原油価格の急落がすぐに需給の 改善につながるわけではない
2018.12.20
需要の大幅な減少には機器・システムの更新が必要
 石油の需要分野の多くは、たび重なる原油価格の高騰、将来的な供給不安、天然ガス・石炭などとの相対価格の変化、新しい技術の開発や進化などを反映したエネルギー需給構造の変化によって、性質やコストなどから他のエネルギーによって代替が効きにくい分野に収れんされています。自動車、船舶、航空機などの輸送用燃料がその典型です。

 このような分野で、他のエネルギーに転換したり、利用効率を大きく高めたりするためには、エネルギー利用機器・システムの更新が必要になります。

 一方、使用を控えたり工夫をしたりすれば、消費量を節約することができます。これは石油製品の価格が急騰した局面でまま見られる動きですが、機器・システムが更新されない限り、その効果が長続きすることはありません。

 これらが、原油価格の変化そのものが需要にすぐに大きな影響を及ぼさない背景事情です。

原油価格と石油掘削リグの稼働基数との間に見られる数カ月のタイムラグ
 原油の供給量は、価格が変化してすぐに増減することはなく、タイムラグが生じることが多いことが判ります。例えば米国の原油価格と石油掘削リグの稼働基数の変化を比較すると、数カ月のタイムラグがあることが判ります。具体的には、07年~09年の原油価格の急騰急落時期を例にとると、原油価格は、07年7月に史上最高値を付けた後に急落し始めましたが、リグの稼働基数が減少に転じたのはその約5カ月後の12月でした。一方、08年2月に原油価格が底入れして上昇傾向に転じましたが、リグの稼働基数が増加に転じたのは約4カ月後の6月からでした。

 米国では、その後、シェール資源の開発が積極化してリグの稼働基数が急増しました。ところが、14年後半に原油価格が急落した局面でリグの稼働基数が急減し、16年に原油価格が底入れして上昇傾向に転じてからリグの稼働基数が増加した時期にも、原油価格の方向性が転じてからリグの稼働基数が変化し始めるまでに数カ月の期間を要していました。

 このようなタイムラグが生じる理由は、開発に着手してから生産に移行するまでの期間、開発や生産における損益分岐点、損益分岐点における総コストとキャッシュコストの違いなどによると考えられます。

 価格が下落傾向にあっても、十分な採算が見込める水準であれば、開発は継続されて生産量が増加することがあります。しかし、すべてのコストを回収できるめどが立たなければ資源開発は行われにくくなります。ただし、開発が行われなくなっても、価格が生産に要する直接コストを上回っていれば生産は続けられます。

 今年10月以降に原油価格が急落しましたが、前述した経験則から推測されることは、政策的な判断が働かない限り、原油の供給が減少に向かうまでには数カ月の期間がかかり、その間、需給は引き締まりにくい状況が続くと予想されることです。

 OPECと主要産油国が、12月7日に、今年末が期限だった16年10月生産実績比で180万BD(日量バレル)の協調減産を、来年1月以降120万BDに見直して継続することで合意しましたが、現在の原油価格の水準はこの協調減産に参加するほとんどの国のキャッシュコストを上回っています。経済原則に従うなら、価格の下落を量の拡大で補おうとするのは当然の対応です。生産を抑制して需給を引き締めるのは容易ではないと予想されるのです。


原油価格の急落が需給に明確な影響を及ぼすのは数カ月後
 このように原油および石油製品の価格の変動が、需要、供給に与える影響を相関関係から調べると、すぐに影響を及ぼしたり、影響が生じるまでに時間がかかったり、影響が生じなかったりするなど、影響の出方が価格の水準によってもかなり異なることなどが判ります。

 今回、原油価格が急落した局面では、米国における原油在庫の積み上がり、ガソリンなど石油製品需要の伸び悩みといった需給の緩みも下落理由として指摘されていました。

 原油価格の急落がすぐに需給の引き締まりにつながるわけではなく、需給や経済性などファンダメンタルズ面から原油価格が押し上げられるようになるまでには、数カ月単位の期間を要すると予想されます。原油価格が再び高値を目指すまでには少し時間を要する可能性があると思われます。


北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月20日付ヘッドライン

■広がる困惑、失望感 対量販構図変わらず 札幌市場
■昨年度、減少に転じ17件 危険物取扱者の違反行為
■3月決算組「まずまず」 収益環境の良化が支える
■消費、供給ともに減少 2022年度エネルギー需給実績
■42%が「月に1回以上」 GfKJapanが洗車で調査