原油価格がコロナ影響前の水準に戻るのは早くても来年半ば以降か
2020.9.20
新型コロナ影響による原油価格の調整はほぼ一巡
 原油価格は、新型コロナウイルス(COVID19)の重症感染症の世界的な大流行と世界各国の感染抑止策の影響を受けて3月から4月にかけて急落した後に4月下旬から反発しましたが、6月下旬に新型コロナ影響による価格調整は一段落したと考えられます。

 3月から4月にかけて原油価格が急落した最大の理由は、改めて説明するまでもなく新型コロナ影響による石油需要の急激な減少でした。

 IEAは2020年の世界の原油需要見通しを、2月の段階では前年比プラスで予想していましたが、3月に前年比250万BD(日量バレル)減に修正し、4月には同930万BD減に下方修正しました。OPECや民間のシンクタンク、金融機関なども軒並み3月から4月にかけて今年の原油需要見通しを大幅に下方修正しました。

 一方、3月から4月にかけて原油の生産・供給量も減少しましたが、需要減のペースには追い付かず、各段階で原油並びに石油製品の在庫が急増したことによって原油価格が急落したのです。

 なお、NYMEXのWTI原油先物の期近価格が4月20日にマイナスになったのは、急激な需要の減少に伴って米国で原油在庫が急速に積みあがったため、決済時の受け渡し場所の貯蔵能力の制約から、決済期日を間近に控えた期近物が現物の受け取りを避けるため投げ売り状態になったからでした。その後も米国の原油在庫は積みあがった状態のままですが、貯蔵能力を超える水準まで積みあがるリスクはほぼなくなりましたので、再びマイナス価格をつける可能性はほぼなくなったと考えられます。

 しかし、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」が5月から協調減産を拡大し、欧米各国の経済活動の再開によって石油需要は底入れしたこともあり、世界の原油需給のバランスが崩れる懸念は薄れています。


原油需要見通しがもっとも厳しかったのは4月

 IEAは、2020年の原油需要見通しを、4月の前年同月比930万BD減から、5月に同860万BD減、6月に810万BD減、7月に790万BD減と3カ月連続で上方修正した後、8月に前月予想比14万BD減、前年同月比810万BD減の9190万BDと4カ月ぶりに下方修正しました。8月に下方修正した理由は、新型コロナの感染が広がり、航空燃料の需要見通しが減少したからと説明しています。

 原油生産量は、OPECプラスが5月から史上最大規模の協調減産を継続していますが、米国の生産量も原油価格低下による採算の悪化を背景に3月1361万BD、4月1201万BD、5月1001万BDと減少しました。
 原油価格は、これらの状況を反映して4月下旬から6月下旬にかけて上昇傾向で推移したと考えられます。

生産抑制だけで需給を引き締めるのは難しい 

 ただし、依然、国や地域間の長距離移動が制限されていますので、IEAが8月のオイルマンスリーレポートで指摘したように、ジェット燃料油の需要は大きく落ち込んだ状態のままですし、世界のガソリン需要も、最も落ち込んだ4月に比べるとやや回復したものの、依然前年同期の水準を10%前後下回っています。産業用燃料油やバンカーオイルの需要も回復していません。世界各国の景気の悪化が一巡し、中長期的な影響を見通せるようになるまでには、まだ半年以上はかかると予想されます。

 生産の抑制だけで大幅な需要の減少に対応するのには限界があります。協調減産を行っているOPECプラスの参加国もこれ以上減産できるかどうかは疑問です。参加国の中にはもともと協調減産に否定的な国もあるからです。

 北米のシェールオイルやオイルサンドは経済性だけで生産水準が決まります。米国の原油生産量は、5月に1000万BDまで減少していましたが、原油価格の低下を背景に6月中旬には一時1050万BDまで減少しましたが、6月下旬以降は約1100万BDで推移しており、原油価格が上昇すると生産量はさらに増えると見込まれます。

 したがって、世界の石油需要が回復に向かわない限り、コロナ影響が広がる以前の水準である1バレル60ドル前後まで原油価格が戻るとは思えません。もしも新型コロナウイルスの第2波が発生すると、世界各国で再び経済活動が停滞して石油需要の低迷期間が長引き、原油価格を再び下押しする可能性もあると考えられます。



北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月15日付ヘッドライン

■浮沈をかけ「春商戦」 油外増販で油販穴埋め
■昨年も自主廃業375件 人材難主因 中央会調査
■過去10年で最少 27件 札幌での危険物施設等事故
■災害対応能力強化事業 石油協会が補助申請受付け
■成約率など前年上回る USSの2023年度中古車オークション