歴史的な自然災害の被災地を支え続けた石油とLPガス
2018.9.20
日本列島を揺るがす大然災害が相次いだ今夏
 豪雨、台風、地震に被災された皆様とその関係者の方々に心よりお見舞い申し上げます。

 7月初旬に起きた「平成30年7月豪雨」は、全国で土砂崩れや浸水などの災害を引き起こしました。9月4日に上陸した「平成30年台風21号」は、関西地方に甚大な被害をもたらしました。いずれも製油所・油槽所に被害はありませんでしたが、多数のSSが土砂崩れや冠水によって営業停止に追いやられました。 エネルギーインフラで最も大きな被害が発生したのは電気で、台風21号は電柱約1千本をなぎ倒し、関西電力の供給エリアで延べ約218万3千戸が停電しました。

 そして9月6日に北海道を襲った「北海道胆振東部地震」では、大規模な土砂崩れや液状化現象が発生するなど甚大な被害が発生しました。

 エネルギー関連設備では、震源地近くの出光興産北海道製油所が緊急停止し、石油製品の出荷も一時止まりましたが、設備はほとんどダメージを受けず、道内の油槽所・SSなどの石油関連設備、ガス関連設備も大きな被害を受けませんでした。

 ところが北海道全域で延べ約295万戸が停電するなど、電力供給には甚大な影響が生じました。

 北海道胆振東部地震による「北海道大停電」は、震源地近くの厚真町に立地する北海道最大の火力発電所「苫東厚真発電所」が被災して停止したことをきっかけに起きました。苫東厚真発電所の出力は165万kWと、地震発生直前に営業運転されていた北海道電力の全電源の供給力合計396万kWの4割強を占め、地震発生直前の北海道の電力需要約283万kWの6割近くを供給していたからです。

 なぜ北海道全域に及ぶ大停電が起きたかは、発生した事象、データなどを、時系列を追って詳細に分析しなければ解明できませんが、現時点で明らかになっていることは、供給量の半分以上を占めていた発電所が緊急停止したため、異常な負荷がかかりそうになった他のすべての発電所で発電設備の停止あるいはネットワークからの切り離しを余儀なくされた結果、連鎖的に全道停電が起きたということです。

憶測や事実関係を無視した論評は慎むべき
 北海道大停電に際して「泊原子力発電所が動いていれば」、「再生可能エネルギーの導入がもっと進んでいれば」、「分散型電源の導入が進んでいれば」今回のような大規模長期停電は避けられたのでは、といった「たられば」の意見がインターネット上のSNSで拡散され、新聞やテレビなどのマスメディアでも一部の有識者や記者の見解として報道されています。

 確かに、今回の地震であれば泊原子力発電所の発電設備が一基でも運転されていれば、停電が避けられた可能性はあったと思われますが、泊原子力発電所は運転されていませんでしたし、すぐに稼働できる状態でもありませんでした。

 「再生可能エネルギーの導入がもっと進んでいたら」、「分散型電源の導入が進んでいたら」といった意見は、経済性や地域全体の供給安定性確保の面で問題のある意見ですし、これも現時点では実現できていません。 今後明らかにされる検証結果に基づいて、対策を検討する際にはこれらの意見を考慮することも必要と思われますが、検証が行われる前に、現実と異なる前提に基づいた憶測で論評することは慎むべきと思われます。

 また、福島原子力事故を例えて、原子力発電所のリスクを唱える報道や意見も目につきました。これらは事実に基づかない「煽り」であり、「たられば」以上に慎むべき言動と思われます。


被災地の暮らしを支え続けた石油とLPガス
 今夏の大規模自然災害においても、被災地の暮らしと経済活動を支え続けたエネルギーは石油とLPガスでした。ガソリンなど石油製品の供給は、一部SSにおける冠水・土砂崩れなどの被災、道路の損壊や交通事情の悪化による配送不能、そして停電などにより、一時給油ができなくなったことがありましたが、自動車や石油機器は、燃料を搭載していますので、その燃料を使い切るまで使用でき、大半の石油利用機器は、被災地で利用され続けていました。

 北海道大停電の際には、工事現場でディーゼル発電機を動かして携帯電話・スマートフォンなどを充電している様子が報道されていましたが、自家発電設備の多くは石油を燃料にしています。

 発電機を積んだハイブリッドカー(HV)、プラグインハイブリッドカー(PHV)などは、搭載した燃料を使い切るまで自動車としてだけでなく、電源としても使用することができます。実際に停電が長引いた関西や北海道などではそのように使われていました。

 LPガス機器も、建物とともに設備が損傷したケース以外では、電源が必要でない機器は使用し続けることができています。

 石油とLPガスは、わが国のエネルギー政策の中で明示されている「エネルギー供給の最後の砦」であることが今回も証明されたのです。しかし、このような事実はほとんど報道されず、解説もされず、クローズアップされることもありません。 石油・LPガス業界は、事実に基づく正しい情報を積極的に発信し続ける必要があると思われます。 


北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月20日付ヘッドライン

■広がる困惑、失望感 対量販構図変わらず 札幌市場
■昨年度、減少に転じ17件 危険物取扱者の違反行為
■3月決算組「まずまず」 収益環境の良化が支える
■消費、供給ともに減少 2022年度エネルギー需給実績
■42%が「月に1回以上」 GfKJapanが洗車で調査