SSで取り組むべき経営改善策について
2018.6.13
経産省の「次世代燃料供給インフラ研究会」の報告書を考察すると
 経済産業省の「次世代燃料供給インフラ研究会」が6月5日に報告書(案)を公表しました。同案では、燃料供給を取り巻く環境変化と直面する課題として、人口減少、技術革新、エネルギー情勢変化が挙げられています。

 人口減少の影響として、過疎化と人手不足の深刻化が示されています。いずれも現在直面している重要な課題ですが、同じ理由によるものではありませんので、対策は分けて考えるべきと思われます。

 人口減少地域や過疎地では経営を維持するために必要と思われる顧客数を維持することすら難しくなりつつあります。この問題に関しては、15年に「SS過疎地対策協議会」が設立されて、別途検討が進められていますが、SSの運営費の相当部分を占める人件費を抜本的に抑制できるようにするため、例えば安全を十分に確保できる設備基準を満たせば、危険物取扱者による常時監視の規制を緩和したり、社会問題としてとらえて公共事業化し、助成金を支給したりするなどの対策が考えられます。

 人手不足に対しては、SSの求人難が他の流通・サービス業より厳しいことを踏まえると、これまでSS業界では多くの事業者が積極的に採用していなかった中高年の女性、高齢者、外国人などへの雇用対象の拡大、新しい人材を生かせるような事業・業務内容への見直し、要員削減につながる運営方法への変更、営業時間の短縮・営業日の削減といった対策が有効と思われます。

 生産性の向上に関する提言内容は、すべて実施されているものばかりで新規性はありません。この項に限らず「IoT等の技術の活用」が各項で提言されていますが、例示されているオンデマンド等の需要家側の要求にこたえたサービス、自動車や消費者に関するデータの活用、他の流通・物流サービスとの連携などは、IoTの形態によらず、すでに多くの事業者が導入しています。比較的コストのかさむIoTの導入は、SSの現場のオペレーションと照らすと必ずしも有効ではないように思われます。すでに実用化されているタブレット端末を用いた顧客のデータベース化、データベースマーケティングなどで十分に対応できると考えられます。

 燃料次世代化への対応の中長期的な対策として、電気自動車(EV)の充電インフラの設置や水素ステーションへの対応が示されています。これらは、EVの普及、水素エネルギー社会の実現を説いているエネルギー基本計画との整合性を取る上で必要な項目かもしれませんが、いずれもSSの経営改善につながるとは思えません。

 EV充電インフラは、すでに広範に整備されていますが、さらに設置対象が拡大する見通しですし、EVへの充電は主に駐車時に行われています。この分野でSSが優位に立てるようになるとは思えません。SSに充電設備を設置すれば、洗車、ボディやウィンドウのコーティング、リペアなどボディケアの見込み客を呼び込む効果は期待できますが、スペースに余裕があれば設置する程度の対応で十分と思われます。

 水素は、体積当たりのエネルギー密度が低く、取り扱いが難しく、貯蔵・輸送コストが嵩みますので、供給設備や利用機器のコストを大幅に引き下げるのは難しく、燃料電池車(FCV)が大々的に普及するとも思えませんので、SS事業者が取り組むべき対策ではないと思われます。 

有効な経営改善策の多くはすでに取り組まれている
 私は、90年代半ばに、銀行や郵便局でしか行われていなかった税金・公共料金・電話料金等の収納や、産直品の取次などの無店舗販売事業や宅配便の取次などの新規事業の導入を提案したことがありました。SSは当時、国内で最大の店舗数のネットワークを全国展開しており、多様な決済手段を持ち、大きな荷物の配送・受取のための駐車スペースを確保できるといった強みを持っていたからです。

 宅配事業に関しては、垣見油化の垣見裕司社長が「あずかロッカー」の名称で受取業務を実用化しましたが、業界全体には広がりませんでした。他のサービス事業は、元売や大手の販売業者に検討していただいたものの、導入していただけませんでした。その一因は、当時SSの収益環境が良好で、新たな事業を展開するインセンティブが小さかったためと思われます。ちなみに、これらの事業は、現在、コンビニエンスストア(CVS)の集客に少なからず貢献しています。

 立地環境や敷地などの条件が満たされていれば、CVS、フードサービスショップ(FSS)、クリーニング店などと複合化し高収益化できること、複合化の成否は主に異業種の立地条件に左右されると考えられ、複合店の経営の主体は異業種店になるケースが多いと想定されること、複合化するだけで収益が上がるかどうかは分からないことなどを提言させていただきました。また、ショッピングセンター(SC)やホームセンター(HC)の敷地内あるいは隣接地への出店は、SSにとって集客力の高い好立地ですので、成功する可能性が高いと示唆させていただきました。これらの推論は的確だったと思われます。

 燃料供給にかかわる事業者によらず、あらゆる事業の環境は常に変化しており、各事業者がその変化を考慮しながら対応を進めています。すでにSS業界で成果が上がっている事業以外で、今後SSで展開して高い収益を得られると思われる事業は限られています。要は、中長期的にみても、できることに着実に取り組み続けることが重要なのです。



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4月29日(月)から5月5日(日)まで
価格下降
仕切り価格値下げのため

04月30日付掲載予定

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