終息のめどが立たない新型コロナウイルスによる影響
2020.3.25
中国以外の国・地域に影響が拡大

 新型コロナウイルスによる重症感染症の集団発生は、中国で収束のめどが立ちつつある一方、感染者の発生地域が世界に拡散し、世界全体の確定感染者数・感染症によって亡くなられた方の数が急増しており、いまだ収束のめどが立っていません。


 WHOが今年1月21日から毎日公表しているNovel Coronavirus(2019─nCoV)Situation Report によると、新型コロナウイルスの20年3月10日18時時点での感染状況は、感染者の確定数が、世界全体11万3702人(24時間で4125人増加)、うち中国8万924人(同20人増加)、中国以外の国・地域3万2778人(同4105人増加)、感染症によって亡くなられた方の人数は、世界全体4012人(同202人増加)うち中国3140人(同17人増加)、中国以外872人(同186人増加)と報告されています。1カ月前の2月10日時点の世界全体の感染者確定数は4万554人(うち中国以外319人)、亡くなられた方の数は910人(同1人)でした。デイリーベースの数の変化をみると、中国の感染者の増加ペースは減少してきましたが、中国以外の国・地域では、発生エリアが拡大し、感染者・亡くなられた方の数ともに急増していますので、世界全体でみると、まだ収束のめどを議論できるような状況ではありません。

 WHO、厚労省、国立感染症研究所などの公表情報によると、新型コロナウイルスによる重症感染症の集団発生は19年11月に中国の武漢市で最初の発症例が報告され、20年1月から武漢市を中心に中国各地で集団発生が起きたとされています。

 新型コロナウイルスによる重症呼吸器感染症の集団発生は、2002年11月に中国の広東省で集団発生が始まった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS)と2012年にサウジアラビアで最初の症例が確認された中東呼吸器症候群(MERS)の2例に加えて今回が3例目になり、コロナウイルスとしては、日常的に人に感染し一般的な風邪の原因になっている4種類を含めると7例目になります。

 WHOによると、SARSは中国や香港を中心に2002年11月から2003年8月にかけて8096人が感染し、37カ国で774人が亡くなり、2003年7月にW
HOによって終息宣言が出されています。2005年以降、感染例は確認されていません。MERSは、2019年11月末までに診断確定患者数が2494人、うち、少なくとも858人が亡くなったとされています。

 今回の新型コロナウイルスによる影響は、先の2例に比べて集団感染が発生している国・地域が格段に広く、感染者や亡くなられた方の人数も桁違いに多いため、世界経済にきわめて大きな影響を及ぼすと予想されます。重症感染症の集団発生が起きている地域と他の地域や国との交流が制約されることになるからです。今回のケースでは、まず中国国内で武漢市など感染症が集団発生している地域と他地域の人の移動が制約され、次いで、世界各国で中国、そして感染者の発生数が多い国・地域などとの交流を閉ざしたり制約したりする動きが広がっています。感染者数が十分に減少してWHOから終息宣言が出されるまで、これらの制約が完全に解除されることはないと予想されます。


原油市況はWHOによる終息宣言が出されるまで低迷が続く見通し

 前回のコラムで、中国の経済規模やエネルギー市場への影響がSARS発生時に比べて格段に大きくなっていると指摘させていただきましたが、感染症が集団発生している国・地域が世界的に広がっていますので、もはや中国との関連性だけで議論することは妥当ではなくなりました。集団発生の終息が遅れると、世界経済、並びに国際市況にきわめて大きな影響を及ぼすと考えられます。

 その影響が最も端的に現れているのが原油市況で、年初に1バレル70ドル近くまで上昇していたドバイ原油のスポット価格は、3月10日時点で30ドル台半ばまで下落しました。

 昨年末に原油相場を押し上げた米国とイランの関係悪化を背景にした中東情勢の緊迫がやや緩和されたこと、新型コロナウイルスによる影響が懸念されたこと、さらに、協調減産を行っている石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど主要産油国で構成する「OPECプラス」内で協調減産強化に向けた足並みの乱れが生じたことなどが、その主な理由です。原油市況は、原油そのものの需給だけで左右されるわけではありませんが、今後、輸送用燃料や産業用燃料需要が落ち込むと見込まれますので、当面低迷が続く可能性が高いと思われます。


石油各社の業績下振れへ

 原油価格の下落は、短期的に、石油各社の業績に大きな影響を及ぼします。

 原油価格の低下に伴って、石油開発事業の収益減、石油製品価格への転嫁と原油コストの低下のタイムラグによる収支圧迫、在庫評価損失の発生などが予想されるからです。

 さらに、新型コロナウイルスの影響は、輸送用燃料や産業用燃料の需要減にもつながっています。

 JXTGや出光昭和シェルでは経営統合によるシナジー効果が着実に積みあがっていますし、元売の集約と販売政策の見直しによって、需給の適正化や安値取引の縮小なども図られ、石油業界の収益体質は改善していますが、石油元売の19年度の業績は、前年に比べて業界全体で数千億円下振れることになると見込まれます。





北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月20日付ヘッドライン

■広がる困惑、失望感 対量販構図変わらず 札幌市場
■昨年度、減少に転じ17件 危険物取扱者の違反行為
■3月決算組「まずまず」 収益環境の良化が支える
■消費、供給ともに減少 2022年度エネルギー需給実績
■42%が「月に1回以上」 GfKJapanが洗車で調査