JXTG以外はまだ示せていない生産・供給体制再構築に向けた具体策
2019.9.20
石油製品のマージンのトレンドの変化は需給によってほぼ説明できる

 石油業界では、87年度~91年度、及び96年度~01年度の2段階に分けて規制・制度改革が実施されましたが、特石法(特定石油製品輸入暫定措置法)の廃止、品確法(揮発油等の品質の確保等に関する法律)の施行、石油備蓄法の改正など、第2段階の規制・制度改革が始まった96年度以降の石油製品の精製・販売マージンの変化とその時期に起きていた主な事象を照らすと、マージンのトレンドが変わった時期のほとんどを石油製品の需給とその背景にある需要と供給能力のギャップの変化によって説明することができます。

 例えば、原油処理量と原油処理能力から計算される設備利用率の09年度から18年度にかけての10年間の平均は81・6%、点検・補修等で停止している設備の能力を除いた実稼働率の平均は89・4%でした。もっとも実稼働率が高かったのは17年度で95・1%、18年度も93・8%と高水準となり、過去2年間はほぼフル稼働といえる状況でした。

 17年度、18年度に高い精製・販売マージンが確保された理由のひとつは供給能力と需要と卸ギャップが小さかったためと考えられるのです。

JXTG以外は生産・供給体制再構築に向けた具体策を示していない

 石油製品の国内需要が減少傾向で推移する中、良好な収益環境を維持し続けるためには、製品輸出の拡大、石化製品への生産シフトなどに取り組むとともに、大きな過剰能力を抱えないように精製設備の集約を適時進めていく必要があると思われます。

 ただし、17年3月末に期限を迎えた高度化法(エネルギー供給構造高度化法)2次告示への対応のほとんどが公称能力の削減によってなされていますので、本来の設備能力との間には大きなギャップが存在しています。

 公称能力の削減は精製コストの低減につながっていませんので、構造的に収益体質を改善するためには、製品輸出の拡大や需要が拡大傾向で推移する見通しである石化製品への生産シフトに取り組むだけでなく、需給の引き締めとコストの低減を同時に実現できる「精製設備の廃棄」、「製油所の廃止」、「輸出専用設備化」などの対策を講じる必要があると思われます。

 JXTGエネルギーは生産・供給体制再構築に向けた具体策を示しています。①室蘭製造所の生産停止、石油製品物流拠点化(19年4月実施)、②ベトナム・ペトロリメックス社と麻里布製油所における協業の検討(18年4月覚書締結)、③中国石油国際事業日本社との合弁会社の協業運営対象を大阪製油所(原油処理能力115千BD)から千葉製油所(同129千BD)に変更の上、協業継続を検討(19年7月公表)、④大阪製油所の精製機能停止、発電事業所化(20年10月予定)などです。これらの対策が実現すれば、JXTGの収益力は着実に向上すると見込まれます。

 コスモエネルギーは、キグナス石油への供給が始まる20年1月に自社の供給能力に不足が生じると予想されます。このため当面の課題は不足分をどのように調達するかになります。仮に不足分の一部を海外から調達するようになると、国内供給力がその分増えることになりますので、短期的には石油業界全体の収益環境にはマイナスに働く可能性があります。

 一方、出光昭和シェルは、まだ生産・供給体制を抜本的に強化するための具体策を示していません。経営統合で先行し、収益力が着実に高まっているJXTGに対峙していくためには、現在公表されている経営合理化計画の前倒しと深掘り、販売並びに生産・供給体制の再構築に向けた対策が必要になると思われます。

 なお、20年1月にIMOによる船舶用燃料の硫黄分規制が強化されることで、脱硫装置の能力による供給制約が重油及び中間留分に発生する可能性があります。

 残渣油脱硫装置の新増設、原料油の低硫黄化、船舶用燃料油への低硫黄燃料油のブレンド、精製方法の改良による生産得率の調整などの対応により、長期間にわたって不足が生じることはないと予想されますが、短期的には、船舶用燃料だけでなく、軽油や産業用燃料の需給に少なからぬ影響を及ぼす可能性があると考えられます。


北海道のガソリン価格予想
4月29日(月)から5月5日(日)まで
価格下降
仕切り価格値下げのため

04月30日付掲載予定

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