売を継続する方針を示しており、19年4月に誕生した出光昭和シェルも、大株主に対して向こう3年間に当期純利益を5千億円以上稼ぐことを公約していますから、市況を崩すような販売政策をとるとは思えません。

 しかし、20年初からキグナス石油に石油製品を全量供給するようになるコスモエネルギーが供給量の不足分を輸入に頼ったり、供給余力が拡大するJXTGエネルギーや出光昭和シェルが廉売によって国内シェアの拡大を図ったりすると、国内需給が緩んで市況が崩れる可能性もあります。構造的な需給・市況対策が継続されるかどうかがポイントになると思われます。




北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月15日付ヘッドライン

■浮沈をかけ「春商戦」 油外増販で油販穴埋め
■昨年も自主廃業375件 人材難主因 中央会調査
■過去10年で最少 27件 札幌での危険物施設等事故
■災害対応能力強化事業 石油協会が補助申請受付け
■成約率など前年上回る USSの2023年度中古車オークション