令和元年に石油販売事業者は何をすべきか
2019.4.20
出光昭和シェル誕生で期待される良好な収益環境の継続
 「令和」への改元をちょうど1カ月後に控えた2019年4月1日、出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社が経営を統合し「出光昭和シェル」(トレードネーム、商号は「出光興産株式会社」)が誕生しました。石油製品市場にはまだ大きな変化は見られませんが、出光昭和シェルは、経営統合後3カ年で5000億円の純利益を稼いで、その半分以上を株主に還元すると公約しています。

 出光興産の17年度の親会社に帰属する当期純利益は1623億円(在庫影響除き1405億円)、昭和シェル石油の17年度の当期純利益は427億円(在庫影響除き258億円)でしたので、出光昭和シェルの17年度の在庫影響を除いた当期純利益の水準は1500~1600億円だったと推定されます。

 石油製品の国内需要が減少傾向で推移する中で、向こう3カ年の利益目標を達成するためには、経営統合3年後に年600億円を目標としている効率化を推し進めるだけではなく、石油事業の収益環境を維持・改善する取り組みが必要になると考えられます。

 その主な内容は、JXTGエネルギーが成果を上げた施策と同様、①業転市場及び商社・一部特約店への安値での製品供給を削減すること、②販売子会社や主要特約店に採算販売を徹底することなどになると予想されます。

 JXTGエネルギーに続いて出光昭和シェルが収益環境の改善に取り組むと、石油事業の収益環境は良好に推移し続けると見込まれます。

 ただし、17年以降の卸売及び小売マージンの動向、ガソリンの海外市況との値差などを考慮すると、卸売及び小売マージンが全国的にさらに改善するとは考えにくく、市況の改善が期待されるのは、現時点において、依然相対的に割安な価格で製品を調達できていると推察される一部の販売事業者や安売志向から脱却することができない一部の量販事業者の廉売によって市況が低迷し続けている地域に限られるのではないでしょうか。

 また、ガソリン、灯油、産業用燃料などの国内需要は減少傾向で推移すると予想されますので、余剰供給能力を抱えているJXTGエネルギーと出光昭和シェルが国内向け供給能力を削減できなければ、市況が崩れる可能性もあると考えられます。


販売事業者に求められる対策
 石油販売事業者は、良好な収益環境が続くと予想される中で何をすべきでしょうか。ガソリンをはじめとする石油製品の需要減少が続くと予想されますので、多くの石油販売事業者にとって重要な課題は、石油製品の販売量に拠らずに収支を改善できる対策になると思われます。資金を投じて中長期的な視点に立った収益改善策に取り組むことも検討すべきではないかと思われます。

 例えば、合理化・効率化につながる投資を行うことで、コストを低減して収支を改善できるケースもあると思われますし、石油製品以外の事業を強化したり、事業を複合化したりすることも一考の余地があると思われます。

 石油販売事業者にとって本業ともいえるカーケアビジネスの経営環境は急速に変化しています。

 例えば、自動車の構造の変化や自動車メーカーのユーザー囲い込み戦略などによって、石油販売事業者が点検・整備できる車種が絞り込まれつつありますので、SSの店頭では、点検・整備に関して、選択的なアプローチ、スムーズで効果的な提案、質の高い作業の提供、顧客の囲い込みなどが重要になると思われます。近年、機能や使い勝手が著しく進化している顧客情報の管理・提案ツールの導入・活用を検討することも一案と思われます。

 すべての自動車ユーザーに提供できる、洗車・コーティング・リペアなどのカーケアサービス、タイヤ・アクセサリーパーツ・消耗品などの販売、自動車の買い取り・販売・リースなどの自動車関連ビジネスにおいては、常に多くの自動車ユーザーと触れ合っているSSの優位性が崩れるとは思えません。

 取り組み次第で収益を拡大できる可能性が高いこれらの事業にどのように取り組んで成果を上げられるかが、SS事業における重要な課題になると思われます。

 コンビニエンスストアなどの複合SSの成否は、複合業態の立地環境と取り組みによって左右されることが多くなっていますので、SSの複合化は「併設」ではなく「業態転換」として取り組むことが肝要と思われます。

 当面、良好な収益環境が続くと見込まれる向こう3カ年は、石油販売事業者において将来に向けた事業戦略に取り組む好機です。石油業界では、変化を拒んだり、既存の取引先との関係を重視しすぎたりするケースが少なからず見受けられますが、先んじて取り組むことが成否を分けるケースが多い新規事業・ツール・システムなどに新たに取り組むことも検討すべきと思われます。


北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月20日付掲載予定

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