求人難は企業成長の好機
経営課題など見直しも
2018.1.30
 業界を問わず「人手不足」が深刻の度を増している。有効求人倍率が1・5倍強と、バブル期を超える高水準で推移して完全な売り手市場となっているからか、あの手この手の募集にも反応はサッパリ。石油業界でもローリー運転手の確保にすら事欠く状況で、使命とされる安定供給を危うくもさせる。ただ、そうした中でも求人難を「企業が変革し、成長するためのチャンス」ととらえた取り組みが出始めている。経営課題や業務の見直し、働き手の目線に立った職場環境づくりなど「嘆くより前を向く」ことで乗り切っていこうというものだ。

 政府は19日、1月の月例経済報告を発表。国内景気に関する判断を、前月の「緩やかな回復基調が続いている」から「緩やかに回復している」へと引き上げた。個人消費が上向いてきていることや、雇用情勢が改善しつつあることなどを背景としたもので、判断の上方修正は昨年6月以来7カ月ぶりとなるが、この雇用情勢が曲者だ。

 昨今の有効求人倍率は1・5倍強と、バブル期を超える高水準で推移しており、完全な売り手市場となっている。そうしたことの反動で建設業やサービス業、製造業、小売業などでは募集しても応募がないという、いわゆる「求人難」型の人手不足が恒常化。それを主因とする倒産も増えているのが現状だという。

 石油業界も例外ではなく、ハローワークや求人情報誌で募集をかけても反応はサッパリ。人手不足の恒常化は、サービスの低下やスタッフの過重労働などにつながることが考えられ、ローリー運転手の確保にも事欠く状況は、使命とされる燃料油の安定供給を危うくもさせる。

 中小企業庁では、こうした問題解決の羅針盤とすべく「人手不足対応ガイドライン」などを作成し、全石連でも昨年12月からインターネット上に求人情報サイト「SS求人ドットコム」を開設しているが、その効果は今のところ限定的。逼迫した事態の打開にまでは至っていない。

 そうした中で、求人難を「企業が変革し、成長するためのチャンス」ととらえた取り組みが石油業界にも出始めている。

 道北で複数のSSを運営する販売業者は、あらゆる方策を駆使しながらも、例にもれず人手不足にあえいでいた。そこで「どうして人が来ないのか」という原点に立ち返り、経営課題や業務の見直し、働き手の目線に立った職場環境づくりに取り組んだという。

 まずは全社員参加のミーティングで、自分の会社の魅力、ダメな部分を書き出してもらい、ダメな部分の改善から着手した。その結果、残業ゼロに向けた「申告制」や柔軟な変形労働制への移行などといった諸施策が誕生。さらに派生して「誕生日休暇」や、新入社員が勤続1年を迎えた時点で紹介者に謝礼金5万円を支払うというシステムも生まれた。

 一方で、魅力については、地元紙やフリーペーパーなどに出す募集広告の「目玉」にしたそう。

 この販売業者の経営幹部は「こうしたことで潤沢に人が集まるとは考えていない。しかし、魅力ある職場でなければ絶対に人は集まらない。現在の社員を含め、少しでも働きがいのある職場にしていきたいと思っての取り組み」だと話す。

 人手不足を嘆くのではなく「来たいと思わせる前向きな取り組み」が今こそ求められる。


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5月13日(月)から5月19日(日)まで
価格上昇
一部に値戻しの動き

05月20日付掲載予定

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