脱炭素化が最重要テーマとなったエネルギー政策
2021.8.25
エネルギー基本計画はS+3Eを達成するための施策や必要事項を示す

 2003年10月に閣議決定された第1次エネルギー基本計画は、2002年に施行されたエネルギー政策基本法の規定に基づき国会に報告されたもので、安全性の確保を前提に、安定供給の確保、環境への適合、市場原理の活用を図るというエネルギー政策の基本的な方針(S+3E) 、エネルギー業界を取り巻く内外諸情勢の説明、S+3Eを達成するための施策や必要事項などを取りまとめた報告書でした。


 2007年3月に閣議決定された第1次改訂(第2次計画)では、アジア諸国などの高い経済成長を背景にした国際的なエネルギー需給のひっ迫、エネルギー価格の高騰、環境問題への国際的な関心の高まり(「京都議定書」の2005年2月発効など)を踏まえ、安全確保を大前提にした原子力発電の積極的な推進などが打ち出されました。

 2010年6月に閣議決定された第2回改訂(第3次計画)では、安定供給に係る制約の深刻化、地球温暖化問題への関心の高まり、エネルギー・環境分野への経済成長のけん引役としての期待など、諸情勢の変化や施策の進捗等を踏まえて内容が見直され、2030年のゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー)比率を約70%とする目標が掲げられるなど、地球温暖化対策の強化が掲げられました。

 2014年4月に閣議決定された第3回改訂(第4次計画)では、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故を始めとするエネルギー情勢の大きな変化を踏まえて、エネルギー需給見通しが見直され、省エネの推進、再生可能エネルギーの導入推進、原子力政策の抜本的な見直し(「推進」から「脱」への転換) 、電力システム改革などが示されました。

 2018年7月に閣議決定された第4回改訂(第5次計画)では、2015年12月に成立した2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」の発効等を踏まえて、2015年に策定された2030年のエネルギー需給見通しの実現と2050年の低炭素化社会の実現を見据えたシナリオの実現に向けた諸施策が示されました。


次期エネルギー基本計画の重要テーマは脱炭素化

 経済産業省が7月21日に素案を公表した今回改訂(第6次エネルギー基本計画)の最大の変更点は、エネルギー需給見通しが大きく見直され、省エネ推進の徹底、再生可能エネルギーの導入推進などにより2030年度の温室効果ガス(GHG)排出量を2013年度実績に対して46%削減する新たな目標の実現が重要テーマとして示されたことです。

 今回の改訂において脱炭素化が最大のテーマなった背景には、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が8月9日に公表した第6次評価報告書の中で「人間が地球の気候を温暖化させており、人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がなく、大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている」と示したように、地球環境問題の深刻化、脱炭素化に向けた世界的な潮流、及び世論の関心の高まりがあります。これにより、今後のエネルギー政策において、脱炭素化目標の実現に向けた諸施策が盛り込まれることになる見込みです。


エネルギー業界は達成困難な多くの課題を抱えていることが明らかに

 菅政権は、脱炭素化に向けた世界的な潮流を踏まえて、2020年10月に菅首相が政権発足時に所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル」の実現を掲げ、2021年4月には「2030年の(GHG排出量を2013年比で)46%削減、さらに50%(削減)の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標」が示され、7月には再生可能エネルギーの導入目標が4月に公表された目標からさらに引き上げられていました。

 第6次エネルギー基本計画(素案)では、全体像の説明の冒頭に気候変動問題への対応が需要テーマであると示されています。もう一つの重要テーマが、安全性の確保を大前提に、気候変動対策を進める中でも、安定供給の確保やエネルギーコストの低減向けた取り組みを進めることと示されていますが、GHG削減目標の達成が最優先課題になっていることが明示されているのです。

 前計画までのエネルギー需給見通しや施策では、原子力を除くと実現が困難と思われる重要な課題はありませんでした。今回改訂されたエネルギー需給見通しや部門別のGHG削減目標などを分析すると、需給見通しの実現が困難な上に、実現に向けた施策を強化すると経済活動や国民生活に大きな負担が生じ、GHG削減目標を公約すると、その達成のためには排出権取引などを大規模に利用せざるを得なくなり、負担がさらに重くなる可能性が高いなど、多くの課題を抱える内容になっていると考えられます。

 しかも、エネルギー事情に詳しくない国政への影響力がある方々からは、化石燃料とりわけ石炭火力の発電比率が高すぎるので他国から強い批判を受けるのではないか、原子力発電比率が高すぎるのではないか、再エネの導入はもっと拡大できるのではないかといった指摘がなされています。

 エネルギー基本計画の改訂内容から、エネルギー業界は達成が困難な多くの課題を抱えていることが明らかになったと考えられます。そして、これらの課題を克服するための諸施策によって、大きな影響を被る可能性が高いと思われます。すべての国のエネルギー政策は固有事情に基づいて策定されています。エネルギー事業者はもっと主張すべきと思われます。




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11月29日(月)から12月5日(日)まで
変わらず
仕切り下げで値下げの動きも

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