価格下落と供給量減少のタイムラグが原油市況の回復を遅らせる
2020.5.20
WTI原油先物のマイナス価格は特異な事例で現物の取引価格に直接影響することはない  

 ニューヨーク商品取引所(NYMEX)でWTI原油先物の期近価格がマイナス価格を記録しました。20年5月限月物の取引価格が、最終決済日を翌日に控えた4月20日に、一時、1バレル当たりマイナス40・32ドルまで急落し、その日の取引をマイナス37・63ドルで終えたのです。マイナス価格とは、原油の売り手が買い手に代金を支払って引き渡すことを意味しますので、極めて異例の事態に陥ったのです。

 マイナス価格となった理由は以下の通りです。

 原油先物取引は、決済期日の異なる複数の取引が行われており、それぞれの取引に特定の受渡期日「限月」が設定されていますが、期日に売り・買いのポジションを保有しているプレイヤー間で現物を受け渡して決済されるルールになっています。原油先物取引には、現物を取引しない投資家が多数参加しており、取引高の大半を占めていますが、これらの投資家は、各限月物の最終取引日までに決済をしてポジションを解消します。 WTI原油先物取引の現物受渡は、通常、米国オクラホマ州クッシングにある貯蔵施設で行われます。米国エネルギー省の統計によると、4月10日時点でクッシング周辺の原油貯蔵施設には約5千5百万バレルの原油が貯蔵されていましたが、需要の急減に伴って在庫が急増し、5月中にクッシング周辺の貯蔵能力の限界(推定8千万バレル弱)を上回ってしまいかねない状態に陥っていました。貯蔵限界を超えると、原油を受け渡されたプレイヤーは多額のコストを負担して他の場所に原油を運んで貯蔵しなくてはならなくなりますので、貯蔵能力の制約から事実上買い手がつかない状態になり、20年5月限月物の売りポジションを保有していた投資家が、異例のマイナス価格、すなわち代金を支払ってポジションを解消せざるを得なくなってしまったのです。

 先物取引価格がマイナスになったのは現在のNYMEXの取引ルールに起因する特異な事例であり、取引ルールが異なる北海ブレント原油など他の現物先物取引においてマイナス価格が成立することはありません。

 また、NYMEXのWTI原油先物の取引価格は、シェールオイルの増産によって米国の原油生産が急増し、米国内の原油需給が緩みやすくなった2010年末頃から、性状や硫黄の含有率などを考慮すると、他の原油に比べて著しく割安な価格で取引されるようになり、事実上指標原油としての役割を失っていましたので、4月につけたマイナス価格が原油の現物取引価格に直接影響を及ぼすことはないと考えられます。



原油市況が低迷し続けるわけではないが、急落以前の水準への回復には時間を要する見込み

 20年5月初旬現在の原油価格には、原油生産設備の閉鎖による供給能力の縮小はすでに織り込まれており、市場では、いつどのような規模で生産量が減少するかが注目されています。

 原油の供給能力がすぐに縮小することはありませんし、生産量が短期間で大幅に減少することもありません。石油掘削設備は、投資をしなくても一定期間生産能力は維持されますし、探鉱・開発費、減価償却費、管理間接部門のコストなどの固定費を含まない変動費の単価が原油の現物取引価格を下回らない限り、キャッシュベースでは赤字になりませんので、生産が続けられるからです。

 原油価格が著しく低下すると、変動費単価が高い生産設備は停止されます。さらに、生産量を維持するための投資や費用の支出、探鉱・開発投資などが抑制されますので、生産能力は縮小していきます。

 3月下旬から米国で生産コストが高いシェールオイルの生産設備の停止が広がっていますが、過去の原油価格と米国の石油掘削リグの稼働基数の相関性をみると、リグの稼働基数は、原油の価格水準によっては原油価格と相関性が見られず、価格が低下してもすぐに減少するわけではないことが分かります。

 世界各国で行われている新型コロナウイルスの感染予防対策による経済活動や人の移動の制限が緩和されるようになれば、原油の需要は回復に向かい、5月以降に起きると予想される供給量の削減による効果と相まって需給が徐々に引き締まり、原油価格は異常な低水準から脱却すると予想されます。ただし、急落以前の水準まで値を戻すのは、急激に積み上がった原油および石油製品の在庫が適正水準に減少するめどが立ってからになると見込まれます。


北海道のガソリン価格予想
6月1日(月)から6月7日(日)まで
変わらず
仕切り価格次第では値上げの可能性も

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