景気とエネルギー需要との関係~需要急減局面でより重要になる採算販売意識~
2020.4.20
エネルギー需要は価格には左右されにくい

 新型コロナウイルスの感染の拡大が世界経済にきわめて深刻な影響を及ぼしつつあります。感染症流行の終息のめどが立たない現状でどれだけ影響するかを正確に予想することはできませんが、少なくとも、近年、世界経済に最も大きな影響を及ぼしたリーマンショック時のダメージをはるかに上回り、第2次世界大戦後最大の経済危機に陥るのはほぼ確実でしょう。

 景気の変動はエネルギー需要に影響を及ぼします。家庭用などの民生用需要への影響は大きくありませんが、景気の変動は生産、出荷、物流、販売に反映されますので、後述するように産業用・業務用エネルギーの需要が景気変動の影響を受けるからです。

 エネルギーは経済活動や暮らしの基盤をなす必需品です。このため、価格の変動は趨勢的にエネルギーの需要に大きな影響を及ぼしません。石油製品は、需要家が利用機器に備えられたタンクなどに、ある程度ストックすることができますので、事前に価格の変動が予測できる際には、価格低下前に買い控え、上昇前に買いだめが起きることがありますが、消費増税時のガソリン販売量の増減を見れば分かるように、前後1~2カ月で短期的な需要変動はほぼ調整されて平準化されます。電力や都市ガスは、大容量の蓄電設備やタンクを備えていない限り、需要家側でストックすることができませんので、価格の変動が需要に影響を及ぼすことはほとんどありません。

 原油価格が、新型コロナウイルスによる重症感染症流行の影響やOPECプラスの崩壊リスクなどを背景に急落していますが、これがエネルギー需要に大きな影響を及ぼすことはないと考えられます。 


民生用エネルギー需要を左右するのは天候、利用機器の普及率と燃費効率の変化

 民生用エネルギー需要に影響するのは、短期的には空調や給湯の需要に影響する気温・水温の変動、中長期的には自動車や暖房・給湯機器など利用機器の普及率と燃費です。利用機器の使用量は、並行利用される機器が導入されたりしない限り大きく変わることはありませんので、後者は緩やかに影響を及ぼします。

 自動車を例にとると、新車の販売台数は登録台数の約7%でです。登録台数はほとんど変化していませんので、新車と廃車の燃費差が需要に影響を及ぼすことになります。廃車される車と新車の燃費に平均30%の差があったとすると、30%と7%を掛け合わせた2・1%分、年平均で需要が減少する計算になります。 

産業用・業務用エネルギー需要は景気変動を反映する

 産業用・業務用エネルギー需要は景気に左右されます。実質GDP成長率と産業用・業務用向けの大口電力、都市ガスの産業用の需要の伸び率には相関性が見られ、実質GDP成長率が1%増減すると大口電力需要が約2~3%増減する傾向が見られます。

 産業用ガスの需要もほぼ同様で、実質経済成長率が1%変動すると伸び率が2~3ポイントシフトする傾向が見られます。リーマンショックによる急激な景気悪化とその反動によって経済成長率が大きく減増した2008年~2010年にもこれらの関係は崩れませんでした。

 東日本大震災後の2011年から2013年にかけての時期には、ガスコージェネレーションシステムなどの自家発電設備の導入が進んだ影響で、電力需要が下振れし、ガス需要が上振れしましたが、2013年以降は、前述した経験則が再現されています。

需要急減局面でより重要になる採算販売意識

 石油製品の産業用・業務用は用途に偏りが見られますので、経済成長率との間に電力やガスのような相関性は見られませんが、景気動向に左右されることに変わりはありません。

 また、需要変動による事業者の収益への影響は、料金体系が規定されている電力やガス業界では、販売量減に伴う限界利益の減少分にとどまるのに対して、石油業界では、数量減による減少にとどまらず、需要の減少が需給バランスを悪化させたり、販売競争を激化させたりしてマージンの縮小につながるリスクもあります。

 そうしたことから、需要が急減する局面では、通常時に比べて需給バランスの維持、採算販売の徹底などに、より一層の注意を払う必要があると思われます。


北海道のガソリン価格予想
4月29日(月)から5月5日(日)まで
価格下降
仕切り価格値下げのため

04月30日付掲載予定

■「採算販売」最優先に 北石連・商理事会が総会提出議案承認
■「まずは技術力磨け」 HNCが勝ち組SS応援セミナー
■基本方針への準拠求める 官公需で経産省が都道府県知事に要請
■LINEでショップカード 道エネチャレンジ西野3条SS
■油販増大へ集客策次々 東日本宇佐美セルフ山の手通宮ノ丘SS