マーケティングの工夫が必要な石油業界
2020.6.20
 経営において、時流をどのようにとらえて将来に活かすかは常に大きな課題です。新型コロナウイルス感染症の大流行と感染防止策による影響もそうでしょう。生活や働き方に大きな影響を及ぼしており、その中には今後定着すると思われる変化も少なからず見受けられるからです。商品の購入方法やサービスの利用方法の変化がその代表格で、近年生じていた変化と併せると、特にマーケティング面での工夫が必要になっていると考えられます。


 従来型の主なマーケティング手法には、コミュニケーション(対話型)マーケティング、マス・マーケティング、店頭告知やチラシの配布などがあります。

 コミュニケーションマーケティングは、店頭、電話、訪問などでお客様と直接コミュニケーションをとって販売したり、お客様とコミュニケーションを通じて信頼関係を築いたりすることによって商品の購入やサービスの利用を促すマーケティング方法です。コミュニケーションマーケティングでは、会社、組織、営業担当者などの経験・ノウハウがポイントになります。

 マス・マーケティングは、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアを通じてすべての消費者に対して同じ方法で広告したり、広範囲にアンケート調査などを実施したりして行うマーケティング方法です。

 マス・マーケティングが盛んに行われていた頃には、マスメディアの発達と影響力の拡大、汎用性の高い新しい商品やサービスの開発が盛んだったなどという時代の変化が見られました。

 石油業界のマーケティングは、ガソリンなどの石油製品においては、元売によるマスメディアを通じたマス・マーケティングと店頭やチラシによる価格や景品サービスの告知が主でした。近年、ガソリンなどを購入する際に価格比較サイトを利用するお客様が増えてきましたが、他業界に比べるとまだ利用頻度が高いとは言えません。

 カーケアサービスでは店頭での勧誘とサービスを利用されたお客様に対する電話やダイレクトメールによる告知などが主なマーケティング方法でした。しかし、カーケアサービス分野におけるカーディーラーやカー用品専門店の台頭、消費者ニーズの多様化、エコカーの普及拡大、点検・整備に専門性が求められる車種の増加、プラグインハイブリッドカーやEVの普及といった不可逆的な変化を踏まえると、従来型のマーケティング方法だけで十分な成果を上げることが難しくなってきていると考えられます。店頭などで収集した車検情報などに基づいて選別した見込み客に対して、ダイレクトメールやメッセージを送る手法も使われていますが、他業界に比べると、まだ工夫の余地が少なくないと思われます。

石油業界でも期待されるデジタルマーケティングの活用

 近年急速に普及しつつあるデジタルマーケティングの活用はその一例です。

 デジタルマーケティングとは、インターネットやITなどを活用したマーケティング手法で、インターネットのWebサイトへのアクセス情報、店舗での購買履歴や行動などを分析することで得られる個々のお客様の嗜好やニーズをもとに行われます。

 デジタルマーケティングが普及してきた背景事情には、インターネット利用の拡大、パソコンやスマートフォンなどの情報端末の個人所有、商品を購入したりサービスを利用したりする前に口コミやECサイトでチェックする行動の増加、ECサイトでの購入の増加などが挙げられます。

 新型コロナウイルスの感染症予防対策の影響で、ECサイトで商品を購入したりWebサイトで情報を検索したりするケースが増えたことを勘案すると、石油業界でもこれまで以上に積極的にデジタルマーケティングの活用を図るべきでしょう。

 デジタルマーケティングは、情報の収集方法、情報分析の精度、お客様へのアプローチ方法などがポイントになりますが、SSに優位性があるコミュニケーションマーケティングと複合化させることで、さらに有効に活用することができます。

キャッシュレス化への対応も課題に

 わが国は、現金に対する信頼が厚く、現金取扱の利便性が確保されていることなどから、キャッシュレスの普及率は20%台にとどまっていましたが、新型コロナウイルスの感染防止策の一つとしてキャッシュレス化の普及が促されたこともあり、今後、利用の拡大が進むと予想されますので、キャッシュレス化対応も課題の一つになると思われます。

 SS業界では、クレジットカードの利用頻度が比較的高く、ENEOSの「EneKey」などクレジットカードと紐づけた決済ツールなども普及してきましたが、これらの利用は今後さらに広がっていくものと予想されます。

 キャッシュレス化によるメリットは、お客様の現金取引による手間の軽減、お客様との決済など店頭作業の軽減、金融機関との取引の軽減、ポイント還元システム等による顧客の囲い込みが可能、購買履歴の管理の容易化などが考えられます。

 一方でキャッシュレス化には、決済手数料の増加、決済手段の増加による煩雑化、店舗によって使用可否が生じることによるお客様の混乱、セキュリティ対策のためのコストの増加といった問題や課題も生じます。 そうしたことからお客様目線で利便性を高めていく必要があると思われます。


北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月20日付ヘッドライン

■広がる困惑、失望感 対量販構図変わらず 札幌市場
■昨年度、減少に転じ17件 危険物取扱者の違反行為
■3月決算組「まずまず」 収益環境の良化が支える
■消費、供給ともに減少 2022年度エネルギー需給実績
■42%が「月に1回以上」 GfKJapanが洗車で調査