石油販売事業者にとって今が事業構造改革の好機
2019.5.20
石油の拡販に頼らない事業構造の実現を
  石油販売業界は、一昨年誕生したJXTGエネルギーが採算重視の販売政策を徹底するようになったことなどをきっかけに、それ以前に比べると良好な収益環境が維持されるようになりました。今春、出光昭和シェルが誕生したことで、当面、好環境が維持されると見込まれますが、ガソリンをはじめとする石油製品の需要が減少傾向で推移する状況が変化したわけではありません。

 よって、石油販売事業者にとって重要な課題のひとつは、石油製品の販売量の拡大に拠らずに高い収益を確保できる事業構造に転換することと思われます。そのためには経営の合理化・効率化に取り組むとともに、石油製品以外の事業を強化したり、事業を複合化したりすることを検討すべきでしょう。

 多くのSS事業者にとって本業ともいえるカーケアビジネスの経営環境は年々変化し続けています。自動車の構造の変化や自動車メーカーのユーザー囲い込み戦略などによってSS事業者が点検・整備できる車種が絞り込まれつつあり、カーケアビジネス全般でカーディーラーがシェアを拡大しているのがその一因です。点検・整備に関しては、車種やお客様のニーズを考慮した選択的なアプローチ、SS店頭以外での集客、スムーズで効果的な提案、質の高い作業の提供、顧客の囲い込みなどがより重要になったと思われます。

 電気自動車を含むすべての自動車のユーザーに提供できる洗車、コーティング、リペア、車内清掃・洗浄などのカーケアサービス、タイヤ、アクセサリーパーツ、消耗品などの販売、自動車の買い取り・販売、リース、自動車保険といった自動車関連ビジネスにおいては、ロードサイドで常に多くの自動車ユーザーと触れ合っているSS事業者の優位性が崩れることはありません。要は取り組み次第です。

 次々に提供される新しい事業に関しては、①正確な情報の収集と評価、②自らの経営資源と照らして将来性があると思われる事業への先んじた取り組み、③努力と工夫、④成果が上がらなかった場合の早めの見切りなどが求められます。

 お客様への提案力を高めるためには、機能や使い勝手が近年著しく進化しているタブレット端末等を用いたシステムの導入・活用を検討することも一案と思われます。


求人難に対応するためには営業時間の適正化を
 石油販売業界に限らず多くの産業に共通な課題となっている求人難への対処も重要と思われます。そのためには、合理化・効率化につながる省力化投資を行ったり、就業体制を見直したり、営業時間を適正化することなどが必要と思われます。

 24時間営業の代名詞ともなっているコンビニエンスストア(CVS)にさえ営業時間を見直す動きが見られるようになっています。C
VSでは深夜時間帯に店舗の清掃・メンテナンス、商品陳列、商品在庫管理などの作業が行われていますが、SSではこのような作業に長時間を要することはありません。

 時間別の来店客数や業務量を考慮して営業時間を短縮したり、スタッフの業務内容を見直したり、時間帯別の要員配置を工夫したりすることが必要でしょう。


十分な利益が確保できていなければ業態転換や廃業等の検討が必要
 規制緩和・自由化をきっかけに石油業界の事業環境が変化した90年代半ば以降の石油販売業界の収益の変化と照らすと、収益環境のさらなる改善を期待することは難しいと思われます。

 したがって、現状で十分な利益が確保できていない場合には、思い切った構造改革、業態転換、事情によっては廃業も検討すべきでしょう。

 SSの代表的な業態転換であるコンビニエンスストア(CVS)などとの複合店舗化は、後戻りすることが難しい業態転換と考える必要
があります。そもそも、フランチャイズ展開されているCVSなどを開設できるかどうかは、フランチャイザーであるチェーン本部の判断
に委ねられますので、石油販売事業者の希望が通るかどうかは分かりません。

 そして、CVSなどとの複合SSの成否は、SS側ではなく、複合業態側の立地条件と取り組みによって左右されることが多くなってい
ます。SSの複合化は「併設」ではなく「業態転換」と認識して取り組むことが肝要なのです。

 なお、SSとの複合店化で最も成果が上がっているCVSは、過去5年間の既存店成長率の平均値がほぼゼロ、年間の廃業数が数千店に及ぶ、必ずしも成長しているとは言えない、競争が激しい業態です。

 レンタカー、フードサービス、クリーニングなどは、さらに競争が厳しい業種ですので、CVSと比べても片手間で取り組んで成功する
ような業態ではありません。繰り返すようですが、業態転換は後戻りがききにくい選択だと考える必要があるのです。
 業績が好調な時期でなければ思い切った事業構造改革、先行投資、業態転換などを実施するのは難しいと思われます。石油販売業の収益環境が良好に推移している期間は将来に向けた事業戦略に取り組む好機です。

 石油販売事業者の中には、変化を拒んだり、既存の取引先との関係を重視しすぎたりするケースが少なからず見受けられますが、新しい事業・ツール・システムなどは、先んじて取り組むことが成否を分けるケースが多くなっています。


北海道のガソリン価格予想
4月22日(月)から4月28日(日)まで
変わらず
仕切りにより、値上げも

04月25日付ヘッドライン

■膨らむ期待GW商戦 一気呵成の「挽回」期す
■「失敗は有効解導く手段」 札危協保安研修会で三田薫氏講演
■石販業者への配慮明記 官公需「基本方針」が閣議決定
■保有率77.6%、小幅減少 自工会が乗用車市場動向調査
■好調油販さらなる拡販に照準 フルの強み生かし道エネ環状通SS