環境問題は後戻りしないだけに…
2020.7.20
クローズアップされる地球環境問題

 ESGあるいはESG投資という言葉を耳にする機会が増えているのではないでしょうか。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉です。2010年ごろから特に注目されるようになった概念で、企業が長期的な成長を図るためには、この3つの観点に配慮して経営する必要があるとされています。

環境対応が、ガバナンスや社会と同等に取り扱われるようになった背景には、人為的な行動に起因するとされている地球気候変動問題が拡大しているという事情があります。


 例えば、海水面の上昇、異常気象による災害や被害の頻発など、地球表面の大気や海洋の平均温度上昇による諸問題の発生です。近年、世界各国で異常気象による大規模災害がたびたび発生しており、我が国でも大型台風や豪雨による災害が頻発するようになっていますが、その一因が大気や海水の温度上昇によるとの説が有力視されており、その要因の一つとして人為的な温室効果ガス(GreenHouseGas、GHG)の排出量の増加が問題視されているからです。

 GHGに指定されたガスの大部分(我が国では9割超)をエネルギー起源の二酸化炭素が占めていますので、地球環境問題とエネルギーは切っても切れない関係にあります。エネルギー起源の二酸化炭素排出量を削減するためには、最大限の省エネに取り組むとともに、エネルギーの需給構造の転換(脱炭素化)を図っていく必要があります。電化の推進はその対策の一つですし、発電分野において、「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つのいずれかの発電設備で発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FeedInTariff、FIT)」なども、この取り組みを進めるためにつくられた制度です。


地球気候変動対策の国際協定

 国際会議において、GHGの削減目標が初めて設定されたのは、1997年に京都で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)で採択された気候変動枠組条約に関する議定書「京都議定書」でした。ちなみに、我が国は京都議定書に基づいて設定された目標「2008年~2012年までの期間に1990年比6%減」を達成しています。

 その後、地球気候変動問題がよりクローズアップされるようになる中で、2016年に新たな気候変動に関する国際的枠組み「パリ協定」が発効しました。パリ協定は、昨年末時点で195か国とEU(ヨーロッパ連合)が締結しています。パリ協定では、「工業化以前に比べて世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑え、1・5℃に制限するため、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収の均衡を達成する」と規定されています。この規定に準じて、主要各国は個別にGHGの削減目標を設定しています。

 我が国は、2016年5月に閣議決定された「2030年度に2013年度比26%削減」、並びに「2050年までに80%削減」というGHG削減の長期目標を掲げて、その達成に向けて取り組んでいます。昨年6月には「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定され、現行の延長線にはない大胆な施策に取り組む必要があるとされました。再エネの導入促進を図るための諸制度の改革、石炭火力発電所の廃止目標などが次々に打ち出される背景にはこのような事情があるのです。


環境問題への真摯な取り組みと成果のアピール

 実は、地球環境問題の発生原因はまだ完全に解明されていません。地球温暖化(地球表面の平均気温・水温が上昇傾向にあること)は統計から説明できる事実ですが、海水面の上昇や異常気象の頻発の原因が地球温暖化だけによるものなのか、地球温暖化の主因が温室効果ガスに選定されているガスの排出量の増加だけによるものなのかですら、有力視された見解ではあるものの、科学的に解明されているわけではありません。

 また、地球気候変動対策として取り組まれているパリ協定にも多くの問題があります。例えば、GHGの世界最大の排出国である中国はGDP当たりの二酸化炭素排出量の削減目標(2030年までに2005年比でGDP当たりの二酸化炭素排出量を60~65%削減)しか設定していません。世界第2位の排出国のアメリカは2017年に同協定からの離脱を表明しています。同3位のインド、同4位のロシアをはじめとする新興国・発展途上国のほとんどは現時点においてGHGの排出削減を求められていません。我が国のように、正直に対策を講じている国は少なく、かつ、対策の成果が上がっているにもかかわらず国内外からも批判されている国はほとんどありません。

 環境問題への対応が後戻りしない可能性がきわめて高いだけに、我が国、国民、そしてエネルギーにかかわる事業者には、真摯に環境問題に向き合い、取り組み、その成果をアピールしていくことが求められているのです。


北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月15日付ヘッドライン

■浮沈をかけ「春商戦」 油外増販で油販穴埋め
■昨年も自主廃業375件 人材難主因 中央会調査
■過去10年で最少 27件 札幌での危険物施設等事故
■災害対応能力強化事業 石油協会が補助申請受付け
■成約率など前年上回る USSの2023年度中古車オークション